78話:鞠のおねだりとその他諸々
鞠は、会議中に凸する。
突然現れ、「キラー。」と抱きつく。
「鞠、どうしたんだい?」
「あ、いっけにゃい。(ディルに用にゃ。)ディル〜、ライルを助けた鞠のお仲間を見つけたにゃん。」
(鞠、私に抱きつきながら、父上と話を・・まあいいか。)
「何!どこにいた?」
「彷徨える森にゃん。異空間に囚われてたにゃん。
その異空間とライルが入ったダンジョンと繋がってたにゃん。」
「!・・な、なんと。」
「「「「「!!!」」」」」
そうして鞠は、ディルのところへ行く。
(鞠が来たー、可愛い。)
「ディル〜、鞠たち、キャンデック領に住みたいにゃん。
鞠にキャンデック領ちょうだい。そしたら姫さまにあげるにゃん。とても喜ぶにゃん。」
「な・・・。」
「ねえ、ディル〜お願いにゃ。」と抱きつく。
「くれたら、ディルの譲位式のパレードの時、鞠ディルと一緒にいるにゃん。
もう一人の妖精猫も一緒にゃん。」
「な、本当か?」
「うん、お願いにゃ。」
目をうるうるさせてディルを見る。
そして鞠は消えた。
「「「「「・・・・・。」」」」」
(陛下が変な気を起こさなきゃいいけど。)
ディル妄想中〜
皇帝は、両隣に妖精猫のいる自分を、皆が尊敬と羨望の眼差しで見つめる様を想像し、ぼーっとなった。
ああああ、実現したい。
「陛下。」「陛下?」 「へいかーー。」
ディルトリップ中〜
[ベンをはめた奴らの末路]
アーサーにより街の騎士団に3人は身柄を拘束された。
そして、余罪を徹底的に調べられた。
侯爵家だけでなくカンタベル公爵家からも口添えがあったこともあり、断罪は異例の速さで行われることとなった。
呪術師と薬師は公開処刑された。
伯爵家は、ベンへの返金と慰謝料を払い謝罪した。
他の余罪の弁済で伯爵家は苦しい状態に置かれた。
三男は、平民落ちとなった。
鞠の見立てから、生かしておくと碌なことをしないと判断され、三男は、ひっそりと土に還った。
ベンとルルは処刑を見に行った。
数日後、ベンを解雇した子爵がフィリア邸を訪れ、ベンに平身低頭謝罪した。
急な解雇による弁済として5ヶ月分の給与が支払われた。
「子爵様のおかげで(首にしてくれたので)、この邸での仕事を得、全てが解決しました。
御礼申し上げます。ですが今後は一切関わりなく願います。」とベンに言われ、子爵はなんとも言えない顔をした。
侯爵家との縁ができるかもしれないとの子爵の欲は、粉砕した。
ジンフィーリアは、アーサーへ抱き付き、悪党どもの処断に礼を言った。
邸の購入に骨を折ってくれたことにも改めて、感謝を伝えた。
アーサーは孫娘から抱きしめられて、頰が緩みっぱなしだった。
私のお爺様はイケオジ。男の、自然に漏れ出る色気っていいわね。
ベンの初仕事は、屋敷の人材確保だった。
求職ギルドへ赴く。
仕事を紹介してくれた知人に心より礼を言う。
主人との出会いから全てが好転した、と。
よい顔つきになったベンを見て、知人のギルド職員も穏やかな笑顔を浮かべた。
ベンは、ジンフィーリアから、知り合いでよい人がいたら、ギルドよりも優先して雇って構わないと言われていた。
料理人に思い当たる者がおり、訪ねた。
腕はよいのだが人付き合いが下手で、店のオーナーとよく衝突し、その都度首になったり自分から辞めたりしていた。もちろん悪い男ではない。彼なりの料理に対するこだわりを、オーナーたちがわかろうとせず、逆らうなら必要ないと判断されていただけだ。
姫様が余計な口出しをするはずがなく、彼にとっては申し分のない環境だと思う。
貴族絡みの屋敷と聞き、躊躇する彼を説得し屋敷へ連れてきた。
彼は厨房を見るなり目付きが変わり、自分の世界に入り吟味しだした。
ベンはそれを生温かい目で見つめ、自分の部屋へ戻った。
数日後。
「ベン、クック(料理人)に補佐の料理人をつけたいの。彼の希望人数を聞いて、何人か面接できるよう手配して。もちろん、彼が気にいる人を雇うように。
その人員とは別に、保護した獣人孤児たちの料理を作ってくれる人を雇いたいわ。」
「かしこまりました。」
「それから、ベン、あなたにも補佐がいると思うの。
あなたには、出来るだけこの邸にいてほしいから、代わりに動ける人をね。あなたがよいと思う人を雇ってちょうだい。」
「はい、ありがとうございます。」




