17話:帰還
ゲートをくぐると、懐かしい我が家が見えた。
近しい眷属が勢揃いしていた。
ふと鬼人族の青年に目を止める。
「お懐かしい。お帰りをお待ちしておりました。」
「ああ、久しぶりだ。明日、そっちに行くよ。」
「わかりました、お待ちしております。」
鬼人族の青年は帰っていった。
「さて、皆、永の留守、すまなかった。また会えて嬉しいよ。」
オーガンジーの十二単のようなものを纏った黒髪の美しい娘が立ち上がり、
「我が君、お帰りなさいませ。」と言い、美しい笑顔で微笑んだ。
「椿、管理人の大役を押し付けてすまなかった。でも期待以上に運営してくれたんだね。ありがとう。」
そう言い、椿を抱きしめた。
夜、(椿の)部屋へ行くよ、色々と話そう、とこっそり念話する。
はい、お待ちしておりますと控えめな念話が帰ってきた。
「いつも通りでいいですか?」
「もちろん。」(いつも通り・・、帰ってきたと実感できる。)
大露天風呂に、皆で入る。恒例のことで、混浴だ。
「「「ゴウル様、ジルバ様、相変わらずの麗しいお姿に目が潰れそうですわ。」」
「「「眼福、眼福。」」」
「二人ともその姿では、久しぶり。」
ゴウルは金の獣人の美青年、ジルバは銀の獣人の美丈夫に戻っている。
この空間に入ると、強制的に人型となる。例外はあるが。
「では、皆、先に記憶共有をしよう。」
(椿も入ってくれ。)
(申し訳ございません。わたくしは、あとでお願い致します。)
(わかった。)
[記憶共有中]
「なるほど、それで身体中にキスマークの嵐なわけですね。クスッ。」
「あるじ様、キャラ変わっていましたね、初・体・験」
「やめてくれ、黒歴史になるかも。あ、自動修復にしておこう。」
私は、はシミひとつない体になった。
私の体を調べた上で眷属の1人が言う。
「常に発動中にするのは強い相手との戦闘中だけにするのがよいかと。
でないと、毎回無垢な乙女に戻りますよ。あなた様限定で、ですが。」
「あの痛みを、また・・・。」私は青ざめた。
「あちしなんて、刺されても即治って、化け物でも見るような顔されましたぁ。」
皆で笑う。
「ところで、椿は皆と風呂に入らないのか?」
「はい・・。」
「あの・・、椿様はそろそろ体力的に限界か、と。」
「なぜ?私たちは、不老で長生きだ。」
完全覚醒した今、私の体もそうなったはずだ。
自然に死が訪れる時も、若いままのはずだ。
「その、定期的に精を受けることをされず・・。本当に危ない時だけしか・・・。」
「100年の間、ずっとか?」
「は、い。」
「椿は死にたいのか?・・私が管理人を任せたから死にたくても死ぬわけにはいかなくて・・・。」
「い、いいえ、それは違うと思います。」
「あるじさま〜、相変わらず鈍いのですね。」
「ん?」
「椿様は、あなた様以外の精を受けたくなかったのですよ。」と色気だだ漏れの美青年、菫が発言した。
「・・・・・。」
「つまりですね、「流石にわかった、ありがとう。」
(だが、ということは私が管理人の鍵を受けとれば、、、。あとで話し合おう。)
「一族に男が3人いるな。100年の間に生まれた10人中3人が男か。100年前は私が唯一の男だったが。」
「どうして我が一族には男が生まれにくいのだ?」
その時、ドボーンと誰かが温泉に飛び込んできた。
「鞠、会いたかった。相変わらず愛らしい。抱き上げてスリスリする。」
「ジャス「今の名はジンフィーリアと言う。」
「失礼しましたにゃ。姫様と呼ぶにゃ。」
「あ〜鞠!これからはずっとそばに居てくれ。なんて可愛いんだ。」
「はい、御心のままににゃ。おそばから離れないにゃ。」
皆、羨ましそうに鞠と主人を見る。
鞠は二足歩行の可愛すぎる猫だ。
それまで静かにしていた楓が「こほん、姫さま。此度私は役に立ちましたね?」
「勿論だ、楓のおかげで早く皆に会うことができた。」
「で、では、ご褒美が欲しいのですが。」
「当然、考えていた。何か欲しいものがあるか?楓だけの楓のための魔導具はどうだ?」
「そ、それは次の機会にいただきたいです。」
楓が私のそばに来て耳元で「男になった姫さまに抱いてほしいのです。」と言った。
「だが、私たちは性別を変えられんだろ?」
「今の姫さまなら可能かと。だって、できないことはほぼないのでしょう?」とモジモジしながら言う。
できないことはあるあるだ。だが、どうだろう、確かにやれそうな気がする。
光に包まれた後、男に変身できた。うん、ちゃんと付いている。
皆、驚いた後、悩ましげな色っぽい周波を送ってくる。
何度も変身してみる。
男→男→女→女→元に戻る。
性別が変わる時、光に包まれる。
変身できるわ!たまげた。
「楓、そのうちにな。」
「! 約束ですよ。」
他の者たちの目がギラリと光る。




