04話:半覚醒
領地の別邸へ移ってから一週間が経った。
ここは、侯爵家の先代が好んで利用していた別荘である。
風光明媚な静かな場所である。
別荘は管理人夫婦しかいなかったので、急遽執事・料理人・メイド2人・護衛3人が雇われた。
ここの執事となったロイドは、王都本邸の執事の甥である。
この執事が商業ギルドに募集をかけ、料理人は決まった。
但し、護衛は冒険者ギルドからの紹介だ。
全員、ジンフィーリアのことを他者に漏らさないように魔法契約書にて縛られている。
侯爵たちは、社交シーズンは王都の屋敷に滞在する。
夫人と令嬢たちはシーズン外も領地へ来ることはほぼない。
夫人たちにとって領地は華やかさにかけ貧相だかららしい。
ジンフィーリアは感情の起伏があまりないように見える。
人形のようだと揶揄する者もいるだろう。
しかし、見る者が見れば、ハッキリとわかるのである。
ジンフィーリアが静かに喜びを表している表情・笑顔はとても可愛らしく愛らしかった。
護衛メンバーたちは、このお嬢様をしっかり守るぞ!と気合を入れていた。
「ああ、笑いかけてくれた、今日も俺は幸せだ。」
「天使の微笑み・・。拝みたい。」
「妖精さんは、たまにしか笑わないから見逃したくない。いつも見ていよう。」
程なくしてロイド以外がジンフィーリアに堕ちた。
別荘に来てからは外出制限はなく、ジンフィーリアは森を散策したりと好きなように過ごしていた。
そばに村などもなく人に会うことが稀であったからだ。
ただ、ギルド等のある街へ行くことは禁じられていた。
その街は、侯爵が任命した代官が治めていた。
* * *
あと3ヶ月で13歳の誕生日という日の朝、ジンは腹部の鈍痛で目覚めた。
そしてぬるりとしたものを下半身に感じ、銅貨のような臭いがした。
何が起こって・・と思ったところでメイドが起こしに来た。
「ま、まあ、お嬢様。おめでとうございます。」
え??
テキパキとメイドたちに処置され、朝食後痛み止めの薬湯を飲んだ。
そして我が身に起こったことを教えてもらった。
・子が産める体になったこと
・毎月今日のようなことが数日続くこと。
そして性教育(?)なるものの講義を、母のメイドだったミリアより受けた。
夜は皆で食卓を囲んでお祝いの食事会をしてもらった。
そろそろおひらきになろうかという頃、護衛の一人が
「嬢ちゃんも大人になったんだな〜。」と感慨深げに呟いた。
大人・・・。私はその言葉にハッとなった。
就寝の挨拶をして、部屋のベッドに座っていた。
そうか、私は『大人』になったのだ。
そう心の中で反芻すると、突然頭の中に色々な記憶が流れ込んできた。
あ、ああ、そうだった。私は・・・。
そして目の前に懐かしく大切な存在である二人が現れた。
(ゴウル、ジルバ・・・。久しぶり・・・。)
『待ちかねたぞ。』『やっと会えた!』
3人でしばらく静かに泣きながら抱き合っていた。
『なんて呼べば?』
(今はジンフィーリアという名だが、好きに呼んでくれ。)
『今世は、可愛らしい姿だな。』
(そうなのか?あ、鏡が見たい。)
立ち上がって部屋の姿見に全身を映してみた。
(お、前世の感覚では美少女と言えるのでは?)
『我らは外見の評価などどうでもいい。』
(クスッ、私は二人の外見も大好きだが?)
二人はニヤリと笑い、ゴウルが
『記憶は、どうだ?』と聞いた。
(不完全な部分もあるな。力が完全解放されていない。視力は問題ないが声が出ない。もう少し先か。)
『我ら一族は13歳が成人。』
(3ヶ月後に完全復活となるのが楽しみだ。話せないのは不便だからな。今まではそれが当たり前だったが、これからは地味にストレスが溜まりそうだ。)
(私は死後転生だが二人は・・。)
『活動を止めた、といった方があてはまるか。』
(そう、そうだな。・・二人の力はどこまで戻っている?)
『ジャ、、、ジンフィーリアと連動しているからな。細かい術しか使えんようだ。
明日、3人で何が使えるか試してみるか。』
(それは置いといて、その、全力で謝りたい気分だ。)と伝え、ベッドに突っぷす。
『『ん(?)』』
(ほら、たいていはさ、転生したら赤子のうちから努力するだろう?強くなるために。なのに自分は、ただ生きてきただけ。知識も乏しい。正直男女の違いすらよくわかっていなかった。)
『ハハハ、それは仕方ないさ。生き抜くことが第一条件だったからな。』とゴウルとジルバに背中を肉球で踏み踏みされながら慰められる。
あー、よいな、これ。
(・・・。よし!あと3ヶ月、絶対に死ぬものか。そして、今度は絶対に守り抜く!!)
『『(おーーー!!!)』』
(では、3人で寝よう。)
『『睡眠中にジンの今までを疑似体験しておく♪』』
(薄っぺらい経験で恥ずかしいが、共有よろしく。)