43話:冒険者たち、彷徨える森へ向かう
アーフィン第2王子たちは全力で急ぎ、冒険者ギルドへ到着した。
勢いよく建物に入り、受付嬢に、ギルドマスターを呼んでくれ!と必死の形相で言った。
それでも受付嬢が簡単に呼べないとかごちゃごちゃ言ってラチがあかないので、
「彷徨える森でスタンピードが起きた!早く呼べ!!」と大声で怒鳴った。
「え、はいいぃ。」
ギルド内はざわつき、本当か?と直接聞いてくる者たちもいた。
そして金ピカ鎧は、ひっじょうに目立っていた。
「スタンピードだって?」と言いながらギルドマスターがやってくる。
「そうだ。彷徨える森でゾンビのスタンピードが起きた。急ぎ対応を頼みたい。」
ザワつきが大きくなる。
「あなたは?」
「ここザクセン王国の第2王子アーフィンだ。」
「「「えええ!!」」」」
場が騒然となる。
ギルマスは迅速に指示を出していく。
聖・火魔法が使えるものは皆協力してくれ。
高速馬車を用意しろ!
準備が整う中で、ギルマスは、さらに詳しく王子から聞く。
虫型ゾンビか。
そして結界内側に第一王子が?侯爵家の息子が?
え、おい、嘘だろ。
それもう死んでるじゃん。
馬車に乗り込んだ討伐隊が彷徨える森を目指す。総勢150名ほど。
向かう馬車の中でギルマスと王子の話は続く。
結界が破られていないのに、なぜ結界手前でゾンビに襲われたのかわからん、と王子が言う。
スタンピードの前哨戦で一時的に結界のどこかがが綻びる。その時は早めに修復される。
結界の手前に現れるのは修復前に漏れ出てきた奴らだ。
普段、彷徨える森に行く人間は、ほとんどいない。
結界を越えて踏み込むと、戻ってこれなくなる。
結界前の森には旨味がないから、冒険者で行くものはいない。
定期的に監視はしているがその間隔は長い。
大抵は、街まで近づいてきた時点で気づく。後手に回る。
漏れ出た魔物を倒している間に、結界内で魔物が大量に増え続ける。
結界が耐えられず一気に穴が開く。
そこからはイタチごっことなる。
結界の穴が塞がるまで魔物を滅し続けて終わる場合は、結界内に残っている魔物は弱体化され平穏を取り戻す。
修復が全く間に合わず、結界内にいた魔物が出尽くしてしまった場合は、最後の特大次第では大惨事となる。
全滅させられれば、次回スタンピードまで余裕があるが。
今回は前回のスタンピード時にはなかった別荘がまず真っ先に飲み込まれたはずだ。
この時点で別荘から連絡がくればよいが、なければ、やはり街へ近づいてきた時点でしか気がつけない。
王子たちがたまたま調査していたおかげで、今回は後手に回らず済んだ。
しかし王子側の被害は大きい、といったところか。
と、そこで金ピカにジンの声が聞こえた。
(え、え、姫様どこ?)
(その鎧は私が創ったものだから、装着している者に念話が送れるの。
結界内のゾンビは今1500体ほどまで増えているわ。
そのうち人間ゾンビがざっと300くらい、オーガゾンビが200、残り虫型ね。
奥から巨大なゾンビが出てきそう。もしかしたらドラゴンゾンビ、かも。)
「ええええ!」
(別荘の前まで来たら、そっちから念話して、じゃあね。)
あわあわしながら今聞いた情報を伝える。
その情報は、正しいのか?1500、だと。
一人10体倒せばよいわけだが。
「アホ王子たちは・・・」
『ああ、結界内だ』
こんな時に結界内に入るのは・・・中で転移発動するかどうか・・
転移できなかったら・・蹴散らすのは問題ないとして戻ってこられるの?
あーもう!
「見捨てても問題ないですよね。」
「自業自得にゃん。もう死んでるにゃん。」
『・・・生きとるな。減っとるが。』
「死んだのが王子ならあとは放置しましょう。」
「元々ここ彷徨える森での対処は、結界から出たものをこの平原で待ち受けて殲滅。結界内には入りません。」
『だんまり侯爵の息子も中だな。』
「くっ、・・・助けて恩を売ることにする!シール優先で。」
「姫さま、正直ですね。」
「鞠と子ドラゴンたちは、椿の元へ。」
鞠が子ドラゴンたちを抱いて消える。
ゴウルから結果内の状況を知る。
「アホ王子たちは、一旦この平原に集めましょ。」
「3箇所に固まっているから、左ゴウル。右ジルバ。私たちは中央で。」
『乗れ、結界まで走る!』
ゴウルたちが本来の大きさになる。




