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168話:眠るクロウの傍らで


すぐに昼の時間になった。


短い映像だった。

ベスティア女王たちによって、あっという間に悪魔たちが消滅させられのであった。



「女王が女神を召喚したのか?」

「ドラゴンたちが光魔法を?あり得ない。」

「ドラゴンはともかく、女王筆頭に、彼らは我らと同じ人なのか?」



初めて悪魔を見た、と口から出たものがほとんどだった。

が、その感想は、続く圧倒的な力によって「女王様たちすげえ!」に上書きされた。




デーロンが死ぬ映像は、手が加えられ編集されていた。


血まみれの肉の塊のようなデーロンではなく、明らかにピンピンしている姿の憎たらしい笑みを携えたデーロンが映し出された。

それを、クロウが一瞬でダイスのように細切れにし、炎ですべて焼き尽くし滅した。



「あれが、魔王・・。」

「悪魔より怖くない。」


「魔王を滅ぼしたあの獣人は誰だろう?」

「あのヒーローも女王様の旦那さま?」




クロウが元魔王だとは誰も考えもしていない。

これで、余計な茶々が入ることはない。




[トランド国]


「あのようなブツ切映像ではなく、余すことなく闘いを見たかった。」

「そうよね。レイの活躍シーンをもっと見たかったわ。」


(え?いや、あの映像はまんまなのだが。)

(瞬殺過ぎて、物足りないんだな。)



蓋を開けてみれば、悪魔も大したことなかったと言うか、仲間たちの力がぶっ飛んでいただけと言うか・・・。



「アーロンとエイベルにも驚いたぞ。人間やめてないか?」

「「殿下、大袈裟です。」」


「いや、本心で言ってる。」


「俺たちの力と言うよりは、レイモンド様からいただいたポーションのおかげです。誰ひとり死なずに済んだのですから。」


「そうです。戦争で死人が出ないなんてあり得ない快挙です!」


「ふむ、確かにありがたいものだった。」


「ポーション頼みだっただけではなく、おまえたちも忙しく人助けしていただろ。殺されそうになってる騎士をかばったり、防御壁内に投げたり、と。」


「まあ、360度、感覚を研ぎ澄ませてはおりましたが。」

「普通の人間なら、脳が疲れ果て、10年は老け込むレベルだ。」


「またまたあ。」

「冗談ではないぞ。そういうわけで、父上、しっかり報いてやってください。」


「もちろんだ。」





[ベスティア王宮]


「クロウはまだ目を覚まさないのか。」

「そのようだな。」


「3人の事情は、理解した。」

「ああ、さすがに、今は踏み込めないな。」


「当人たちの手によって元凶は完膚なまでに叩きのめした。あとは、クロウが記憶を取り戻せば、ジンも心の底から笑えるようになるだろう。」


「そうだな。時折ふっと見せる暗い瞳ともおさらばできるはずだ。」





<クロウ>


眠るクロウの傍には、ジンフィーリアとローガンがいた。


「クロウ・・。」


ギリッ「あいつ、俺の!ジャスティンの能力を知っていた。だから、何らかの嫌がらせをクロウにしたに決まっている。殺しただけじゃ飽き足りなく、来世の邪魔までしたんだ。」


(久しぶりに、前世に引っ張られてる。)


「ここまで執着するほど、ジャスティンのことを愛してたのなら、その想いを違う方向に使ってほしかったよ。」


「拒絶したから、意固地になって、俺をどこまでも憎んだんだろうよ。とことん俺を苦しめるために。来世にまで持ち越した呪いだ。」


「呆れるほどに執念深い。」


「対象は、クロウでもジェイでもどちらでもよかったんだ。」


「いや、きっと、老い先短い俺よりも若いクロウを標的にしたんだろうさ。」


「あいつに前世の記憶がなかったのが、ムカつく。」

「だね。ちょっとざまあ度が下がったかな。」


「やっと3人が揃った。ここから本当の今生が始められる。クロウさえ目覚めれば。」

「記憶が戻ってると嬉しいけれど。」


「俺たちのことを覚えてなくとも、ジェイがわかってくれてるからいいんだ。共有できる相手がいるのが救いだ。」


「うん。やっと終われる。そして、転生の醍醐味を味わえる。」


「これからが本番だ。」

「本番って・・。」


「魔王に転生してるんだものな。数奇な運命だ。」


「リアが光でクロウが闇。俺はその中間かな。」

「ふふっ、3人で一つだ。」


「うーん、本当に起きないな。記憶にトラップなんか仕込んでないよね。」


「前世の記憶持ちだったらあり得たかもしれない。俺たちがまた出会うことを想定していただろうし。

なんかまた腹が立ってきた。あのクズ野郎!!」


「異世界からも干渉してくるなんて、とんだチートだよ。あれ、でもさ、やつがこの世界に来なかった

ら、クロウは・・。」


「いや、クロウは、自分の能力を鑑みて、俺らも何かしら力を得ていると考えたかもしれない。」

「うーん、希望的観測?」


「でも、ある時を境に、自分が探すしかないと思ったんじゃないかな。巡り合えていない現実に、俺らがクロウを見つけられない状況にあると判断するに至ったと思う。」


「じゃあ、魔王を譲る相手を模索してた?」

「だろうな。そうしないと外に出られないから。」


「リアはさ、クロウの魂を見つけられない代わりに彼の幸せを望んだはずだ。」

「うん。」


「「でも、幸せでなかった。」」


「クロウの望みは、ジャスティンと生きることだったから。前世では強制的に引き離され終わらされたから、今度こそは、共に永く過ごしたいと願ったと思う。そして、それは俺たち共通の願いであって。」


「ああ、そうか、クズにはそれがわかってたんだ。」


「うん、それしかないと思っただろうね。」


「あいつの心情としては、クロウを虐め苦しめている事実を、俺に見せたい、わからせたいと思ったに違いない。」


「来世で邂逅する気だったと?」


「実際のところ、そうだったんだろう。幾重にも轍を踏んで、一同介するように持っていったんだ。今となってはその方法まではわからないが。」


「ある意味、天才じゃないか。」

「むうっ・・。」


「天才と気狂いは紙一重か。・・もし、ジャスティンに命諸々を対価にするあの能力がなかったら、どういう方法を使った?」


「それはもう、贄を捧げて悪魔と契約、の一択かな。」


「神の召喚より悪魔召喚のほうが現実的か。」

「ま、そうね。昔からその手の方法はあったし、書物も多く出回っていた。」



「俺だったら、どうせ願うなら、『来世は好きな相手と結ばれますように。』だな。」


「あの魔女がそう願ってたら、それはそれで嫌だ。」


「うん、まあ、そうか。」


(今の多夫状態なら、一人くらい割り込みありかな、と思ったんだが。平和的解決になったかな~と。

リアが嫌なら、なしだな。俺はともかくとしても、クロウも嫌悪するだろう。あれが、二人に浴びせた言葉がよろしくなかった。)


「悪魔に願う時点で、本人も碌なことにならない。」


「悪魔にとっては、人の不幸が蜜の味か。」


「そう。捧げ物をした契約者にも、最期には絶望を与え、愉悦に耽るのが悪魔だ。

目的が叶ったのだから、自身の不幸も悪魔への支払うべき対価なのさ。」


「つまり、二重取り?」

「そういうことになる。・・誰だ!!」


「リア?」




しゅううっ・・・


影鏡で覗いているのを気づかれた。


・・俺様が震えている?


まずい、まずい、あの女は俺様を見つけるかもしれない。



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