31話:王子一行、彷徨える森に出立
【別荘にて】
黒から話を聞いたバカ王子たちは、半信半疑であった。
だがジンフィーリアたちにますます興味が湧いたのは紛れもない事実だった。
明日、コテージへ乗り込むことにした。
【コテージにて】
翌朝。
外からノリのよい音楽が聞こえてきた。
庭か?
金から報告があったあれか!
早速見に行く。
本当だ、早い動きにも皆がぴったり合っている!
どんどん早いテンポの曲に移っていく。
皆ポカーンと見ていたが
ところどころのお色気シーンに目が動く。
「・・・くっ。」
瑠璃と楓から、お色気ビームが出る。
ジンフィーリアから、健康的な色気が漏れる。
時々エロさに目と心が奪われるが、それ以外はそれぞれが一点集中で見ていた。
好みが分かれるところだが、意外にラース票が一番多かった。
[朝食後アーフィンの部屋で]
(いやあ、よいものを見たわ。)
(あの練度であれば、ショーとして金がとれますね。)
そして一番の課題は。
「フィリアを味方に付ければ間違いなくバカ兄に勝てる」
「令嬢を落とすならまずラースですね。」
「なるほど『将を射んと欲すればまず馬を射よ』ですね。」
「だがあれの気の引き方がわからん。
それこそ、あれですよ。丸々と太ったミミズをプレゼントしては?たくさん!!」
「・・・・・。」
「なら、ミミズを捕まえるのはおまえに任せた。」
!余計なこと言った!!
誰か手伝って・・・
皆に目を逸らされた、グスン。
「となると、第一王子殿下を令嬢たちに接触させないようにしないと。
絶対に突っ走って令嬢たちを怒らせますよ。」
「「「間違いない。」」」
「では、善は急げで、午後から彷徨える森に向かって出発する。」
「シールとバカ兄に知らせろ。」
この少し前、第一王子一行がコテージ門に凸していた。
黒の言うとおり、開いているのに門を通れない。
そして、大声を出しても誰も出てこない。
一旦引きましょうと促されて王子は渋々別荘へ戻った。
調査に向けて午後から森に向かうと聞いたシールたちは、喜んだ。
この状況から一刻も早く逃れたかったからだ。
しかし第一王子は、「行かないぞ。私はここに残る。」と言い張った。
「殿下、アーフィン殿下たちが来られました。」
「勝手に行けと言え。」
「兄上、支度してください。実は母上に兄上のことも知らせてあります。」
「なに?勝手なことを。」
ここで第一王子の側近が
「殿下、調査に向かいましょう。さっさと済ませてまたここに戻ってくればよいのです。
私たちが急に横槍を入れたと王妃様の耳にまで入っているなら成果を持ち帰らないと、言い訳できません。下手したら、陛下もご存知かもしれません。」と小声で話す。
「うぬぬ、わかった。支度しろ、私たちも向かう。」
厄介者たちの姿が見えなくなるほど遠ざかり、やっとヤレヤレと肩の荷をおろすことができた。
金は、ジンフィーリアから指輪を渡された。
「指輪には弁当と装備を入れてある。弁当は食え!
危険を感じたら「装着!」と吼えろ!!
その後、指輪を指から抜き投げ捨てるように。」と言い含められアーフィンたちに同行させられた。
【侯爵邸では】
侯爵は、シールからもロイドからもその後の経過報告がないことにイライラしていた。
ただ単に、ジンが王子たちに見初められたかどうかを知りたかっただけであった。
「数人別荘へ様子見に行かせろ。とっさの判断がとれるものを!」と指示した。
「鞠、ラースに話してくれた?」
「はいにゃん。」
「ラース、どうする?私の眷属となりて悠久を共に生きる?それとも定められた生を選ぶ?」
「ゆっくりでいいから、よく考えて。愛してるわ。」とギュッと抱きしめる。
「ラースの気持ちはとっくに決まってるにゃん。」
「ラース、眷属になるとハードボイルドな人生になるわよ。」
「ヒュイっ。」
「そうね。あなたに似合ってるわね。」
「では、椿たちに会いに行きましょう。」
ラースが眷属になることを即断したのは、鞠から人語が話せるようになると聞いたからだ。
話せるようになったらまず、ジンに愛の言葉を告げよう。
両思いなのはわかりきっているけれども、ラースは、ジンにもわかる言葉を送りたかった。
そして、言葉を駆使して黒をいじめたいと思っていた。




