20話:鬼人族の王
皆のところに戻った。
私の顔を見るなり、皆に大笑いされた。
椿まで笑ってやがる。
なんで??
どうやら一部始終を瑠璃が共有ライブ映像でお届けしていたらしい。
最初皆、蒼褪めて視ていたらしい。[老婆シーン]
出産シーンを男たちも見てしまい、ひえっとなったが私の様子に途中から笑い出して大変楽しく視聴していたと。
私の心の声もダダ漏れで配信されていた、と。
「あははは、姫様。あれ誰キャラの真似??あははは。」
「普段は冷静なのに、姫様も焦ることあるんだね。」
「生まれたての赤子が話すわけないじゃん。」
「あっはっはっは!」
「モウも相変わらずいい味出してるよね。」
「ギャハハハ。」
「お腹痛い。」
「椿様が今回の映像を記録玉にコピーしてたよ。しばらく娯楽に困らないね。ははは。」
(椿、何してくれてんの。)
気を取り直して
「でも、すごいよね、頭脳は大人!体は赤子!!」と言うと
皆がまた、ドっと笑う。
場が落ち着いたところで、百合が
「けど、マジな話、何者っすか〜?鬼人族の3本角って初めて見たっす。」と言った。
「記憶持ちの転生者だな。」(姫様、口調。 注 : 藍心の声)
「魔力量は底が知れなかったですね。」と瑠璃。
「伝説の鬼人族の王ではないか?」
「鬼人国の建国、現実味を帯びてきましたね。」と楓。
「彼とは密に話したいと思う。」
(瑠璃、ライブ配信あ・り・が・と・う。ところで、なぜ昨日共有した時、藍のことに触れてなかったの?)
(忘れてて、てへぺロ♡)
(誰だよ!)
(姫様、口調!!! )
(藍は念話盗聴しないで!気をつけるから。)
『共有』は面倒くさがりは全部送る(自分はこれ)。必要なものだけ送る者も取捨選択は本人判断だ。
送られた情報の取捨選択もそれぞれの判断による。
また、私は、眷属以外とも記憶のやりとりができる。相手の了承があればだが。
私は問題ないが、受け取る私の情報量は、その相手次第だ。
自分の趣味は、料理だけではなかった。
歌うことが好きだった。
誰かに聞かせるものではなく、自分が気持ちよく歌うのが好きだった。
楽器演奏も好きだ。
踊ることも好き。
記憶は全て戻ったはず。でも何か大切なことを忘れている気がする。
うーん、大事ことならそのうち思い出すだろう。
歌うのが怖い。
もし、以前のような声量でなかったら?
声域が狭まり大好きな歌が歌えなくなっていたら?
鬼人族の赤子に直接呼ばれた。
「ジンフィーリア参上!」カッコよくポーズを決めたのに笑われた。
「早速だけれど、嫌でなければ記憶を共有しない?赤子の脳ではキツイかな?」
「問題ない。どうすればいい?」
「こうすればいい。」そう言って互いの額をくっつけた。
「なるほど、建国か。」
「そう。前世も王だったのね。今世も王の器で転生するなんて・・・。」
「自分で願ったように転生する方が、色々と理を無視しているぞ。」
「そうかもね、でも対価を払っての希望転生可が私の能力だったから。」
「空間にこんな生存圏を作るのも凄いな。」
「ーーーーー。」
「どうした?」
「何か忘れていることがあると思って、、、あ!対価の内容を忘れている。」
「前世で払ったものなら、今世は関係ないだろ。」
「それが・・。その、自分の希望に対価(命)が見合わない場合、対価のグレードを上げたり、数を増やすのだけれど・・。それでも足りない場合は、今世に持ち越してる場合もあるの。思い出せない。ああ、イラつく!!」
「落ち着け。」
「ふうー、うん。」
「話変わるけど、あなたの成長速度が早いのは今のあなたの能力?」
「違うな。」
「なら、希凰桃の影響ね。」
「前世のあなたの生は凄まじいわね。それに比べて私は、小さな小さな箱庭の中で起こったことで・・・。」
「それがお前にとても大切なことだったんだろう?いいじゃないか。重要なのはこれからのことだ。
おまえも今世は、幸せになれよ。」
「なろうと思ってなれるものではないけど、そう、そうね。」
「あ、私、さっきも名乗ったけれどジンフィーリアっていうの。あなたの名前は?ご両親が考え中?」
「ジンが決めてくれ。」
「え、ご両親は?」
「ジンに名付けてもらいたいと言っている。命の恩人でもあるしな。」
「昨日から名前をつけてばっかり(笑)。あなたの瞳も金色ね、うーん、金太郎?」
「却下。」
「赤い髪に金の・・・炎雷えんらいは?」
「それで、いい。」
「転生仲間がいて、嬉しいわ。頼りにしてる。心の友、ね。」
「ああ、俺も嬉しいよ。前世も含めてはじめての友だ。」
「統べる者は孤独だもの。仕方ないわよ。でも友や愛する人ができるといいわね。」
「そうだ、な。」
「それにしてもモウには驚いた。あれはどういう種族だ?」
「モウもメエも最初からこの空間にいた先住民よ。」
「鞠と同じ種族ではないかしら?」
(今日は結構流暢にお嬢言葉で話せてる。私はやればできる子!)
「ふむ。」
「あ、あなたのいた世界にラースのようなものは居た?」
「記憶にないな。」
「そっか。まあいいんだけれど。外見で判断されるのがちょっと、ね。この世界の人と私たち美醜感覚がズレてるようなのよ。」
(私たち?いや、それは・・・。まあ、言わないでおこう。)(注 : 元魔王心の声)
「炎雷王よりも炎雷帝の方が響きが良いわね。私の裏称号は『魔導大帝』よ。」
「なぜ裏?」
「その方がカッコいいから♪」
「炎雷坊やは、そろそろおっぱいの時間では?」
「そう、だな。」
「ちゃんと飲んでもらわないと、おっぱいが張って辛いんですって。石のようにカチカチになるらしいわ。」
「! そ、そうなのか。」
「私は現実世界で拠点づくりをするわ。これからが楽しみ。」
「炎雷にこれあげるわ。あなたの能力がわかったらそれに合わせて微調整するわ。名前をつけてあげて。」
ジンが我に渡した大人サイズの金のバングルは、金のつや消し・透かし細工が施してあり、紅い宝石が埋め込まれているものだった。
装飾品に名付け、とは。変な女だ。
では、おまえの名は琥珀だ。
その途端、金色の光を放ち、収束した時には我の腕にはまっていた。
サイズ変更できる、これは、魔導具、か。ジンオリジナルの。




