66話:お仕置きじゃ〜
「ねえ、鞠、飛べてよかったわ。飛べないドラゴンかと思った。醜いアヒルの子じゃないけれど。」
「本能で飛び方を知っているにゃん、そういうもんにゃん。」
「それに、話せてよかった。ドラゴンだとどんな話し方がいいかな〜。」
「族長みたいに、偉そうなのがいいにゃ。」
(偉そうと思ってたのか・・。)
「なら、魔王バージョンでいく!」
キャンデック侯爵家の別荘へ向かう。
街の人々が、空に指をさし、驚いた顔をしたり、結構な騒ぎになってた。
「もういにゃいな。」
「よし、王宮に向かう途中で、いぢわるしてやる。」
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[別荘にて、少し前]
朝から第一王子は、怒鳴っていた。
なんだとアーフィンのやつもう立った、と。
「昨晩お知らせしようとしたのですが、もうお休みだったようで酷く怒鳴られました。」
「・・・・。」
くそ、先に帰られるとまずい、すぐ出立するぞ。
シールも途中まで同行することになった。
「あ、いたにゃ。」
「鞠、一応顔を隠せ。」
鞠は収納から魚(カジキ(?))の被り物を出した。
「なんかもめてるにゃん。」
会話から判断するに、
王子たちの前に泥濘にはまった馬車がいて通れず、仕方なしに近衛たちに手伝わせた。
そのせいで時間を無駄にした、と、、、。
「難癖つけてる間に、王宮に向かえばいいにゃん。」
だよね、自分で時間とってる、アホだ。
前の馬車は荷から判断して商人か。家族経営なのかな、妻らしき人と坊がおるな。服装は割に簡素だな。
王子に見える方からゆっくり近づいた。
当然気づき顎が外れそうなオモロイ顔をした。
近衛が王子の前に出る前に、手加減して軽く空気砲を口から吐き王子の腹へあてた。
王子は「へぶっ!!」と声を出し体をくの字に曲げて、2kmほど元来た道を勢いよく戻っていった。
慌てて近衛たち全員が王子を追う。
おお、程よい加減ができた、我は優しいな。
さて、商人の前に降り立つ。
我よりも鞠を凝視し恐怖に震えている。この世界、魚人族いないのか。まあ、横向きの魚が顔のマーマンはいないか。きっと、そうだな。
鞠に被り物をとらせ、金貨100枚入った袋と菓子を持たせて商人たちの前に行かせる。
鞠を見て、警戒が弱まったところで話しかけた。
「大丈夫か?我の領地(既にキャンデック領は自分のものと思っている)で嫌な思いをさせてすまない。それを見舞金とする。鞠。」
「はいにゃ、どうぞ。」
袋の中を見て驚く商人。
「さあ、もう行け。もう少しあのクズ王子を足止めしつつ、我が仕置してやる!」
「・・、それはもしかして、第一王子のこと・・いえ、なんでも。」
「ほう、わかっているじゃないか。」と言ってドラゴンの目でウインクする。
「「「!!!」」」
商人たちは口々に礼を言い、急ぎ馬車で遠ざかる。
「鞠、急ぎ被れ、・・カジキを」
「スリ傷だらけにゃん、クズ王子。」
「我の手加減重畳!骨折もないし、うん、よいよい。」
「藁山に突っ込んだのも、おもろいにゃん。」
「傘骨だけの『妖怪からかさおばけ』だな。鞠、おもろいから映像残しとけよ。それと喋るなよ。」
ふぁっさと、クズたちの前に降り立つ。
剣聖と火魔法剣士が前に出てくる。
おお!一両日の間に、顔つきが変わってる。
距離をとったまま、威厳を込めた声で、宣う。
『おい、そこの藁まみれクズ!』(威厳がどっかいったにゃん。)
「!・・・。」「「「「「!!!」」」」」
底冷えのするような声で発する。
『我が治める領地で、弱いものいじめするでない!恥ずかしいやつめ!!』
シールが驚いた変顔しとる、いまいち暗いやつだがこうゆう顔もできるのか。よいものを見た。
「っ・・・。」
「「「「「!!・・・・。」」」」」
剣聖君たちを目を細めてしばらく見つめる。
「「っ・・・。」」
低く響くような声を意識して紡ぐ。(勝手に二つ名つけてやろう。)
『稀なる剣を友とする剣聖よ』『豪炎を纏いし聖騎士よ』
『仕える相手を間違えるでない!!』
金のドラゴンとなったジンフィーリアは、羽ばたき少し空中でホバリング。
クズに向かって、口をパッカと開けた。
ふふふ、ブレスじゃないわ!名付けて『お仕置きの輪っか』
パパパッと口から放たれた大きな金の輪が王子の頭の上からスポッと肩、腰(あ、フラフープみたい)、足を通って、足元までストンと落ちた。
途端、王子の衣服は全て分解蒸発した。
「「「「「!!!!!」」」」」
王子は何が起こったか理解してなかった。
金のドラゴンは、クズの下半身を睨め付けて、ジーーーと凝視し、
『ふん!小者めが!!』と言い捨て大空に羽ばたいていった。テックのいる王宮へ向けて。
[近衛たちが、『者』を『物』と変換してしまったのは仕方ないと思う。]
ジンが睨め付けている間、近衛たちは、ダラダラと汗を流し続けていた。
(どこ見てんすか〜。) (メスなのか・・。)
(早く、どっか行ってくれ〜(泣))
剣聖くんと(豪)青炎の聖騎士くんは、金のドラゴンに対峙したとき、剣に闘う意思がないことを理解した。




