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174話:眠るジンフィーリアの傍らで


<クロウとローガン>



「ローもジャスティンを愛してただろ?」

「・・うん。」


「毎日、猫の俺に愛してると言ってくれたけれど、ジャスティンと同じ人間であるジェイに焼きもちを焼いていた。・・態度が悪くてすまなかった。」


「クスッ、・・俺も同じだよ。」


「え?・・猫の俺に?」


「うん、嫉妬してたよ。ジャスティンがクロウを心から愛してたのは間違いない。クロウを助けるために自分の命を差し出そうとしたんだから。」


「それは、死にかけてるのがジェイであっても同じだった。」

「そうかな。」


「フッ、ジェイだってわかってるくせに。」

「・・・(クロウ、ありがとう。)。」



「それにしても、ジャスティン、、、が王様とは。」

「人のことは言えないだろ。」


「だが、俺は王から落ちて、しかも因縁の相手の囚人となっていたけれどな。」

「それで、接点ができたようなものだから良しとしよう。亜空間内では、俺もクロウを探せなかった。」


「俺もそうだった。はあー。だから焦燥感が募って外界に出たかった。」


「・・すぐに会えなかったのは、俺のせいかもしれない。」

「え?」


「俺が、即、クロウの後を追うつもりだったジャスティンを引き止めたんだ。だから、ズレが生じたのかも。」


「それで、よかったよ。俺は、寿命を全うしてほしかったから。」


「いや、すまない。寿命を全うしたのは、俺だけだ。俺が死んで、すぐにジャスティンは行動を起こした。」


(まるで、ジェイが死ぬのを待っていたかのように聞こえる。)


「俺の残り僅かな寿命を引き合いに出して、二人っきりの時間が欲しくて強請ったんだ。」

「俺がジェイでもそうしてたよ。好きな相手を独り占めしたく思うのは当然だろ?」


「クロウ・・それで、3年も!待たせてしまったんだ。」

「愛の力で寿命が延びたんだな。」


「そうなのかな・・・。」




「今は、夫が数人いるんだろ。」

「うん。俺を入れて7人いる。」


「は?・・思いの外多いな。」

「・・かな。」


「ローもちゃっかり・・。」


「うん、自分に正直に生きることにしたんだ。リアと会う直前、精神的にも金銭的にも辛かった。もう心が折れそうでね。」


「そう、か。」


「リアと同じ時を生きたくて、人間であることをやめた。クロウは魔王として生まれたから寿命は長いだろ。」


「たぶんな。・・それにしても、ジャスティンの周りに規格外のものたちが集まり過ぎじゃないか?」


「ああ、それは、リアの人徳じゃないかな。ほぼ、前世繋がりだよ。」

「・・俺が死んでからの?」


「うん。」

「そっか。なら、ローの功績じゃないか?」


「よせよ。すごいのは、それを得たリアだ。」


「ローがその時間を作ったんだ。力も人脈も。それがあったから、俺は助けてもらえ、今生であいつが完膚なきまでに叩きのめされたことを確認できた。そうじゃなかったら、超パワーアップしたあいつにまた負けて、悔しい思いのまま世を去ったはず。負の連鎖がいつまで続いたことか。」


「・・・。」

(4人があの場にいたのは、必然だったんだろう。)



「俺は、至極スッキリした。」

「戦闘に参加していないけれど、俺も同じ気持ちだ。」


「何を言う。同じ舞台に揃い、俺を見つけてくれたじゃないか。ジャスティンも俺自身もわからなかったのに。嬉しいよ。事情が飲み込めた今は、あの時のこと、心から感謝してる。」


うるっ「クロウ・・。」


「俺たち3人は曲がりなりにも家族だったわけで、今はその家族が増えただけ。俺もその中に入っていいよな?」にかっ


「当然だろ。」



コンコン


「お話中かとは思いましたが、食事しながら続きを話されてはいかがですか。」


「瑠璃、ありがとう。」

「そういえば、腹が空いた。」




「どうだい?」

「どれも美味い。この世界に生まれて、はじめて満足のいくものを食った気がする。」


「そうか。リアの料理の腕はとことん上がってるからね。」


「・・前世もこう、心が温かくなものを食べさせてくれたな。ジェイのレシピは豊富だったし。

ジェイの故郷は、皆、舌が肥えてたんだな。」


「調理方法によるのだと思う。・・ところで、精神の負担は、本当にないのか?」


「うん?・・ああ、眠っていた間のことか。」


「戻ってきた前世の記憶が、一番新たな経験のように鮮明に感じると聞いたから。」


「ああ、確かに。それでか・・・。」

「クロウ?」



「そこに眠るジンフィーリアのおかげで、何度も助けられた。最期の最悪な記憶からも。」


(弱く抵抗すら出来ない俺だったが、酷い苦痛を与え続けられたにも関わらず我慢することができた。あの魔女がジャスティンの前で死ぬようにしてやる、と言ったから。あの女の心のうちは、わからなかったが、死ぬ前に一目、彼に会えると思えば、地獄の責め苦にも耐えられた。)



「リアの想いが通じてよかったよ。」

「ああ、俺を思う気持ちをビシバシ感じた。」


「羨ましいね。」


「・・うまく言えないけれど、ジンフィーリアはローと俺に優劣をつけていない。」

そう言って、クロウは胸に手を当てた。


「・・そうか。」



(そして、今の俺は、ローや他の夫たちに対する嫉妬心もない。そう思えるほど、あの精神世界で癒やされ尽くした。ジンフィーリアが大切に思うものは俺にとっても同じく肝要な存在だ。)





ジンフィーリアは、目覚めると、慌ててクロウの姿を探した。

同じ空間にローガンといるのを見て、夢でなかったのだと、心より安堵した。



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