48話:シール、咎められ、知る
「ただいま。」
「おかえりなさいませ。」
「・・テック、夕食みたいだの。食堂へ行け。で、これ。」と言って玉を渡す。
「これは?」
「上に向けて指でこうやって弾くと、あら不思議、映像が!というものじゃ。食いながら王子たちと見てくれ。」
「ああ。」
ジンフィーリアたち以外は、食堂にいた。影たちも。
第1王子の救助後の様子を見せつけられていた。
「そろそろ、いいか。」
ジンフィーリアたちが、食堂に入ってきた。
ちょうど映像が終わり 収束した玉が空中に浮いていた。
ジンフィーリアは、それをパシッと掴んだ。
王子一行は苦々しい顔をしていた。
「アーフィン王子殿下、この支払いの件だが、第1王子殿下が暴走しないようにくれぐれも頼みたい。」
「ああ、責任を持って対処する。」
「それと、ゾンビ化を免れた二人だが、誰かさんが辛く当たるかもしれない。気にかけてあげてほしい。」
「ああ、もちろんだ。」
影を見、玉を投げ渡す。
「これを父様に。じい様と兄様と見てほしいと伝えて。あとで部屋へ行く。」
影は、肯首する。
5人は食事を済ませて出て行った。
「あの玉だが、私ももらえないだろうか。証拠になる。」とアーフィン。
「わかった。」複写した玉をテックに渡す。
テックから王子に玉が渡る。
そして、王子一行を見、
「シールと、第1王子の近衛で人柄に問題のない方を呼んできてもらえないだろうか。」
王子が目で合図し、近衛の一人が出て行った。
王子が「さっき、父様と呼んで「あ、・・・、戻った。」とジンフィーリア。
!!!!!
「姫様!」「姫さま!」
「ちくしょう、なりきり姫、気に入ってたのに。」
「ナーナたちは、部屋に戻って。」
ジンフィーリアたちと王子一行だけとなる。
「アーフィン王子殿下、貴方様がこの金の瞳のことを教えてくださったおかげで、肉親に会うことができました。心より感謝申し上げます。」
そしてジンフィーリアは、見事なカーテーシを披露した。
王子が何か言おうとした時に、シールと第1王子の近衛3人が入ってきた。
そのうち2人は希凰桃を処方された若者たちだ。もう1人は、30代くらいだろうか。
「お呼びだてして、申し訳ございません。」
ジンの左右に子ドラゴンが浮かんでるのを見て、4人は固まる。
平常心を取り戻した者から順に、ジンフィーリアたちは再度礼を言われる。
「御三方はこちらへおかけください。そして少々お待ちくださいませ。」
「・・・これから話すことは、今は、皆様の胸の内に留めていただきたく存じます。」
「さて、シール様。アーフィン王子殿下たちにきちんとお礼を申し上げましたか?最短でギルドまで走ってくださったからこそ、ギルドマスターも迅速に動けたのですよ。」
「あ・・・」
「王子殿下、近衛の皆様、改めてありがとうございました。」
「そして!シール様、どうして街の代官と会うこともされていないのですか。ここに侯爵邸はありませんが侯爵領でしょう?」
「しかも、次代侯爵のあなたの民を守ってくれた冒険者たちに労いもないのですか。
ドラゴンの尾で吹き飛ばされた精鋭たち10人は複雑骨折しました。
ドラゴンブレスで腕と足が炭化してしまった冒険者もいるのですよ。
シール様!もう少し自覚をお持ちください。」
「っ・・・。」
「私の母は帝国の公爵夫人でした。16歳のとき誘拐され、経緯はわかりませんが記憶喪失のままここザクセン王国の街で暮らしておりました。
そしてキャンデック侯爵が母を妾としました。貴方のお母様が平民と仰っていたのでその扱いだったのでしょう。
臨月の母は、キャンデック侯爵夫人によって階段から突き落とされました。
そのまま私は産まれ、母はその後亡くなりました。」
シールはこれでもかというほどに目を大きく見開いた。
「私は目が見えず口も聞けない状態で生まれ、10年間、平民の老父婦に育てられました。
ただの一度も部屋から出してもらえませんでした。
養育費はキャンデック侯爵から出ていました。」
「老夫婦が亡くなり、王都の侯爵邸に連れていかれました。
3日目に貴方の妹さんが離れにいる私のところに来られました。
侯爵夫人から私が呪い子と刷り込まれ、私に向けて雷魔法を放ちました。」
「私の母の侍女だった方が代わりに雷攻撃を受け、その方は酷い有様でした。」
シールが思わず、よろける。
「シール様お座りください。」と瑠璃が椅子をすすめる。
彼は、倒れこむように座る。
「シール様は何も悪くありません。ただ事実を述べているだけです。」
「そして、私は、すぐにここの別荘に移されました。
侯爵の意図がどうであれ、生かしてくれたことを感謝しております。」
「ち、父上は、あなたをどう?・・・いえ。」
「金持ちのひひジジイに売るつもりだったかもしれませんね。」
「っ・・・。」
「こちらをお納めください。
これは、侯爵が負担した私の養育費の2倍の金額です。侯爵へお渡しください。」
「さあ、お立ちください。」
瑠璃に支えられシールは退出した。
「アーフィン王子殿下、お耳汚し失礼いたしました。
シール様のことは守っていただけると有り難く・・・。
長くお付き合い頂きありがとうございました。」
アーフィンは、何か言いたそうにしていたが「最後まで見届けさせてくれ。」とだけ言った。




