06話:楓現る
数日後、ジンフィーリアの元へ、王都へ出てくるようにとの侯爵からの書状が届いた。
執事曰く、
「王都の教会へということは、魔力測定が目的と思われます。
測定器は、王都の教皇様がいらっしゃる総教会にしか置いてないのです。
国民は13歳までの間に魔力測定を受ける義務があります。
Aランク以上の測定値は、王家へも報告されます。
魔力量の多い平民であれば、当然、誘拐されたり利用されることも考えられるので、国か教会が保護します。
都度協議して保護対象をどちらの管理下に置くか決めているようです。」
『それは、面倒なことになるのではないか。』
「そうですね、お嬢様の魔力量が多いのは間違いないですから。
そして、侯爵家には存在しないことになっていますから、平民扱いということになります。」
「結果次第では嬢ちゃんの身柄が拘束されるってことか。」
「侯爵様に確認し『いや、面白いからこのまましれっと測定してもらおうぜ。』
「「「はあー??」」」
『大丈夫だって。姫をどうこうできるやつなんていねえよ。だろ?兄者。』
『まあ、そう、なんだが。』
ジンフィーリアとゴウル兄弟が見つめ合う。
[只今、念話中。]
『ちょいと試したいことがあるから、ジンと出てくる。護衛もいらん。』
「「「え、ちょ」」」
ジンフィーリアと彼女にくっついていた3匹は消えた。
【その頃、異空間居住にて】
ゲート近くに陣取って居住しているのは、とある種族の者たちである。
主人が帰った時に一番にお迎えできるようにと。
そして主人のプライベートハウスもこの一角にあり、主人の帰りを待ち続けている。
ここの者たちは、主人の顕現を確信していた。
皆が協力すれば二人くらいなら主人の元へ送れるはずだ、と。
誰が行くかで醜い争いが起きていた。
失敗すれば、空間の歪みに飲み込まれる可能性があるのにもかかわらず、我こそは!と皆行く気満々だった。
「皆、静まりなさい。」
「「「「「椿様っ」」」」」
椿は生前の主人よりここの管理人を任されていた。
「此度は、能力バランスの良い楓に。」
「楓っ、絶対に成功するとは限りませんがどうしますか。」
「疾くお願い致します。」
「・・では、皆、ゲートへ力を。」
時を同じくしてジンフィーリアたち。
『力が戻るまでは慎重に行動するのではなかったのか?』
(その通りなんだが少々退屈で・・・。いや違う。こんなことくらいでつまづいていては、結局力及ばずではないか。その、何が言いたいかというと・・・)
『まあ、いいじゃん。とりあえず呼ぼうぜ。誰にする?』
『(楓!)』
『俺も同意。』
『『(楓っ来いっ!!)』』
シーン。
(あれ・・・。)
(え、っと、帰ろうか・・)
『ああ・・。』『おう・・。』
トボトボと徒歩で帰る。
ラースが3人の頭を撫でて慰めてくれる。
別荘へ帰ると、待ち構えたように「「「おじょ『寝る、ひとり・・俺たちだけにしてくれ。』
「「「・・・。」」」
部屋に入り、ベッドにポスっと座る。
突然部屋の空間が歪み、キラキラと光を纏いながら楓が現れた!!
『『(!!)』』
楓は、片膝をつきしっかりとジンフィーリアを見据え、「お会いしとうございました。主人。」と。
そして滂沱の涙を流す。
(か、え、で。)
ジンはフラフラと立ち上がり、楓をぎゅっと抱きしめた。
『つまり、あちら側からも干渉していた、と。』
「はい。」
時間差で現れ、た?うーん・・まあいいか。
(楓、体は無事か?置いてきた器官はないか?全部揃っているか?) こちらも呼んでおいてなんだが。
「こ、こわっ。なんちゅうことを仰るんですか!
・・こほん、100%の楓です。大事ありません。」
皆でホッと安堵する。
ああ、よかった。本当は、自分の死後の異空間が心配だった。
無事に機能するのか?、消失するのではないかと。
私は死ぬ前に、異空間を出るようにと皆に言った。
だが、皆は頑なに、ここで待つ、としか言わなかった。出たら、主人を見失ってしまうからと。
「あの〜、もう一人くらいは、来られるかもしれません。」
(却下で!楓がいてくれれば十分だ。)
「そうですか!そうですよね。私一人でもお役に立ってみせます♪」
(よろしく頼む。)と私が言うと同時に、ラースが楓の肩をポンと叩く。
「!わあ、可愛い〜♡」
(その通り。ラースは可愛いよな〜。でも、この世界の人たちと私たちは感性が違うのか・・・?)
『で、楓、今の現状なんだけどな。斯斯然然で。』
「ふんふん。つまり教会での魔力測定中にラースのお守りをできるものがいないと。」
『そういうこと。その為にお前にきてもらったんだ。』
(ん?)
皆が一瞬ジンフィーリアを見る。
「お安いご用ですよ。ラースよろしくね。」
「ヒュイ。」
『あと、この世界の強者と我らとでは、力にどれくらいの開きがあるのか知りたい。』
「戦闘の機会があるといいですね。楽しみです。」
楓には戦力として来てもらった、・・だけではないからいいのか・・・?
そして、椿、すまない。・・いや、ありがとう。もうすぐ戻る。
『さて、記憶共有しよう。』
そして
[念話会議中]
(楓、別荘の皆に紹介する。)
「はい、あ、私も姫さまって呼びますね♪」