19話:鬼人族の出産
鬼人族の集落に到着した。
いっちゃん活気があるやん。
老若男女いることが新鮮!
昨日の美青年が族長だ。
まずは、龍族に話したことと同じ内容を話す。
次に、外の世界での鬼人族の立ち位置がわからないこと、鬼人族自体がが存在しているのかも不明なので要調査ということで話を終える。
一族の元に帰る。
皆とピザを焼いて食べる。
椿も部屋から出てきた、よいことだ。
と、ここでリナに渡した指輪から反応があった。
顔見知りの楓に行ってもらった。
ピザがピザがとうるさかったので、バングルに入れておく。
しばらくして、楓が戻った。
リナからの話。
一人の男が私たちのことを根掘り葉掘り聞いてきた。
その後、二人組の男たちが同じように私たちのことを尋ね、家を知っているかとも聞かれたそうだ。
知っていることを話し、家は知らないと本当のことを言った。そのうちの一人は、ねっとりとした視線でリナを見てきて非常にキモかったそうだ。
「二人組の男たちは、奴隷商の手のものでしょうか。」
「そうだね、他に心当たりがないし。」
「王子の手のものが『ねっとり』はないでしょうし、ね。」
「そうであってほしい。」
龍族を父に持つ少年が近づいてきて
「姫様、その姿の時は、女らしく話す方がいい。」と話しかけてきた。
「そうかしら?」
「そんな感じ。ただの俺の希望だけれどね。」とウィンクしてきた。
うちの一族も皆美形だ。
「あれ?なぜ名前がないの?」
「母が主人様が戻ったら付けていただくからと。」
「瑠璃からは、何も聞いていないけれど?」
「忘れているんだと思います。」
「・・・。今まで不便だったでしょ?」
「いえ、特には。」
「・・・。綺麗な藍の瞳だね。君の名は藍。」
頰にキスをし、抱きしめた。
「っ・・。種族的に耐性のある僕でもクラっときました。」
「決めました!俺、もうすぐ成人なんです。初めての相手は姫様がよいです。」
「!!!」
コクリと頷くのが精一杯だった。
成人の初相手は、求められたら断れないとルールを決めたのは私だ。
どうしよう、女としての経験が全然足りない。
私が失敗したら藍のトラウマになるかもしれない。
女がダメになるかも。貴重な一族の男なのに。
「あ、僕、処女バージョンがいいです。姫様の初めて、上書きします。」
(はい?また痛い思いすんの? (泣))
鬼人族の男は、精悍な整った顔立ちのものが多い。メスに求められるような、強い男!って感じ。
女は、エルフの鬼人版といったところか。
今の世界のエルフの容姿がわからないが。
鬼人族のツノからは清涼さを感じる。邪気を払えそうだ。
そろそろ戻るか、現実世界へ。
言葉遣いもお嬢様らしくするように頑張ろう。今から。
と、鬼人族長から念話が入る。
助けてほしいと切羽詰まった声。なんかテンパってる、周りもザワついている。
即転移する。
藍の母(瑠璃)が「名付けありがとうございました。お伴します。」と付いてくる。
「どうしたの?」(さっそく切り替えてる自分、流石だ。なんか気持ち悪いけれど。)
「妻のお産が始まったのですが。見ていただいた方が早い、どうぞ入ってください。」
(え、お産の現場に?ひー、ハードル高っ。)
族長に、引きずられるようにして産室に入った。
(は?婆さんの妊婦?)
「お産が始まって、先程から急激に老化していって、、。」
(これは、生命力を吸い取られている?・・お腹の子に?このままでは老衰死する。お腹の子もどうなることか。)
「族長!!これを奥方に口移しで食べさせて!疾く!!」
「は、はい。」
「少し口で咀嚼して、ゆっくり少しずつ、早く!早く!!」(自分でも何言ってるのかわからない。)
「「「「「おおおっ」」」」」妊婦はあっという間にピッチピチの状態になる。
これぞ急速若返り!!
そして、
一気に子も産まれた!ぎゃあ、目の前で出てくるとこ見てもうた。
血塗れ・・・。なんか色々ついてるし( ̄∇ ̄;)
早く、産湯!
あれ?産声は?
・・は?生まれたての赤子と目が合った。
「助かった、礼を言う。」
「!!!」落ち着け、落ち着け私。
「・・知らなかった、鬼人族の赤子って生まれたてから話せるんだ。ビックリして恥ずかしい。」
ついでに洗浄魔法、えぃ!
産室の鬼人族たちはみんな首をブンブンと横に振っていた。
後産があるからと族長と私たちは追い出されるように産室を出た。
なぜか私が赤子を抱いている。
「お腹すいてないの?」
「当然空腹だ。」
「なら、少しお母様を休ませてあげるってことでメエかモウに頼もう。
どっちがいい?」
「どう違う?」
「メエの方がコクがあるわね。」「モウは、ほんのり甘みのあるあっさりした味。」
「生まれたてだからアッサリで。」
「OK。」
(モウ、わけてほしい。)
(只今、参ります。)
で、現れたのは2足歩行の乳牛。
赤子、呆然。
「モウ、ありがとう。ご無沙汰!白と黒の模様が変わらず愛らしい。」
「いやーん、もう。主人様ったら♡」
「あ、その子ね。さあ、いらっしゃい。」
「・・・。ええい、ままよ、パク。んくんくんく・・・・・。」
「そう、ママよ、可愛いったらもう♪」
「ぷっはあゲフウ、美味かった。感謝する。」
「まあ、最近の赤ちゃんはしっかりご挨拶できるのね。では、また呼んでね。」
(うわあ、おっさんくさい赤子〜)
(・・色々突っ込みどころ満載なのですが、まあいいでしょう。)(注 :瑠璃 心の声)
「姫様、改めて、本当にありがとうございました。おかげさまで息子も妻も失わずにすみました。
いただいたあれは、凰桃に似ていましたが。」
「奥方に召し上がっていただいたのは、希凰桃ですよ。」と瑠璃。
「え、希・・100年に1つしか取れないという?」
瑠璃と頷く。
「あああ。そんな貴重なものを。ありがとうございます、ありがとうございます。」と言いながら地面に頭を付けようとする。
それを止めて立たせる。
「族長がそんなことしないで。感謝は十分伝わりましたから。それに息子さん本人からお礼もいただきました。初めて喋った言葉がパパママでなく『助かった』ですよ。」
ブハっと瑠璃が吹く。
「授乳中の奥方には、ふだんの1.5倍量の食事を朝昼晩。朝食と昼食の間と15時頃甘いおやつと温かい飲み物を出してあげてください。」と瑠璃。
「甘いものはご褒美ですか?」
「ふふふ。その意味もあるでしょうがお乳の出がよくなりますから。」
「あ、勿論、初乳は余すところなく坊やに飲ませてあげてくださいね。希凰桃の成分もたっぷりですしね。」
(お、さすが経験者。)
「は、はい。」
「坊や、眠ってしまいましたね。」
「奥方様のところにお子を連れて行ってあげてください。」
族長は子を抱きながら深く頭を下げ、急ぎ足で向かっていった。




