32話:父親発見
ライディーン帝国からゴウルが戻る。
眷属たちが期待して報告を待っている。
「ライディーン帝国の歴代の王族たちの肖像画を見た。しかし、ジンの容姿に似通った者はいなかった、と報告させてもらう。」
眷属たちは少しガッカリした。
「ただ、王宮内でジンの血肉に近しい者らを見つけた。血縁者だろう。
その中でも濃いものが居た。」
おお、眷属たちは喜ぶ。
「鞠、一緒に行ってくれる?」
「もちろんにゃ。」
ここがライディーン帝国・・・。
「帝都は人が多いにゃ。」
「帰りに奴隷商に寄ってもいい?」
「はいにゃん。」
ジンは深呼吸した。
前世では、生きている血縁者はいなかった。
「王宮潜入ミッション開始にゃ。」
「にゃん、なかなかの建築様式にゃん。」
「鞠、わかるの?」
「言ってみただけにゃん。」
「・・ふふ。」
「見つけたわ。」
「あ、ほんのり同じ匂いが混じってるにゃん。」
「性格的に似たところがあるってことね。遺伝かしら、ね?」
「どう?側にいるのは、この人の側近?味方かしら?」
「大丈夫にゃん。忠犬の匂いがするにゃん、にゃん。」
「なら姿を現わすわよ。」
驚かさないようにイキナリでなくエフェクト付きでっと。
「ん?」
「誰だ?刺客か!」と抜刀する側近。
「待って、剣をしまって。」
「リ、リリ?」
「! 瞳が金色・・・。」
「はじめまして。ジンフィーリアと申します。この娘は鞠です。」
その男性は目を大きく見開いて、手を口にあて、
「そんな・・・まさか・・・いや、わかる!私にはわかる!!」
男性は歩を進め私を抱きしめた。
「私の娘だ・・。」とさらにギュッと抱きしめた。
「は、い。」
落ち着きを取り戻した忠犬がお茶を入れてくれた。
「ここまでは、どうやって?いや、よく王宮に入り込めたね。協力者がいるのかい?」
「ふふ、今度話します。お忙しいのでしょう?」
「ああ、確かに。今日中に処理しなくてはいけないものが溜まっていて。」
「では、こちらを腕にお嵌めください。」
「これは?」
「私の作品です。時間がとれたときにお知らせくだされば、即参ります。」
「では、また。お父様。」
夜公爵邸に帰ってきた。
妻が帰宅した私の顔を見て、
何か良いことがあったのですね、あとで教えてくださいませ、約束ですよ。と言った。
昼間のことは夢だったのではと、ただの自分の願望かと思いかけるが、腕の細工物を見て安堵する。
愛しい娘からの贈り物だ。しかも娘の手作りだというではないか。
今日もうんざりしながら書類を黙々と処理していた。
すると突然目の前がキラキラと光り出した。
その中に人らしきものがぼんやり見え、徐々にくっきりとした時には光も消えていた。
目の前にいたのは、若かりし頃のリリだった。
リリと呟いた。
だが、瞳の色が違う。
何回見直しても、皇家の金の瞳。
そして娘は美しい声でジンフィーリアと名乗った。
リリがよく言っていた。
女の子が生まれたらジンフィーリアと名付けると。
だから私も言った。
では男の子が生まれたら私が名付けるよ、と。
娘を見ていると胸がじんわり温かくなり、目の前の娘との繋がりを確かに感じた。
だから、私の娘だとハッキリ言った。
娘も肯定してくれた。
そして私に腕輪を残し消えた。
消える刹那に、お父様と優しく聞こえた。
忙しくて帰してしまったが、二度と会えなかったらどうしよう。
今日は滅茶苦茶頑張った。
明日も高速処理して3日ほど休みをもぎ取ってやる。




