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53話:瑠璃の語り(その2)



「王都で5人の獣人を保護しました。帰りは侯爵指定の宿に泊まりませんでした。

楓が見つけてきた獣人の女将ラナが経営している宿に泊まりました。

奴隷商で少年が食事を与えられていなかったのは明白で、ラナ女将が重湯を用意してくれました。」


「姫様の護衛3人は姫様の行動を制限しませんでした。図書館然り奴隷商然り。

ですが指示に従わなかったと解雇されました。」


(((クズ侯爵め!)))



「後日ラナ女将から、姫様のことを根掘り葉掘り聞いてきた男たちが2組いたと知らせが入りました。

片方は奴隷商からの追っ手でした。

このクズどもは後日また宿へ行き、何度も難癖をつけ、最後ラナ女将を2人で穢そうとしました。」


女性陣がヒュっと息を飲む。


「姫様は、追っ手が宿に来たことで女将に危険があるかもと懸念し指輪を渡しておりました。

それは、女将の心拍数がひどく上がるとこちらに伝わる機能をもつものでした。

ギリギリ楓は間に合いました。」


((あ、よかった。))


「ずっと獣人だからと差別されながらも健気に宿を経営してきた女将でしたが、心が折れてしまいました。」


「ラナ女将は宿を従業員に譲る準備をしていました。

それを知った楓が、姫様の元に傷ついた獣人たちがいる、食事の世話を頼めないかと誘い、ラナは姫様の元へ来てくれました。」


「ラナのご飯美味しいにゃん。」

女性陣が涙ぐむ。


「次の護衛が来るまでの間に、姫様は()()になりました。」

主に楓の仕業で功績でもある。


「同時に声が戻り力が覚醒したので、むしろありがたいと姫様は喜んでおりました。皆を守れると!」


(あ、この言い方では、皆様を悲しませてしまいましたね・・・。)


!!!!!・・・・・。


「そして我らが姫様は、フィリアワールドに帰還されました。

凰桃の木が実をつけはじめました。」


「我らは子を身籠りにくいのです。100年の間に産まれた子はたったの10人。

そして男の子が生まれる確率はとても低く、現在、3人しかいません。

姫様は、一族が増えたことをとても喜んでくれました。」


(ほう、そうなのだな。)



「新しい護衛が来ました。

侯爵子飼いの護衛ではなく、新たに雇ったようです。」


「髪色が金・茶・黒でしたのでそれぞれ色で呼んでいました。

姫様も私たちも名を知りません。」


((えええ!)) (かわそうな奴ら・・・。)



「今は判明しているので種明かしをしますね。

鞠は人の性状がわかります。

黒を見て、ドブ臭いと教えてくれました。」


((あははは。))


「あいつ、数日前から生ゴミ臭がするにゃん。」

「さすが鞠ですね!」


「あのゴミ、第1王子に自分から交渉して、姫様の情報を売りました。」


「「「殺す!」」」


「茶は普通の護衛です。

金は第2王子の密偵です。ゴウルが気づきました。」


「「「え!!!」」」


「でも無害ですよ。第2王子の前で私たちに『きん』と何度も呼ばれて立場なかったと思います。」

「「あっははは!」」


「黒は想像通り、奴隷商の手のものでした。」


「ですが、双子がいた王都の、ではなく!

そうです。10歳の姫様を買った豚です!

わざと取り返さなかったようです。

そろそろ捕獲しようとして黒を送り込んだようです。」


「ラナにひどいことをしようとしたのも豚奴隷商の手下です。

そのうちに、奴隷商ごと潰す方向で動きます。

決定事項です。」



「さて。キャンデック侯爵子息シールですが、両親や妹がリリ様や姫様にやった非道を全く知りませんでした。

姫様の存在さえも知りませんでした。当然、別荘に姫様が軟禁されていることも。」


「知らなかったということは、知ったんだね。」とライル。


「はい。私がここに呼ばれる少し前、姫様が直接話しました。

シールは悪くない、ただ事実を知ってほしかったから、と。」


「そして、侯爵が老夫婦に渡した養育費と別荘での生活費(姫様に用意された執事・メイド・護衛の給与含めて)の倍額をシールに預けました。キャンデック侯爵に渡して、と。

侯爵の意図がどうであれ、殺されなかったことを感謝しているとおっしゃって。」


「!!!」


「生きていればこそ、ここにいらっしゃる皆様方にも会えたのだから、と。

人間界では天涯孤独と思っていらっしゃったのでとても、とても喜んでおられました。」


「きっかけは、ザクセン国第2王子が姫様の瞳を見、帝国の王族に生まれることがあると言ったからです。

もしかして、血縁がいるのではと期待されました。帝国の王宮に侵入し歴代の王族の肖像画を見ましたが姫様の容姿に近い方はおられなくて・・・。」


「ゴウルが王宮に居るものたちから、姫様と同じものを感じると。

感だけでライル様に到達しました。

姫様はライル様に会い、間違いない、血縁者だ、父親だと確信しました。」


「私も娘だとわかったよ。」


皆、じんわりと心が温かくなる。








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