表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/180

33話:父の身分



よし、休みを3日確保したぞ。


休みの初日の朝食後、キールと書斎にいた。

「キール、どうやって呼べばよいのだろう。」

「名を呼べばよいのではないですか?不思議の国のお姫様ですから。初日から来てくれたら3日一緒に過ごせますね。」


「ああ、できたら3日間一緒に・・。」

私は腕輪に触れ 、目を閉じ「ジンフィーリア、愛しい娘よ、会いたい・・・。」と宣うた。


「あっ」とキールの声が聞こえ目を開けるとジンフィーリアがいた。

今日も服を着た猫を抱いている。そして両隣にも金と銀の猫(?)がいる。


「お父様、ジンフィーリアが参りました。」

かけ寄りきつくきつく抱きしめてしまった。

涙が止まらない。


「く、苦しいにゃ〜。」

「ああ、すまない。」

んん?にゃ??


体を離すと、服を着た猫が不満顔で私を見ていた。

「初めましてにゃ。先日姫さまが紹介してくれたにゃ。改めて鞠にゃ。」

「妖精猫。」


見るのは2回目だ。昔ダンジョンで迷った時に遭遇したことがある。

気のいいやつで、私が持っていたクッキーを対価に出口まで案内してくれた。


ああ、あのクッキーはリリの手作りで・・・。

「貴族の娘にはあるまじきことですが、菓子づくりが好きなのです。」と言っていたな。

結婚後、厨房に入ることを遠慮していたが、もっと積極的にすすめてやればよかった。


ハッ、

ちょっと意識を飛ばしてしまった。


「ジンフィーリア・・・フィリア、ここに掛けて。」

「鞠も紅茶でよいかい?」

「はいにゃ、ゴウルとジルバにはワインを出してあげてほしいにゃん。」

「・・・皿に入れた方がよいね。」

「ワイングラスで大丈夫にゃん。」

「・・・そうかい?」


メイドに用意させた。

入ってきたメイドは、メンバーを見て困っていたようなので、

人差し指を口にあてて、鞠に静かにしててねとジェスチャーし、

私とキール、フィリアと鞠の前に紅茶を、ゴウルとジルバの前にワインを置くよう指示した。


メイドは私を一瞬胡乱な目で見たが、すぐに冷静に配置して退出していった。

メイドの退出を確認して視線を戻すと、フィリアの両脇の猫は居なくなり獣人の子供たちが座っていた。


は?

キールに顔を向けると口をパッカリ開けて固まっていた。


銀髪の子供はワインを飲み、『おっ、兄者なかなかうまいぜ。』と言い、

『どれ、・・・・。』金髪の子供は満足そうに目を細めていた。


「二人は姫さまの守護獣にゃ。今は人化中にゃん。」

キールが「変身するところを見ました。」と。

龍人族が龍に変化するというのは聞いたことがあるが。


メイドに、ワイングラスを2つ・・・フィリアが手を挙げたので3つ持ってこさせた。

部屋の棚からワインを出す。

ワインをあおり、気を落ち着けた。

「ほらやっぱり私の言った通り、不思議の国のお姫様じゃないですか。」とキール。

フィリアたちは大の酒好きだそうだ。



まず、フィリアに私の立場から話しはじめる。

帝国の第3皇子として生を受けたこと、皇太子と母を同じくし母が皇妃であること。

兄皇太子とは10歳以上歳が離れており、兄が3ヶ月後の譲位式で皇帝となること。

臣籍降下し、ライル・ド・カンタベル公爵と名乗っていること。

7年前に現在の妻ジョセフィーヌ(伯爵家の娘)と結婚し、現在6歳の息子ジーンがいること。



フィリアの12年間を詳らかに聞いた。

少し前、事故で無垢でなくなったことも。

そのことは全く気にしていない、寧ろ話せるようになり喜んでいる。

おかげで、貴族との結婚があり得ないこともとてもありがたい、本心だと明るい顔で言った。


父親として、忸怩たる思いだ。

可能性がないわけでもないのに、探そうともしなかったのだから。


養父(仮)のキャンデック侯爵に対しては、複雑な思いだ。

フィリアは、嫌なやつだが、盲目で声を持たない私が生きてこられたのは奴の気まぐれのお陰だからそれは感謝していると言った。

籍も入っていないので、スムーズに拠点を変えられる、有難い、と言う。



昼になったので

妻と息子を紹介しながら一緒に食事を取る。

妻子は、鞠の存在に驚くよりも喜び悶えていた。




フィリアがジーンと遊んでいるうちに妻とキールと作戦会議だ。


妻の実家は特殊だ。

裏稼業として隠密たちをたくさん抱えており、情報収集に長けている。

その事実は侯爵家以上の家格しか知り得ない。


・もちろん実子として籍に入れる。

・できればフィリアを社交界デビューさせない方向でもっていきたい。瞳の件で大騒ぎされ目立つことがわかっているからだ


・次代皇帝の第3皇子をフィリアの仮婚約者にどうかとジョゼが提案する。


側室である母親がしつこく婚約者をもつことをすすめるが本気で嫌がっており全くその気がない、だがそろそろその攻勢に負けそうになっており、嘘の婚約者になってくれる人を探している。

可愛がってくれるライルの影響を強く受け、公務に組み入れられる前に冒険者として経験してみたいと強く願っている。

当然母親が大反対していたが、婚約するなら2年限定で許す、という話まですすんでいる。


「その偽婚約者の件、採用で。さすがジョゼだ。」

「うふふ、お褒めに預かり光栄ですわ、あなた。」








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ