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03話:侯爵家にて



3日目の昼、侯爵邸に到着した。

事情はすでに宿にて接触した者から伝わっている。

出てきた執事には、離れに案内された。

ここならあのプライドの塊&見栄っ張りの侯爵夫人がいる本邸からも遠いからな。


あ、姉さんが飛んできた。

俺はさっさと退場しよう。


「ジンフィーリアお嬢様!!なんと、なんとお可愛らしく成長されて。奥様によく似ておいでです。お会いしとうございました!!やっと叶いました。」

と興奮しながら涙を堪え一気に捲し立てた。


「これからはおそばを離れません。」


そのあとは食事や入浴を挟んで、ずっと話し続けるメイドであった。


* * *


翌朝、侯爵がやってきた。

「一週間は、ここに居ることを許す。その後領地にある別邸へ移動せよ。」

それだけ言うとさっさと踵を返して行ってしまった。


ジンフィーリアは呆然と、・・・しなかった。

予想通りで特に何も思わなかった。

だがジンフィーリア付きメイドは違う。

内心怒り狂っていた。だが声に出せば余計にお嬢様を悲しませるだけと思い我慢した。


今日も手取り足取り甲斐甲斐しくお嬢様の世話をする。



侯爵邸での3日目。

離れに茶髪の少女が現れた。

少女付きのメイドが、一生懸命連れて帰ろうとしているが都度拒絶魔法を受けて、痛みに顔を顰める。

ジンフィーリアを守るべくメイドが少女の前に立ちはだかる。

「お嬢様、こちらに来てはなりません。旦那様のお叱りを受けますよ。」

「平気よ、お父様は私に甘いんだからぁ。それより、その子は何?なんでここに居るの?」

「お帰りください!」

「おまえ、誰なの?」

誰も何も言わない。いや勝手に応えるわけにはいかない。

「ちょっと、侯爵令嬢が聞いているのよ?こたえなさいよ。」

「お嬢様、この方は話せないのです。」

「はあ?・・・もしかして目も見えないの?」

「「・・・・。」」

「そう・・。ちょうどいいわ、試したい魔法があったのよ。おまえ、結構魔力があるじゃない。受けてみなさいよ。サンダーボルト!!」

直後バリバリと音が聞こえ、ジンフィーリアはメイドに突き飛ばされた。

メイドに直撃し、倒れたメイドの半径1Mくらいも焦げ付いていた。

「ひ、ひぃ。」令嬢メイドは恐怖で腰を抜かしていた。

突然の光と音に本邸の者たちも騒然とし、慌ててやってきた執事がテキパキと指示し騒ぎを収めた。

メイドは、ひどい火傷を負ったが教会の神官による回復魔法にて事なきを得た。

執事の緊急依頼を受けて超特急でやってきたのだ。


夜、騒ぎの元の令嬢は侯爵と対面していた。

「なぜ、あんなことをした?」

いつもと違う怜悧な眼差しと声にビクリとしながらも、話し出す。

「お、おかあ様が、、離れに呪い子がいると言うからみ、見に行ったの。」

「それで?」

「ま、魔力を感じたから、私の魔法をぶつけたらどうなるかみてみたくて。」

「の、呪い子ならいい練習相手になると思って。」

「おい!この娘は何を言っている?」とそばに控えるメイドに尋ねる。

「ひっ・・。あ、あの・・・。」

執事に、よいから答えなさいと目で促され話しはじめる。

「お、お嬢様が読まれた物語の中に、呪い子が出てきまして。そ、その者は全属性の魔法を防御できるのです。お嬢様は物に魔法をぶつけたことしかないので、魔法が使える生き物で試したいとここ最近仰っておられまして。」

「お母様に対人戦がしたいと言ったら、呪い子で試してみなさいと仰ったんだもん。」

侯爵は鬼の形相をしていたがジンフィーリアのことを心配していたわけではない。いや商品価値がなくなっては困ると思っているので一応体に傷がつくことは望まない。

そこで執事が「よいですか、お嬢様。魔力があるからといって魔法が使えるとは限りません。」と言った。

「え?どうして??私は使えるわ。」

「お嬢様は、習ってすぐに使えるようになられましたが、どんなに努力しても魔法が全く使えないものもいるのです。」

「まあ、では私は天才なのね!」

「「「・・・。」」」

「それと、離れの方は、呪い子ではありません。詠唱ができないので魔法も使えません。」

「あ、そっか、そうよね。」

「よいか?今後、あの者を傷つけることは許さん。今回のようなことがあったらおまえは修道院へ入れる!」

「ええ?ど、どうして?私は天才魔法使いであり、大切な侯爵家の娘でしょう?」

「下がれ!」侯爵が冷たい目で娘を見る。


放心した令嬢はメイドに抱きかかえられて退出した。



「旦那様・・。」

「あの雷魔法、まるで某家の血筋を受けているようだ。」

「髪の色といい、私の娘でない可能性が高い。害悪にしかならんあの女も頃合いをみて叩き出す!」

「御意。」



その後の魔法の授業にて教師より、呪い子など実在しないと認識の間違いを懇々と教えられたが、令嬢の頭には届いていなかった。

呪い子は討伐対象であり、それを倒すことができたら人々に英雄として認められる。私はいつか呪い子を滅して英雄になる!との考えは変わらなかった。

呪い子が覚醒したら、魔王と同じ存在となりうる。お母様の仰ることは正しい、私は、あの子を殺すわ。

赤子の時より、母親から何度も何度も刷り込まれた考えは、強固であった。



魔法は短詠唱でも発動する。長詠唱で魔法陣が構築された大規模魔法が発動する。

これがこの世界の理であった。

物語の呪い子には、理が当てはまらない。規格外なのだ。

とは言え、所詮、御伽噺の話であるはずだった。








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