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52話:瑠璃の語り(その1)



「次の話です。」


「キャンデック侯爵夫妻が姫様たちにひどいことをしたのは周知のことですが、娘もやらかしています。」


「姫様が10歳の時のことでした。

侯爵夫人に姫さまが呪い子だと教えられ、間に受けた娘が雷魔法をぶっ放してくれました。

リリアンヌさまの侍女をしていた方が姫様を庇ってその方に直撃し、酷い有様だったそうです。」


「「「!」」」「「!!」」


「もうさ、キャンデック侯爵家潰すの決定だよね?」とクリス。

全員頷く。



「本日彷徨える森にてスタンピードが起こりました。」


「瑠璃、話ぶった切ってごめんにゃ。ライル!」ライルに抱きつく。

「鞠?」


「昔ライルを助けたという妖精猫!彷徨える森の結界内で姫様が見たにゃ!」

「本当か!」


「うん、助けてあげて。お願いにゃ。お願い・・ライルが会った後もずっとたった一人で囚われてるにゃん。」

「っ!・・・。」



「結界魔法に詳しい方をどなたかご存知ありませんか。私も見ましたが哀しそうでした。」

女性陣は涙ぐむ。




「コホン、では、本日起こった話の続きを。」


「王都学院の夏休みに入ってすぐに、キャンデック侯爵子息シールが第1王子と第2王子を連れだって別荘に来ました。当然、それぞれ近衛付きです。」


「「!!」」


「その少し前に、視力を取り戻したことを知ったキャンデック侯爵に呼ばれて、姫様は王都へ向かいました。魔力測定のためです。魔力量が多い方が高く売れますから。」


男連中、ギリリと歯を鳴らす。息ぴったり。


「視力が戻り力も少し解放されました。その時初めて我々は姫様の存在を感じ歓喜しました。

100年の間、ずっと、ずっとお待ちしておりました。」


「実は、姫様の力が完全解放されてはじめて鍵が外れ、姫様が生を受けたこの世界とフィリアワールドとの行き来が可能となったのです。

此度姫様だけへんげの影響で制限がかかってしまいましたが。」


「私たちが決めたことではありますが、私たちも100年間外に出ることができなかったのです。」


((100年閉じ込められて・・・))


「私たちには、仲間がおりました。

でも、ライル様と縁があったあの子は、たった1人で閉じ込められています。

あの子を助けたいのです。どうかお力添えを願います。」




瑠璃のジンフィーリア語りは、まだまだ続く。


「姫様にゴウルとジルバが寄り添っているのはわかっておりました。彼らは待つのが辛くて、外の世界で自分たちの時を止め、姫様に呼ばれるのを待っていましたから。」


リア夫人の瞳から涙がこぼれ落ちる。


「我々も不完全な姫様の力になりたくて、全員でゲートに力を込め代表して楓を送り出そうとしておりました。

奇しくも時を同じくして、姫様たちもフィリアワールドに干渉し、同じく楓を召喚しようとしていました。」


「カチリと一瞬だけ鍵が外れ、無事に楓は、姫様の元へ。失敗すれば、楓はどこかの空間や歪みにハマり永久に出られなくなる可能性もありましたがそれでも構わないと勇敢に旅立って行きました。」


「ですので王都行きの時には楓も姫様のお側におりました。」


「測定日の前日、楓が教会へ偵察に出ました。

そこで引きずられるように連れてこられたハーフ獣人の女の子を見ました。」


「魔力値が高いと王国か教会の預かりとなり拘束されます。

その女の子には両親がおらず病気の妹だけでした。拘束されれば妹がどうなるかわかりきったことでしたので測定を受けたくなかったのです。」


「楓は魔力測定器を粉々にしました。」


「「「えええ!!」」」「「!」」

(聞かなかったことにしよう・・・。)



「と言っても、ワザとではなく楓の魔力量に測定器が耐えられなかっただけなのです。

このことは極秘事項でお願いします。

私たちの姫様の魔力量はその上をいきます。」


「測定器が壊れたのでその少女は測定されることなく帰宅しました。

監視が付いていたので妹と一緒に保護しました。」


「当然姫様も中止となりました。」


「速やかに別荘へ向かうよう侯爵より指示がありましたが図書館へ行きたいと仰ったので向かいました。指示に従わなかったのは初めてでした。」


「その後、奴隷商館へも行きました。」


「獣人の双子の女の子がおりました。

その双子は王国の第2王子預かりとなっておりその日が期限終了日でした。

つまり商品として店頭へ出されたということです。」


「双子の同郷の青年テックが第2王子の近衛でした。テックの為に王子が介入したのです。

テックはその日までにお金を用意することができませんでした。

姫様が双子を買いました。」


「私たち眷属全員が嵌めているバングルは、姫様のお手製です。空間収納機能があります。

力が不完全解放された時、姫様の腕にもバングルが顕現しました。

収納に結構な金額のお金が入っていました。」


「売買契約終了後、双子たちが助けを求め奴隷商の奥を見つめました。

姫様は商人の制止の声を無視してスタスタと奥の部屋へ入りました。

部屋のさらに奥に檻があり、獣人の青年が横たわっておりました。」


「檻の鍵を引き千切って中に入ると、青年の命が尽きかけていると理解できました。

ガリガリに痩せ、片腕は切断されたまま放置、両足は潰されておりました。

檻の中は不衛生でした。」


皆目を見開く。口に手を当てるものも。

(ひどいわ・・。)


(カギを引き千切ってにゃんかにゃい・・・。)


「この青年はもらっていく、と言い、皆で睨むと相手が折れ売買契約書を持ってきました。」


「馬車の中で、収納の中にあった修復薬を与えることにしました。

もう飲み込む力もないようでしたので、姫様が慎重に少しずつ口移しで与えました。

直後呼吸が安定し皆ホッとしました。」


「別荘へ向かう前に、姫様が手紙を書きました。

『双子は保護した。キャンデック領の別荘に向かう。お金は必要ないので双子たちに会いに来てやってほしい。手紙の内容は真実なので調査はしないでほしい、侯爵に知れると困る』と正直に書いたそうです。」


「ジルバが王宮に忍び込み、第2王子の近衛騎士長を探し当て、テック宛の手紙を託しました。

余談ですが、人語を話す猫が持ってきたと騎士長が本当のことを言っても、頭のおかしい人と思われたようですよ。ふふふ。」


(王宮、警備頑張ろうね。)(注 : クリス心の声)








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