29話:ジンフィーリアのことを知りたい面々
【別荘にて】
第一王子たちに質問攻めにされても、シールは答えることができなかった。
単純に知らないのだから当然だ。
「私もこの状況は知らなかったのです。執事がいることすら知りませんでした。」
と言いながら父親が怒り狂う姿が見えた気がして段々と青ざめていく。
とりあえず、第1王子たちを風呂に誘導することに成功した。
そしてその足で
「ロイドと言ったな。どういうことなんだ?」と問い詰めた。
ふーと大きく息を吐いて「侯爵さまに確認せずこちらに来た、シールさまの責では?
やんごとなきお方を二人もお連れになって、私の受容力を超えています。」とロイドは返した。
「っ・・・第一王子殿下は、私が好きで連れてきたわけでは・・・。」
「とにかく、こうなってしまっては、私の知っていることはお話ししますが、それ以上は侯爵さまにお聞きください。」
シールは、先ほどの少女が父が赤子の時から隠して面倒を見ていた娘と聞き 、「もしかして、父の子か?」とひとりごちた。
【コテージにて】
[おさわりタイム第2回目]
皆アーフィンの部屋に集まっていた。
守護獣たちを触ることは拒否されたので残念に思う。
1回目さわり損ねたアーフィンたちもドラゴンと妖精猫を堪能していた。
と、テックが「殿下、双子が道中世話になったカイという者にも礼を伝えたいので場を離れることをお許しください。」と王子に近づいてコソっと言った。
「許す、というか私も行くぞ。」
「カイは今鍛錬中にゃ、あとにした方がいいにゃ。」
腰を浮かしかけた王子は、また座った。
食事の時間になったので、また皆ゾロゾロと食堂に向かった。
別のテーブルには、ここの住人たちが座っていた。
鞠も子ドラゴンたちもそちらへ行ってしまった。
テックは獣人の若者を見た。
カイも気づき目が合った。テックが小さく頭を下げる。
カイは軽く手をあげることで応えた。
食事は美味くて、皆舌鼓を打っていた。
「今日のデザートは、姫さまの手作りです。金木犀茶とどうぞ。」とラナが告げる。
デザートのケーキは新食感で、口の中でしゅわっと溶ける。
鞠が、令嬢は、一族のトップだから姫とかあるじとか皆好きに呼んでいると言っていたな。鞠も眷属(?)なのか、なんでもアリだなとアーフィンは思った。
食事が終わったタイミングで、テックが席を立ちカイの元へ。
テックの席も用意された。
テックが謝意を伝えると「お互い様だ、俺も助けられた。」と言った。
どういうことかと聞いてみると、奴隷商館で従順でないからと折檻から拷問に変わる暴力を受け、助けられなかったら間違いなく死んでいた、と。双子たちが俺の存在を知らせてくれたからこそ、今、生きていると言った。
片腕は切断され、両足は潰されていたそうだ。
「だが、腕は。」
「ああ、これは「あのね、姫さまを大人にしたお礼に腕をもらったんだって。」とミミが可愛らしく言う。
「わあー!バカ。」カイが焦る。
王子たちは耳をそばだてていた。
今、何か気になる言葉が聞こえたような・・・。大人にした?切断された腕が・・・?
「違うよ、大人になるってのは、結婚を申し込むことだよ、ね?兄ちゃん。」とマミ。
カイは、ホッとして「ああ・・「でもふられたんだって!」
「まだふられてないっつーの!てか申し込むことさえゴニョゴニョ・・・。」
「「「・・・。」」」
アーフィンたちはジンフィーリアを見た。
ラースを横抱きにして見つめている。
なんて表情だ。あんな愛しくてたまらないという目で見られたら・・・。
「あの瞳で見つめられてみたいですね、あの令嬢を射止めるのは誰なのでしょう?」
「射止める、って。結婚は親が決めるものだろう?」
「平民は恋愛結婚するそうですよ。」
「あのお嬢様なら、親のすすめる結婚なんて絶対受け入れませんよ。」と金。
「でも、ああしていると聖母さまみたいですね。」とライ。
抱かれているのは、ラース。
色々と台無しだな・・・。
【別荘にて】
第1王子たちは、入浴後食事をすることとなった。
まあ、普通の味だなと失礼なことを考えながら食べていた。
食後のお茶を飲んでいると、すっと黒が近衛の一人に近づいた。
「なんだおまえは。」
近衛にヒソヒソと伝える黒。
近衛が王子の元へ行き、小声で伝える。
「・・・部屋に戻ろう。そいつも連れてこい。
[第1王子の部屋にて]
「で?」
「コテージの情報をお売りできますが?」
「なんだと?」
「私は、あの金瞳のお嬢様の護衛です。今は任務を一時的に離れておりますが。」
「だから、話せると?」
「金次第ですが。」とニヤリと笑う。
「・・・面白い、いくらだ?」
黒は側近に小声で伝える。
王子は側近から情報料を聞き、「いいだろう、おい。」と近衛の中にいるものに指示した。
黒は金を受け取った。
「さあ、話せ。」