39話:ディーン、冒険者3年確約をもぎとる
ライル兄が帰ると即行動に移した。
俺は、文官に正式な契約書を作成してもらった。
あとは母上のサインをもらうだけだ。
わざと字が汚い文官に作らせた。
「母上は?」
「あ、殿下。お待ちくださいませ。」
「どうぞ。」
「母上、ずいぶん待たされましたが?」
「ふふふ、ディーン、見て。30人分の令嬢の姿絵よ。
今日という今日は、絶対に決めてもらうわよ。
「決めるまでここから出さないから。」
「・・・。」
「ふうー、母上も懲りませんね。まだ結婚なんて考えられません。」
「何を言うのよ。婚約者がいないのは、あなただけなのよ?
私も将来の娘とお茶を飲んだりしたいわ。」
(うわー、よく言う。いびる気満々のくせして。絶対に母上みたいな女とは結婚しないぞ。
冒険者になったら、早めにランクを上げて、女を侍らせるんだ。俺は父上に似て顔はいいし。
その中から未来の側室を選んでもいいな。)
「ディーン、聞いてるの?」
「なら、冒険者期間を3年!それを認めてください。」
「何言ってるの!死んだらどうするの! 2年だって本当は許したくないのよ。」
「3年間の活動を認めてくださったら、明日中に婚約者を決めます!」
「っ・・・。う、嘘じゃないでしょうね?」
「父上に誓います。」
「・・・いいでしょう。その代わり、2ヶ月に一度は戻ってきてパーティーに参加しなさい。婚約者と一緒に。」
「母上の仰せのままに。」(やったぞ!あともう少し、頑張れ俺!)
「ふふふ。じゃあ誰にする?」
「その前に、これにサインをください。」
「?何よ。」
(こんな汚い字で。まだまだ子供ね。まあこれで納得するならいいわ。婚約後、冒険者として3年・・・うん、問題ないわ。)
「これでいいかしら?」
「ありがとう母上!」
息子の満面の笑みに顔を赤くする母親の図。
(もう!顔だけはほんといいんだから。いえ、頭も・・・、確かによいわね。私に似たのかしら。ふふふ。)
ここまで来れば大丈夫だな?
「いよっしゃあああぁーーー!」
「ライル兄、ありがとう!どんなに不細工でも優しくすると誓うよ!」
「父上!」
「おう、機嫌がいいな。」
「明日の朝一番で出発します。」
「・・・いきなりだな。」
「まあ、通常なら3年かけて帝都学院で学ぶ分を既に終えているのだから。誰にも文句は言わせんがな。
俺の息子、天才!」
「やだなあ、父上。あ、これ預かっておいてください。絶対母上に見つからないようにお願いします。」
「なに?3年?・・・やるじゃないか。」
「ライル兄に助言をもらったんだ!」
「そ、そうか。」
「それと、おまえたちの結婚破棄契約書か。」
「ケインがごねたんだろ?」
「父上よくわかるね。」
(ライルの娘の容姿がわからんが一応クギを刺しておくか。)
「ディーン、おまえが万が一にもジンフィーリア嬢を気に入ったとしたら?」
「え?平民ぽいし、絶対に母上が気に入らないと思うから、わざわざ生贄にするための結婚なんてしないよ?」
(母上のヒステリーが悪化するだけの相手はごめんだ。正妻は母上のすすめる相手にして、第2、第3の妻は自分の好みで選ぼう。)
「・・・。おまえは冷静に母親をみてるんだな。」
「父上は、どうしてあんな面倒臭くてヒステリーの母上を?」
「・・・普通に政略結婚だ。」
「念の為に伝えておく。かの令嬢が結婚相手になることは絶対にあり得ぬ。」
「うん?」
「ふー、つまりだな、訳ありだから結婚相手として認められない。」
「よかった、本当に偽婚約者なんだ。父上のこと信じてたけどさ。」
「一言で言うと、いろいろと規格外な娘だ。」
(容姿が規格外なのかな。優しくできるか自信がなくなってきた・・・。顔のパーツは、全部付いているよな?)
「それで、どこの国へ向かう?影をつけてやる。」
「ありがとう、父上!ザクセン王国へ行くよ。」
「特急馬車とポータル使って、明後日には到着する予定。
怒り狂った母上に追っ手をかけられると困るから、最短で離れるよ。」
「その怒りは、俺に向けられそうだな・・・。」
「何かあれば連絡はギルド経由にする。二人で決めたサイン(暗号)以外の文書は、あれからだから無視していい。」
「うん。やっとヒステリーから解放される〜。」
「・・・ポータルはかなり高額だ。行きの分は出してやろう。・・持っていけ。」
「やった!浮いた分でよい装備が買える。」
「くれぐれも無茶はするなよ。」
「はい!」
「ならいい。楽しんでこい。」




