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80話:獣人の子どもを迎える


最近人手が足りなくなってきたので、新たに眷属の協力を頼む、若手の桜と京だ。


きょうの父はピューマ獣人で、貴重な『男』であり外見は獣人だ。


桜の外見は、癒し系だ。


2人は、ジェイの記憶から、独特な言い回しで勢いよく話す者たちに興味を持った。


それで、なんちゃって関西弁を話すようになった。


(とは言え、それを判断できる人はいなさそうだけれど。

異世界召喚者やジェイの同郷記憶もちの人でもいれば別でしょうけれど。)



[ジンフィーリアたち、スラムへ向かう]


京と帝都のスラム街へ来た。そろそろ薄暗くなる時間だ。この時間帯から獣人の子どもたちが見かけられる。


彼らは、警戒心が強く慎重で、昼間は隠れている。




(何人一緒に来てくれるかしら?

準備は万端、料理人も決まっている。)


「え・・・雨が降ってきた。」


「・・・おいおい、土砂降りやんか。まあええわ。手分けすんで。」






体が熱い。苦し、い。


腕が鉛のように重い。でも、弟を落とすわけにはいかない。


「姉ちゃん、姉ちゃん。もう少し頑張って。今グレイとマロンが冒険者ギルドに兄ちゃんを呼びに行ってるから。」


(誰も助けてくれない、僕たちが獣人だから?スラムに住んでいるから?

弟のミルクだって、お願いして、必死にお願いしてやっと分けてもらっている。

明日ミルクがもらえるかもわからない。僕は無力だ。今も苦しんでいる姉ちゃんに何もしてあげられない。僕たちがいなかったら、姉ちゃんは、もっと楽なのに。)




「ちょっと、どういう状況?」


「え・・・。」


「こんな雨の中、赤子と座り込んで・・いえ、倒れそうね。うちに来る?」

「本当?姉ちゃんを助けて・・・お願い!」


「わかったわ。あなたたちだけ?他には?」


私は赤子を抱き、急ぎ呼んだ京には意識をなくした女の子を抱いてもらう。



「あ、グレイとマロンがヴァイス兄を呼びに行ってくれてて・・・。」


「そう。待ち合わせ場所はここ?」

「うん。」


「グレイとマロンは、字が読める?」


男の子は首を横に振る。


「ヴァイスという子は、字が読める?」

「うん、大丈夫。」



壁に、ヴァイス、グレイ、マロンへと宛名書きした防水封書を貼った。


「これで連絡は取れると思うから、急ぎましょう。」


男の子の名はラーン、女の子は姉のオーリ、赤子は2人の弟で生後1ヶ月ほどだそうだ。


(産まれたばかりなのね。愛らしいこと。)


5人で別邸(子供たちに用意した家)へ転移する。




瞬間、洗浄効果がかかり、衣服も乾く。


「え??えええ??」


オーリをベッドに寝かせる。


「京、ラーンとお風呂に入ってきて。」

「行くで。」とラーンの手を引いて浴室へ行った。


赤子はお腹をすかせていた。

あっさりめのほうが良いかと思い、モウ印ミルクを与える。


「んくっ、んくっ。」と必死に飲んでいる。ラースを思い出しながら、唄う。


ラーンの姉、オーリは少し楽になったようで目を覚ます。


「はじめまして、オーリ。私はジンフィーリアよ。ちょっと待ってね・・・。」


とん、とん、赤子がかわいいゲップをする。


即席で創ったベビーベッドに寝かせる。(可愛い~。)



体調が良くなるわよと、オーリに、ひとかけらだけ凰桃を食べさせる。


瞬時に体が楽になったことを理解したようで、目を大きく見開く。

(えっ、ガリガリだった腕が、うそっ・・。)


「今、ラーンは入浴中だから心配しないで。先に食事にしましょう。

私たちは食後にお風呂に入りましょうね。」


「ところで、この子の名前は?」


オーリは首を横に振る。


「オーリが付けてあげたら?」


涙が今にも溢れそうな目でジンフィーリアを見て、やはり首をふる。


「そう・・・。すぐに食事の準備をするわね。」


料理をテーブルに並べはじめると、京たちが入浴を終え現れた。


「姉ちゃん。もしかして、よくなったの?」


「うん、薬をもらって飲んだら、嘘のように楽になったの。」

「よかった。」うるっ



4人で食事をはじめた。


「温かい。おいしい、おいしい。」と2人は食べてくれた。


風呂を気に入ってくれたようで、ラーンは興奮気味にオーリに話す。


デザートを出すと、二人ともが見てるこっちまで幸せになるような顔をして、食べていた。


(瑠璃、一緒にお風呂どう?)


(ご一緒します。)


「さ、オーリ、私たちもお風呂に行きましょう。」と言って私は赤子を抱く。




「ふわあ、広い、すごい!」


「喜んでくれてなにより。」


私は赤子を抱いて湯船に浸かった。

赤子は、眠ったまま、気持ちよさそうにしていた。


クリアスライムたちが優しく撫でてくれる。


オーリが驚く前に、瑠璃が危険はないからと説明する。




ジンフィーリアは、先に湯から上がった。


赤子には、ヴィオと名付けた。

真っ白な毛皮耳が可愛くてたまらない。


スライムをオムツ代わりにあてる。そして私の作った服を着せる。


スライムには、ヴィオが気持ち悪がって泣いてから、おしもを綺麗にしてあげてと伝えてある。



出産後の母親には、おしめ替えや授乳は負担だと思う。


おしめ替えをしなくていいなら、オムツの洗濯も必要ないし、その分赤子と一緒の時間が取れるのではないかしら。


皆が乳母のいる貴族なわけではないし、ステラたちはなんと言うだろう。


まあ、このスラオムツはこの邸内でしか使えないけれどね。




お風呂上がりは喉が渇いてるわね。またミルクをあげてみよう。


うん、うん、飲んでるわね。


飲みながら寝てしまった。


ああ、食べちゃいたいくらい可愛い。




ヴィオをベッドに寝かせると、『反応』があった。


あの封書に触れたのだ。


寝間着のまま、即転移する。




「「「!!!」」」




「ヴァイスにグレイ、マロンで合ってる?」


「「「!!」」」頷く3人。


「3人を保護したから、一緒に行きましょう。」

「え!その」


3人を連れて別邸へ到着する。




「「「!!!」」」




「ここは私の敷地内の別邸よ。

ヴァイスは冒険者よね?明日以降の予定は?」


特にないと言う。


グレイとマロンは孤児だそうだ。ヴァイスも。




3人に入浴するよう伝える。


入浴中に寝間着・下着を用意しておくからと言い、浴室の使い方を教えるよう京に頼む。




入浴後、食事を出す。


ヴィオがぐずりだしたので、抱き上げ、席を外す。


よしよし、背中をとん、とんと優しく叩く。


柔らかくてよい匂いがするわ。


肉食獣が子を狙う気持ちがわかるわぁ。


(え、姫ちゃん、何言うとん・・・。)




私が作った服がよく似合ってる。もっといっぱい創ろう。


尻尾も自然に外に出せる魔導服。


そうだ、首が座ったら、飛行魔具を付けてあげよう。


(いやいやいや、赤ん坊に何すんねん!)





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