40話:皇帝と皇太子
ザクセン王国か。ディーンにつける影を5人に増やそう・・・。
さて、父上を落ち着かせつつ、納得させよう。
「陛下。」
「二人の時にそれで呼ぶな、息子キラよ。」
「ライルの見つかった娘のことなのですが。」
「そうだ、そのことで呼んだのだ!!。」とキラの方へ前のめりになって、興奮気味に話す。
(うわあ、今にもそこでクルクル回りそうな勢い、見たくないけど。)
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ああ、堂々巡りだ。もう投げようかな。
同じことを繰り返し言うのって、ボケてきてんじゃ??
はあ、俺の妖精猫が!神獣が!!ドラゴンが!!!遠ざかっていく〜〜 ああ待ってくれ〜。
クッソお、俺が何言っても(脅しても)聞いちゃあいない。
仕方ない、俺のお楽しみのお裾分けだ!
「フィリア自体が望んでいないのです。陛下に、お祖父様に恥をかかせたくないと。」
「お、おじいさま・・。リリの娘にお祖父様・・・。」
おい、おーい!!聞けよ!
「妖精猫!!」
「ん?」
「父上は、妖精猫に会ってみたいと思いませんか。」
「ライルを助けてくれた妖精猫か?会えるのか??実はライルから聞いて、凄く凄く!羨ましかったのだ。」
「会えたら、お披露目なしに?」
「だめだ。きちんと披露目をしないとフィリアが侮られる。有る事無い事詮索されて悪意に晒される。
リリを助けてやれなかった。フィリアは絶対守る。私が後見となってもいい。」
(リリを盲愛してる一人か、父上も。フィリアにはまだ会ったこともないくせに。リリに似てなかったら、顔見た途端、興味なくしたりして。)
「ディーンのことですが。」
「急に話が変わったな。」
「明日朝一で、出発します。母上の対処、お願いします。」
「!!・・・わかった。怖いけど、おまえも同じ目にあうからいいか、同志よ。」
(ぐう、、、、。)
「私の方でも見護らせよう。」
「ありがとうございます。」
「ディーン、ディーンか。・・・決めた!フィリアと婚約させよう。」
(!父上の方から。)
「キラの子の中でディーンが一番かわいい。」
「それ、私以外の前で言わないでくださいね。」
「私はそこまで愚かではない。」
「父上はディーンの意思を尊重していたのでは?賛成ですけれど。」
「だからこそだ。フィリアはまだ12歳。ディーンは結婚を急ぐ必要がない。」
「リリの娘なら絶対可愛い。求婚者が殺到するだろう。穢らわしいものをフィリアに近づけたくない。」
「だから賛成です。」
「なに?そうか、そうか。」
「ですが、父上から内々にということを私が伝えます。皇帝からの勅命にしないでください。あとはライルと話します。」
「・・・本決まりでよいのだな?」
「はい、明日にでもディーンの母に伝えます。決定事項と。それでですが、ディーンの婚約者だと紹介し、さらっとお披露目、でどうでしょうか。」
皇帝はしばし考える。
「まあ、いいか・・・。なら、妖精猫!頼む、会いたい。」
「はい、わかりました。ですがあの者らは気紛れ。突然の訪問となりますよ。公務はどうされます?」
「・・・問題ない。」
「・・・。では、お披露目の件ライルに伝えます。」
「妖精猫、忘れるなよ!」
[翌日の午前中]
「どうした?」
「あの金剛宮から侍女が来ておりまして。」
「通せ。」
「皇太子殿下、お助けください。私どもではもうどうしようもなくて。」と泣き崩れた。
はあ、もうか。
かわいい息子のために、贄になるか。
「何の騒ぎだ?」
「「「!!!」」」
あーあ、酷い有様だな。
侍女たちも気の毒に。
「皆出て行け。」
涙と鼻水だらけにして奇声を上げるものに近づき、抱きしめる。
「どうした?」と優しい声で囁く。
私と認識したそれがハッと顔を顔を上げる。頰に口付けじっと見つめる。
「あ、あの・・。」それは、顔を真っ赤にする。
「ディーンの婚約者が決まった。」
「え?」
「皇帝陛下からのお声掛でディーンとジンフィーリア・ド・カンタベル嬢との婚約が相成った。」
まん丸に目を見開く。(面白い顔だ。)
それから優しく優しく諭していく。
「ディーンには影をつけた。心配するな。陛下も配下を見護りにつけてくださった。そなたの息子は愛されておるな。」と言ってまた口付ける。
あ、機嫌が直ってきた。よし!
「あまり侍女たちを困らせるでない。」
「はい、申し訳ございません。」
「では、仕事に戻る。」
「!お忙しいのに「よい。」と言って最後にもう一度口付ける。
外に控えていた侍女たちに「苦労をかける。」と労う。
執務室に戻り、側近に有名スイーツ店の菓子を買ってくるように指示する。
「この菓子は、あれに届けよ。
こちらは侍女たちに。あれに内緒にするように言い含めておくように。。」
「御意。」
皇太子は気遣いができる者であった。
[侍女たちの井戸端会議]
侍女にまで気配りしてくださるなんて。
畏れ多いけれども、このスイーツ美味しいわ。
これ1日20個の限定品よ。なかなか手に入らないんだから。
ああ、ほっぺたが落ちそう。
これがあるから、何とか勤められるわ〜。
ディーン様からも時々いただけるし。
でも、行ってしまわれたのよね〜。
あのお顔がしばらく見られないと思うと、残念だわ。
では、クリス様はどう?最近少年のような初々しさを感じるの。
それでいて大人の色気もあるのよね。
それにしても皇太子殿下は、流石ね〜あしらいがうまいわぁ。
あしらいって、失礼よ、あはは。
おいちぃ〜。
後に作者不明の「妻の操縦法」という本が出版され、男たちのバイブルとして重宝された。
【パーマー侯爵邸にて】
ライルとクリスは、
ケインのフィリアに対する不細工発言を含め、諸々をジンの祖父母にチクった。
夫妻は黒い笑顔を浮かべていたが、フィリアの頼みごとを告げると、頰が緩んだ。
礼儀作法の教師をお願いしたのだ。
孫娘がちょくちょく通ってくると知って嬉しくてたまらない二人だった。
婚約とお披露目の件もこちらの希望通りになったことを喜びあった。
早めに兄上の対価を支払わないとな。




