54話:瑠璃の語り(その3)
「キャンデック侯爵は、姫様を実子と思っているようです。姫様が侯爵に会ったのは10歳の時、魔力測定時だけです。」
「聖獣様も楓もキャンデック侯爵と姫様は血縁ではない、と感じたようです。我らは侯爵から逃げる準備をしていました。解雇された護衛は姫様が再雇用しました、ラナたちの護衛として。」
「その矢先に王子たちが来たので、正直迷惑でした。主に第1王子が。
第2王子は、自分の近衛を双子に会わせてやろうと策を講じたようです。
実際は、人語を話す猫と姫様に興味をもたれたのではないかと。
シールの領地にある彷徨える森の調査を表向きの理由で。」
「シールおばかさんにゃ。」
「「「??」」」
「そうなのですよ。第2王子と懇意になれたことが嬉しくて、つい学友に調査のことを話してしまいました。その学友の兄が第1王子の側近でして。」
!!!
(あちゃー。)
「水面下で次期王を争っている王子たちです。未知の森の調査をすると知り、第1王子も強引に加わってきました。」
「しかも、出発日当日に近衛を連れて、いきなり私も行く、と第2王子とシールに言ったそうです。
こぢんまりとした別荘で管理人夫婦しかいないのでやんわりと断ったのですがゴリ押しされたようです。」
「シールから別荘への先触れは、学友を連れて10人くらいで行く、というものでした。」
「到着日前日に、実は王子2人と20人以上で向かっていると知らせが入り、執事は真っ青になりました。
別荘の人間に伝えたらショック死すると思ったようです。
人員的に対応もできないので一人悶々としていたようですね。
料理人も休みをとって他国へ行っていました。」
「シールと姫様を会わせるわけにはいかないので、執事によって姫様は別荘から追い出されていました。
ラナたち用のコテージに居ました。
護衛の金と茶の同行は許しましたが、姫様の意思で黒は別荘に残されました。」
「黒はキモいにゃん。ねっとりした目で姫様を見るにゃん。」
(((殺!!)))
「困った執事はコテージに来、第2王子一行を泊めてほしい、と。
姫様は了承しました。
近衛のテックと双子たちを会わせてやれるからと。」
「別荘はシールと第1王子たちが。一応王子であることは隠すはずでした。」
「視力が戻った直後、姫様は別荘近くの森で動物の赤ちゃんを保護しました。
母親が食い殺されて木の上に逃げておりました。
この時、姫様はスタスタと一人で森へ進み、護衛が慌てて追いかけるという図でした。」
「ラースと名付けられました。姫様がミルクをあげ育てておりました。
初めは姫様にべったりしがみつき離れませんでしたが、王子一行が来た頃は一人で森へ行くこともありました。」
「姫様のいるコテージにも王子一行が到着しました。双子たちとテックは無事に会えました。」
「突然、別荘の方が騒がしくなりました。
ラースのいないことに気付いた聖獣様たちが2階の窓から急ぎ向かいました。」
「姫様が溺愛するラースに近衛が『化け物!』と叫んで剣で斬りつけました!」
(((!!!!!))) ((バケモノ??))
「間一髪、聖獣様が剣の間合いからラースを遠ざけ、ことなきを得ました。」
一同ホッとする。
「直後姫様が到着し、ラースは姫様に抱きつきました。
謝罪がなかったので、姫様たちは第1王子が話すのを無視してコテージへ帰りました。
第1王子たちはウッドデッキでお茶を飲んでいたようです。」
「ラースは木に登りカブトムシを見てたにゃん。」
「バケモノと言われても悪意に気づかず興味深げに近づいてしまったようです。
鞠は動物のラースと会話できます。」
!!!
「第1王子は聖獣様方と姫様に興味をもってしまいました。面倒臭いことに。」
あー・・・
「ラースを助けた時、目立たないようにと聖獣様二人は人化して、見た目は獣人の子供でした。」
「第1王子を近づけないために、第2王子がすぐ調査に向かうぞ!と第1王子たちを連れ彷徨える森へ。
第2王子:密偵の金を同行させてありました。
指輪を渡し、緊急時その収納から装着して戦うよう、指輪を投げ捨てるよう指示してありました。
姫様が作った指輪ですので、捨てると姫様の手の中に戻ります。」
「へえ。」「ほう。」「!!」
「ちなみに姫様が金に持たせた装備は、姫様の趣味で勇者バージョン、金ピカのフルメタルアーマーに聖魔法を発動できる剣でした。」
!!!
「そして、ライル様より連絡があり、姫様は家族と会うことができました。僥倖にございます。」




