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49話:遺品渡しと妖精の酌



[第1王子の近衛たち]


「御三方、大変お待たせいたしました。」


「早速ですが、亡くなられた近衛の方たちの遺品をお渡しいたしたく。」

そこで楓と瑠璃が、ジンフィーリアがゾンビ海に一人で2回入り、苦労して手に入れたことを話してくれた。


そして例の、生々しいグロズル剥けの瞬間映像を流した。

ご丁寧にジンフィーリアが倒れた瞬間も編集され入っていた。


遺髪と腕章、透明度の高いガラス瓶に入れられたアメ玉のような緑眼球(不朽処理済)とベルト、指輪を嵌めた指(切り口処理・不朽処理済)と遺髪がジンフィーリアによってテーブルに並べられた。


いずれも、白いハンカチに生成色絹糸でジンが百合の刺繍をした、なかなかの力作ものの上に並べられていた。

ちなみに遺髪はグレーリボンでまとめられていた。



(は?) (え・・・)

(が、眼球〜〜!!)

(指ーーーーーー!!!)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「お納めくださいませ。」

「「「・・・。」」」


「では、失礼致します。」


アーフィンたちも第1王子の近衛たちも全く動けなかった。

衝撃すぎたのだった。




ふと気づくと、アーフィン王子たちの前に、黒装束の男が片膝を付きこうべを垂れていた。


「突然御前に現る不敬をお許しください。

私は姫様を影より守護するものにございます。」


「本日、姫様の遺品集めの様を一部始終見守っておりました。

何事にも動じない図太い方が疲労困憊となるほどの凄まじい収集風景でした。

あの眼球は、姫様が、かの方の遺体を抱き起こした時、とろーりと落ちてきたのです。」


((や、やめ・・))


「頭で考えることは嫌いな姫様ですが、物作りには大変こだわり抜くようです。

白いハンカチの百合の花は姫様が手ずから刺繍しました。」


「指の切断面の処理には妥協を許さないというご様子で精緻に作業をすすめておりました。

眼球と指は100年後も新鮮状態を保てるようにと、不朽処理には複雑かつ精巧な術式を組み込んでいたようです。

そして、全て聖浄化済みです。眷属より聞きました。」


(なんか、さらっとすごいこと言ってないか?)


そこでキュッと口を引き結び、はじめて顔をあげた男は涙目だった。

「ですが!・・・・よろしいのでしょうか・・・それ・・。」チラリと机の上を見る。


言うだけ言うと、消えた。


・・・・・・。

・・・・・・。

・・・・・・。


アーフィン王子は、目前に眼球やら指やら置かれている近衛たちに向かって、

「兄上が、すまない・・・。」と言った。


近衛たちは、涙が止まらなかった。





[影たちの部屋]


コンコン

「お待たせ。」


「皆、指輪を見せて。」

ジンフィーリアは、一つ一つ真剣な表情で触れていく。


「自分の望む属性から1つ魔法が使えます。

どんな魔法になるかはお楽しみで。では、おやすみなさい。」





ふう。

ラース・・会いたい・・。






ジンフィーリアは、そっと食堂の様子を伺う。


遺品を机の上に置いたまま、第1王子の近衛一人(30代くらいの)と第2王子たちは酒を飲んでいた。

私の努力の結晶を肴にしてるのかしら。

酔った勢いで失くされても困る、無事に遺族に届けてほしいと思う。

うーん、皆、結構体内アルコール濃度が高くなっているようね。



第1王子の近衛さんを元気付けてあげよう。

ジンフィーリアは、一旦自室に戻って準備をし始めた。


心は、高級クラブの気遣いのできる女。

姿は花の妖精のイメージで。


ジンフィーリアは、薄桃色の花びらを使って露出の多い衣装を作る。

この人間サイズだと衝撃すぎるので、大人の掌より小さいくらいのイメージで・・・


おおっ、よい感じだわ。鏡でチェックしてみる。

人外になってしまった・・・。羽はないけれど。


明日から、空中戦闘できるように体を浮かす練習をしてみよう。



食堂に戻り、姿を現わす時を待っていた。

そして、王子が離れて目当ての近衛が一人になった。


「こんばんは。」

「ん?・・俺は夢を見ているのか?」

「そうよ。」

と言いながら、眼球と指に変質固定をかける。

手早く遺品を包み収納する。


「これ指にはめて。」

近衛が素直に指に嵌める。

よし、これで安心ね。


「泣いてたの?悲しいことがあったのね。」

「ああ・・・仲間が死んだ。」

「まあ。」


涙を拭いてやり、水を差し出す。

「飲めって?」

「これはね特別な水なの。」


「・・うまい。」

「そう、よかったわ。」とにっこり笑う。


「お酒だけ飲むと体に悪いから、何かつまみながら飲みましょうね。

これ私が作ったの。食べてみて。」


「はい、あーん。」

ぱくっ。


「・・うま、これなんだ?」

「カルパッチョっていうの。」


「大切な人が教えてくれた料理でね、もういないけれど・・。」

「・・そうか。」


「私が作った果実酒よ。ささっ、どうぞ。」

(心に沁みる・・・)


「これもどうぞ。」


「野菜?」

「そう、葉物で抗潰瘍作用があるの。酒のつまみによいわ。」


「あーん?」

「あーん・・パリパリ・・」


「うま〜このタレは?」

「大切な人が塩だれって言ってたわ。主に塩・油・胡椒ね。」


「パリパリ」「パリパリ」「止まらない・・。」

「ふふっ、気に入ってくれたようでよかったわ。」


「はい、あーん?ちょっと熱いから気をつけてね。」

もぐもぐ、、、ごっくん。


「これは?」

「鶏肉をにんにくと醤油に漬け込んで、粉をまぶして油で揚げたもの。」


「油物もつまみにおすすめ。」にっこり。

「普段飲むお酒は?」

「強い酒が好きだな。」

「であれば、なおさらつまみと一緒にね?酒は長く楽しみたいじゃない。」


「辛いことがあったあなたに。特別なお酒よ。」


「最初はそのままでどうぞ。強いから少量にしたわ。」

(黒い・・ほう、香りがよい。うっわ。)

「なんて言ったらよいか、すごいとしか。」


「ふふ、次は冷やしてどうぞ。」氷魔法をかける

「う、うまい、飲みやすい。」


「これは米のお酒で、寝かせることで芳醇な香り、まろやかな味となるのよ。」


「もっと飲む?」

「ああ。」

「冷やす?」

「頼む。」

「きれいに食べてくれて嬉しいわ。」


「最後にこれどうぞ。」

(茶色いスープ?)

「・・・うまい!」

「ありがとう。料理したもの美味しく食べてもらえるのが何より嬉しいわ。」


「醤油、米、最後の味噌スープ、これらは獣人が好んで食べるわ。」

「獣人?」

「そう、私は獣人が大好きなの。姿も愛らしいわ。」


「つまみはどれが気に入った?」

「全部だ。」

「ならここに入れておくから好きな時に食べて。」と指輪に触れる。


「米の酒もいいか?」

「1本だけよ。これは50年寝かしてあるの。売るとしたら金貨10枚ね。」

「!!」


「つまみは10皿ずつ入れておくわ。」


「辛いことを経験した人は、その分優しくなれるわ。

私が愛する獣人は、不当な扱いを受けている。あなたは彼らに優しくしてくれる?」

「・・!ああ、約束する。」


「ありがとう。」

(え、頰に口づけされたのか。)

「消えた・・・。」








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