05話:ラースとの出会い
次の日、私の目が開き見えるようになったことを、皆が涙ぐみながら喜んでくれた。
本当に温かい人たちだ。
金色の瞳は初めて見た、と言われた。
髪と瞳の色は茶が一番多いらしい。
ただ、護衛の一人が「金の瞳・・」と呟いたあと、考え込んでいた。
皆が落ち着いた頃を見計らって、ゴウルとジルバが私の両肩に飛び乗った。
「「「!!!」」」 「「「え」」」
「その子猫たちは?」「かわいい〜。」
『猫ではない。我が名は金虎のゴウル。ジンの良き隣人だ。』
『俺は銀虎のジルバ』
「「「ね、猫がしゃ、しゃべった?」」」
『だから猫じゃねえって。』
「「隣人??」」
ここで念話でヒソヒソ相談し、聖獣というのもなぁ?目立つんじゃ?ということで守護獣ということにした。
まあ、姫(一族の頭だが今世は女なので俺は、こう呼ぶことにする。)の方が今世は、俺ら聖獣より強くなっているはずなんだが。
隣人、ねえ。正解は、眷属の中でも一番姫に近いのが我らが兄弟ということだ。
簡単に別荘の者を紹介する。
この別荘の執事ロイド。
お母様にも仕えてくれていたミリア(異母弟ローは侯爵邸雇用)。
別荘管理人夫婦。
メイド一人目は、別荘管理人の長女。
同じく二人目は、別荘管理人の次女。
別荘料理人。
護衛長のギル、護衛のルーイとイーグ。
別荘近くの森入り口前に開かれた場所あり。
そこで3人で色々とお試しをすることになった。
護衛たちとミリアには距離をとってもらう。
力が解放された時、ジンフィーリアの手首にはバングルが現れていた。
ゴウルとジルバは、今は、チョーカータイプのものを着けている。
眷属は全員何かしらの鍵(ジンフィーリアのお手製)を装着している。
[結果]
・前世の家(眷属の異空間住居)には繋がらない、行くことができない。
もしかしたら、あちら側からは、こちら側に来られるかもしれない。一旦保留。
・制限付きではあるが、創造魔法と防衛魔法は使える。(ジンフィーリアは、モノ創りと防御が一等得意と思っている。)
・時空魔法と転移にも制限がかかる。
・バングル(主に収納と異空間へ入る鍵の役割もある)から生前入れてあったものを取り出すこと可能。
共有部分に関しては、無理だった。
補足として、魔法には関係がないが、目が見えなかったので感覚が研ぎ澄まされている。視覚以外。
そのままピクニック形式の食事を終え、皆で茶を飲んでいると、ジンフィーリアが急に立ち上がり森に向かってスタスタと歩いていった。呆気にとられる護衛たち。
ギルが自分が行くと言い、ジンフィーリアを追いかける。
なぜかジンフィーリアが遥か向こうに見える。慌てて走る速度を上げるギル。
<護衛長:ギル視点>
森は昼間でも薄暗く、見失ったか?と焦るがすぐに見つかった。
木の根元に頭のない動物の死骸があり、お嬢様は木の上を見ていた。
何を?
しばらくすると木から茶色の毛皮をまとった動物がソロソロと降りてきた。
片手で、伸ばしたお嬢様の手を掴むと、そのまま彼女の胸に飛び込んだ。
胸に顔を沈めてブルブル震えながら、ヒュイヒュイとか細く鳴いている。
頭のない死体は母親だろう。
守護獣が穴を掘ったのか?そこに母親の遺骸を入れ土をかぶせた。
森から出ると、お嬢様にしがみついている獣の毛皮が鮮やかな赤茶色とわかった。
長い手足の指以外はふわふわの長い毛皮に覆われている。
頭頂部と体の内側は黒、首は白。3色毛皮の動物だ。
残留組はヤキモキしていたのだろう。俺たちの姿を見つけると走り寄ってきた。
そして全員、お嬢様の胸にしがみついている毛皮を凝視。
事の次第を説明すると、ミリアはかわいそうにと言って獣の頭を撫でた。
ビクッと肩が跳ね、それがゆっくりと振り向いた。
そして皆一斉にそれぞれ吠える。
「うっ・・・。」←俺とルーイが固まる。
「きゃあああ。」尻餅をつくミリア。
「うわぁ!!!」後ろへ跳びのくイーグ。おまえ!護衛だろうが。
皆の反応に、無理もないと思った。
その、なんというか、悪魔顔?
ハッキリ言わせてもらうと、顔が怖い。
別荘へ帰る道中、皆チラチラとラースを見ていた。
お嬢様がラースと名付けたとゴウルから聞いた。守護獣とお嬢様は念話で話せるそうだ、羨ましい。
別荘へ着いてからもひと騒動あった。
メイド姉妹は泣きながら神様にお祈りしはじめ、別荘番夫婦は腰を抜かしていた。
強面料理人は立ったまま失神したのでこっちが驚いた。
執事君は、侯爵宛の手紙を書いていたそうで最後に対面した。
いつも冷静沈着で大声を出すことなどない奴だ。俺らが冗談を言い合っていてものってくることはない。
お嬢様の胸に顔を埋めてイヤイヤをしていたラースだが、ジルバが『顔を見せてやれよ。』と言うと顔を上げた。
叫びこそしなかったがあの時のロイドの顔!めっちゃ崩れていた。
あんなオモロイ顔初めて見たわ。
皆も大笑い。
顔を赤くして「そんなに面白い顔をしましたか?」と言われたお嬢様はこくこくと頷いたあと口を押さえて肩を震わせていた。
数日、ロイドを見ては思い出し笑いを誰彼となくするので、ロイドは不機嫌だった(笑)
【侯爵邸にて】
別荘執事からの報告書を読み、侯爵はニヤリと笑った。
これで政略の駒としての幅が広がった、と。
あれが産む子のことを考えれば、魔力量を把握しておくべきだと思った。
あれの価値が上がる。
コンコン。
執事が甥からです、とまた手紙を持ってきた。
追いかけるようにして届いたロイドからの報告書には、ジンフィーリアの瞼が開き視えるようになったと書かれていた。
本日中に、あと1話投稿します。