47話:癒しの唄
「ギルマスが何か言いかけていましたね。」
「ああ。」
ジンフィーリアは気づいていないが、前世のような話し方になっている。
「姫さま、せっかくのコスプレですから、和風お姫さまモードでいきましょう。」
「なりきるにゃ。」
「ああ、鞠。愛いやつじゃ。・・これでどうじゃ?」
「いいにゃん ♪ 」
「影の、無理をする、と言いたいところだが感謝している。」
『そうだな、あの時は肝が冷えた。』
(5人を自由にさせておいて、よかったということだ。)
(聖獣様がたも眷属の美女たちも、ブレスが来る前に姫様の側に来ていたと思うが。)
「5人が来てくれなければ、木っ端微塵だった、ありがとう。」
そう言って一人一人に抱きついて礼を言う。
(私どものような者に!過分なお心遣いだ。)
「指輪の機能を使いこなしているようで何よりだ。」
「そ、れなのですが・・。」
「うん?」
「詳しく教えていただけないでしょうか。」
「ああ、もちろ・・・、もしかして、ゴクリ。防御機能があるの知らなかったりして?あはは。」
「仰る通りです。宝の持ち腐れで申し訳ないです。」
!!!!!!
『肉盾になるつもりだったか!!』
『改めて、礼を言う。これからもよろしく頼む。』
「一族を代表してお礼申し上げます。」瑠璃と楓が深く頭を下げる。
5人は、照れたり戸惑ったりしていた。
「力が戻ったら5人に指輪の機能を追加しよう、少し待っていてくれ。」
「まず収納。指輪の近くに持ってくると入る。」
え?
うわ、ほんとだ。
おおー
「出す時は出したいものを念じてもいいし、一覧と言えば自分にだけ、入っているものが見える。
あ、好きなように並べ変えられるぞ。」
!!!
「ちょっとした回復機能が付与してある。」
え!!!
「例えば、鞠。」
「はいにゃ。フシャアッ!」と言って影の腕をばりかく。
「はい、見て。」
あ、はい・・
!!!!!
「近距離転移、目視出来るところまでだが。戦闘に応用するとなかなか使い勝手がいいぞ。」
も、もうもう驚きすぎて・・・。
ははは・・・・
「曖昧だがある程度の防御、これは検証してくれ。」
「目視出来る盾は3人から使える、なかなかの防御が期待できる。」
「ここにいる間に、誰かに魔法なり物理なりで攻撃してもらって確かめればいい。」
「あ、我が眷属は除外で。威力がありすぎるからな。・・こんなところだな。使いこなしてくれ。」
「あ、忘れていた。もう一つ。ある程度の隠蔽・遮蔽が常に発動中だ。」
はあ、、、
「5階があなたたちの部屋だ。部屋で試せばよい。」
5人はいそいそと部屋へ向かう。
指輪を試したくてたまらないのだろう。製作者冥利に尽きる。
(姫さま、口調がダメにゃん。なりきれてないにゃん。)
瑠璃は、例のグロいズル剥けを、会う人会う人に映像で見せていた。
ジンフィーリアの苦労をわからせたいだけでなく、自分たちだけがあれを見てしまったのが嫌で、あの境地に引きずり込んでいた。
ただ、共感してほしかっただけだ。
「そろそろ冒険者はギルドに着いたかな。ゴウル、ギルドまで頼む。」
『テックに案内させよう。ちょっと待て。』
シュン!
!!!
『テックを借りるぞ。』
『ジン待たせた。
テックも乗れ・・・窓を開けてくれ。』
窓から飛び出し、そのまま空を駆ける。
「うわあああー!」
『うるさいぞ!冒険者ギルドまで案内しろ。』
闇夜がゴウルたちを隠し、騒がれずにすんだ。
到着し、ゴウルは子虎になり、ジンの肩に乗る。
受付嬢に向かって話す。
「ギルマスを呼んでたも。」
(くっ、何だ?)
(かぐや姫プレイだ。)
「え、ギルドマスターは今、多忙で。」
「早く呼ぶのじゃ、我は忙しい!」
『女!早くしろ。』低い声で脅すように可愛い子虎のゴウルが言う。
「ひっ。」
「俺は第2王子の近衛、だ。」
「!わかりました。」
「ギルマス!」
「色々聞きたいこ「金一封でもらって嬉しい金額はどのくらいじゃ?」
「・・・そうだな、金貨1枚かな。」
「なら金貨500枚ある。一人2枚ずつ今日の冒険者たちに渡してくれ。残りはギルマスの権限で使ってくれ。」
「・・・恩にきる、皆喜ぶ。」
え、おい、まじか。
やったあ!!
大入袋〜!!!
姫様最高!!
「ゾンビじゃと素材取れんでな〜。あと、シールじゃが。」
「キャンディック侯爵の子息か?」
「そうじゃ。あれは、この街の代官と話したかの?」
「いや、そんな話は聞いてないな。」
「ちっ、あいつめ。次期侯爵の自覚がないのう。」
(こんなキャラだったか??)
「怪我人の状態は?」
「ドラゴンの尾で吹っ飛ばされたやつらは、俺以外全員骨折。俺はあの鎧があったから。
あ、脱ぎかたくらい教えといてくれよ。」
「わかったのだから、よいじゃろ?」
「まあ、実際助かったけど。この指輪返す。俺のエモノ返してくれ。」
「その指輪、収納にもなっておる。その中にお前のアックスも入っとるぞ。」
「は?」
「指輪に名付けをせよ。さすれば指輪が使い方を教える。」
「はあ??」
「それ、お前にやる。」
「!いいのか?こんな凄いものを。」
「ああ、迅速に動いてくれた礼じゃ。」(連絡が取りやすいから便利に使おう。)
「ありがとうな!」
と言って満面の笑みのギルマスに抱き上げられる。
「それで、怪我人じゃが。ひどいのは?」
「ああ、ブレスで腕と足が炭化したやつらが・・・」
「なるほど。」
「この体限定で癒しの歌という能力をもっていてな。試していいか?」
「回復系か?」
「そうじゃ。ただどこまで回復できるかわからん。」
「かまわない、頼んでいいか?」
「そのひどいやつらも?」
「ああ、まだ急ごしらえの養護所にいる。」
「よし行くぞ。」
(すげえな、別人みたいだ。)(注 : テック心の声)
(なりきってるな。ただ何て言ったか・・姫君?・・いや、ロリばばあ!だ。)
ゴウルを通して見聞中のジルバは、そう思った。
[癒しの子守唄]
「我は、かぐや姫じゃ。癒しの歌を発動する!」
「ブフォッ!・・。」
『テック静かにしろ。』
「ごめん。」
かぐや姫は、歌う。子守唄を。
歌詞の内容は、我が子以外は目に入らないという母親の偏愛と妄執に満ちていたものだった。
だが、心に響く歌声だった。
歌いはじめると、空から白いベールが降りてくるように怪我人たちに光が降り注ぐ。
患部は強めに光を纏う。
歌い終わるとゆっくりと光が収束し消えた。
シーン。
辺りが静寂に包まれる。
炭化した腕と足も元どおり。
元々の怪我や機能障害も修復された。
歌声が届いた人全てに、恩恵が与えられた。
かぐや姫は、一人満足すると、
「ギルマス、ではまたの。」と言い、次の瞬間には姿がなかった。
消えた!!
!!!!!
遅れて、大騒ぎとなる。
泣きながら喜ぶものも多かった。




