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46話:変身



残りの討伐隊が到着した。

途中でトボトボ歩く一行とすれ違い、第一王子とキャンディック侯爵子息と確認したとギルマスに報告があった。


(結界内に入ったのに、本当に戻って来られたんだな。いや、姫さんたちだから、か。)






「来るぞー!!」


人間ゾンビたちは基本速度が遅いので、転ばせ、焼く・滅すという連携でサクサク数を減らせた。


虫の中で苦戦していたのが、巨大な蛆ゾンビだった。

視覚・臭覚的にキツく、鼻をつまみ、目を瞑って魔法を使っていた。

物理で切ったものは、刃から滴れる緑色の臭い汁で嘔吐(えず)く者続出であった。


3時間ほど滅し続けて、そろそろ終わりかと皆が思いはじめた頃、ドラゴンゾンビ登場!

ジンフィーリアの予想通りだった。

そいつは、一切攻撃させてもらえず、ギルマスの聖槍でチリと化した。


皆が勝鬨を上げようとした時、地の底から響くような大咆哮とともに現れたのは、先のドラゴンの5倍はあろうかというダークドラゴンゾンビ2体だった。



大きく口を開け、ダークドラゴンの一体がブレスを吐くぞ!吐くぞ!!というタメの状態で、奴に向けてジンフィーリアが手の平を翳した。


ジンフィーリア陣営がニヤリとする。


直後、ジンフィーリアの体が変化した!!


(え、何?魔法が使えない、え、、あ、ブレスが来るやば!!)

回避のため動こうとしたが着物の裾を踏み転びそうになった。


ジンフィーリアを見失い、ゴウルたちが出遅れる中、5つの黒い影が身を呈してジンを覆った。

(エン!!)


ジンフィーリアたちにブレスが直撃した!!!と、誰もが思った。

しかし、突如、空中に現れた五角形の魔法盾がブレスを吸収し、おそらく威力5倍増でドラゴンに跳ね返した。

ドラゴンの体は跡形もなく消滅したが威力は収まらず、その軌道上の森が消滅した。


固唾を飲んで見守っていた者たちが、呆気にとられるが、まだ1体のドラゴンゾンビが健在だ。

皆、気を引き締め直す。



最後の1体は、自在に動く障壁を駆使し、耐久力もありギルマス達精鋭も苦戦。

しかも、切りつけても最速回復を繰り返す。


ブレスを吐くのがわかった。冒険者2人が首を切りつける。ブレスが右に逸れる。

そのそれたブレスの軌道上に体の一部が出ていたものは、もれなくブレスを浴びた。

そして、ドラゴンが勢いよく尾を振り切り、ギルマス達精鋭全員が吹き飛ばされた。


タメが長く超ド級のブレスがくる予感がした。

ゴウルとジルバが動こうとしたが、その直後ニヤリと口の端を上げ、そのままジンの側に寄り添った。


直後、カッ!!!とまばゆい光に平原は包まれた。視界は、真っ白になった。

光が急激にドラゴン体に収束した瞬間、腐れダークドラゴンの体はキラキラとした粒子になって霧散した。


敵ドラゴンが居た対面には、キラキラと光る水色と桃色の小さなドラゴンが浮いていた。





楓・瑠璃は焦っていた。

ジンフィーリアの変化と同時に、彼女との繋がりがプツリと切れたからである。

あまりのことに、一瞬、また失ったのかと思ったほどだ。


ジンフィーリアは、腰まで届く艶やかな黒髪に黒目の幼女となっていた。

纏っていた衣装は、赤黒白の錦鯉ばりの豪華な十二単だ。

幼女のかぐや姫コスプレといったところだろうか。





【カメリアハウス:ストーカーの間にて】


ジュースを飲み菓子を頬張りながら、鞠達は映像を視ていた。


大好きな自分たちの姫さまが腐れ暗黒龍に向かって手をかざす。

最高にカッコいい!

手から何が飛び出すのか、ワクワクしてその時を待った。


ーーブツンーー


! ! ! !


「つ、椿!!!にゃにゃにが。」


と、そこへ、出張中の者が次々に慌てて転移してくる。

皆、椿ならこの事態を説明してくれるのでは、と・・・


「皆、落ち着いて。」と言いながら、椿自身の心臓が早鐘を打つ。


「ゴウル様ご兄弟が側におられます。楓と瑠璃も。」


「主人様はご無事です、安心して。」


「楓たちに念話を送るのは、今は控えるように。

少し、待ちなさい。」



(あるじ様、我らが(あらかじ)め聞いていた以上に、対価を出されたのですね・・・)






【彷徨える森:殲滅後の現場】


周りの喧騒は無視し、自分たちだけの結界内で話していた。


「姫様、今のこの事態、思い当たることがありますか。」

ジンフィーリアが肯首する。


「この変身も対価の一部だ。」


それにひとまず安堵し、瑠璃が皆と繋がる。

瑠璃視点の映像が映し出される。


そこに居た中央の黒髪の幼女が、ジンフィーリアであると、ゴウルたちの様子で理解する。


「まずは、心配かけてすまない。この状態は長くとも24時間で元に戻る。

皆と会えたばかりなのに、不安にさせて申し訳ない・・・。」


眷属達は、取り敢えずホッとする。





前世、力不足のせいで、大切な命が手から溢れてしまった。

それ故、次の生では、可能な限りの力を得たかった。


与えられる以上の力を望んだので、命だけでは足りなかった。


それで、まず能力発動までの『間』を用意した。

視力と声を封印し、解除までの生命の危険を対価として差し出した。

封印解除条件は、皆も知っての通りだ。

だが、まだ、足りなかった。


冷静に対価を出していくつもりだった。

だが、いざとなると、情けないことに焦ってしまった。

もっと良い対価があったはずだ。


時間切れ(自分の命が尽きる)までの間、対価を追加していった。

1年に二度、力を封印する。ただし封印時間は都度24時間以内とする。

まだ、ダメだった。


・・・・・。

駄目か。



1年に二度というこの条件は、初変化(へんげ)時まで自身の記憶から抹消される。

・・ここでやっと等価となり、追って命が尽きた。



正直、曖昧な部分が多い。

これから都度、この事象を検証することになる。


で、今のこの体、『癒しの歌』という能力がある。


椿管理の我が家に帰還できない。

バングルの共有部分に入っているモノが取り出せない。


おそらく剣は使えるが、バフがかけられないので、力技で押し切るのは無理だ。

言ってみれば、小技を利かしてある程度の実力者一人を倒すことは可能かと。

変わり身でどこまでやれるかわからないが。


今の体に紐付いている限定能力は、早速使ってみたい。

いつ効果が切れるかわからないからな。




「私たちがが姫さまに付いていれば、命を守れます。」と楓。

「おまえたち頼みになる、すまない。」


「逆に言うと、姫様がお一人の時に変化が起これば、私たちは姫様を追えません。」と瑠璃。

「ああ。」


『確かに我らとの繋がりも切れてはいるが、我は追えるぞ。』

『俺も大丈夫と思う。』

『蒼と紫蘭も追跡出来るな?』

「キュイ。」「ピュイ。」


「成る程、高位存在の感覚能力、といったところでしょうか。」と瑠璃。



「今日は、疲れた。グロいヅラのせい、きっと・・・。」


「ラナの家に『翡翠館』に向かいたいので頼めるか。命の恩人のこの5人も一緒に頼む。」










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