162話:元幹部たちを救出、そして・・・
ローガンの力により、15人全員が順に、人フィーリアたちがいる結界内に転移させられた。
驚く元幹部たちに、ざっと状況を説明した。
「・・なるほど。」
「助けてくださりありがとうございます。」
「あの!助けていただいた上にお願いするのは心苦しいのですが「前魔王のことね。」
「「「「「はい!」」」」
「気配が感じられないけれど、生きているのね。」
「そのはずです。というのも我らにもどこに囚われているのか皆目見当がつかず・・。」
「なぜ、生かされているのかわかる?」
「継承能力に関係しているのだと思います。」
詳しいことは、幹部たちにもわからないという。
共闘すると申し出られたが、ジンフィーリアは丁重に断った。
「疲労困憊でしょう?休んだほうがよいわ。家族も心配してるから、送るわ。」
「え、待っ」
元幹部たちは転移させられた。
「さて、と。前魔王の身柄を確保しないと始められないわね。あ、そう言えば、名前を聞くのを忘れてた。」
(アスタ、聞こえて?)
(え、ジンフィーリア様ですか。)
(そうよ。)
(早速、幹部連中を救出してくださり感謝いたします。やることすべてお早い。)
(せっかちな性格だからね。)
(ローガン様にもよろしくお伝えください。)
(わかったわ。)
「ロー、アスタたちが、御礼を言ってるわ。」
「うん。」
(伝えたわ。ところで、前魔王の名前を知りたいのだけれど。)
(クロウ様です。)
(え?)
(聞こえませんでしたか。クロウ・アーベスト様です。)
「クロウ?魔王の名が?」
「!」
(ジンフィーリア様?もしもし?)
ジンフィーリアとローガンはしばし見つめ合った。
二人ともひどく動揺していた。
(ジンのこんな様子は初めて見た。)
(偶然だと思うけれど、あの名前を聞いただけでここまで・・。)
『『・・・。』』
ドクン・・
(ロー、なんだか・・。)
(わかるよ。転生して、同じ名なわけないのに、俺たちは・・。)
「そうよ、ね。本人のわけがない。」
(でも、なぜか胸がざわつく。)
「主様、法王国が2日後に、勇者投入を決めました。」
「あ、そう。」
「法皇の腰巾着共が何人か命を落としたようです。」
「・・そう。」
「ジン、そのクロウだっけ、召喚したら断られたんだよね。」
「え、ええ。」
「もう一度、召喚してみたら?今度は、この状況をわかってもらうために説明したら?あ、そうだ、書いて送ったらどうかな、彼のもとに。そして、召喚に応じられないわけも聞いてみたら。」
「・・なるほど。アラタの言う通りやってみる。」
<クロウ・アーベスト>
なんだ・・?
また、召喚陣が目の前に。
出て行くわけにはいかないのだ、俺は。
懲りないな。
一体どこの誰が・・?
なぜだか、知っているような懐かしさを感じる。
ああ、そうか、前回と同じ者からの召喚だからか。
魔力のにおいが同一だ。
クロウは、拒絶しようとしたが、陣の中に見つけたものに動きを止めた。
しばし悩んだが、自身が同意しなければ何も起こるまい。
手を触れても問題ないはずでは?と考えた。
ここに囚われてどのくらい経ったのか。時間の感覚がない。
ここにいるのも飽きてきた。
変化を求めている自分がいた。
だからだろう、罠でも構わないと手を伸ばした。
驚いた。
現在の様子が知れた。
救出された幹部たち15名の名が書かれている。
安全な土地で、民を預かっている、とも。
真実かはわからない。
だが、俺にこのような情報を与える敵などいるだろうか?
デーロンは、俺が根負けするまでここに閉じ込めておく気だ。
幹部や民が俺の救出を望んでいる。
こんな情けない俺のために・・。
魔王討伐のために異世界から召喚された勇者がデーロンを倒すためにやってくるから、もはや時間がない。
俺を助けてからでないと、戦えない?
本気か?
現在、魔界にいる、と?
まさか、召喚という方法で俺をここから出す気でいるとはな。
俺には思いつかない、すごいな。
召喚に応じられない理由を教えろと、俺に紙とペンまで寄越したのか。
アーロンが死ねば俺も死ぬ。
そして魔界も消滅する。
魔王に継承される固有能力も、俺の代で途切れてしまう。
俺が、ここでできることは何もない。
自害するわけにもいかない。
デーロンもそれをわかっている。
・・よいだろう。乗ってやろうじゃないか。
「召喚拒絶とともに返事が来た!アラタ、すごいわ。」
「それより、なんて書いてあるのさ?」
「えーっと、魔王の能力である亜空間から、魔王自身が出ると、その空間は押しつぶされ消滅する。
囚われている場所は、デーロンの体の中。」
ジンフィーリアは、自分で言った言葉を反芻した。
「・・ということは、ここに呼んでも問題ないってことよね。」
「そうでなかったら、俺たちもすり潰されるな。」
「消滅の瞬間に抑制力が働いたら私たちは逃げられない、そういうことよね。」
「リア、魔界に召喚するだけだから、以前の彼の日常なわけだろ?」
「そう、だよね。もう一度、クロウ本人の魔界への召喚だと強調して、応じてもらおう。」
「だな。クロウが無事なら、すぐに悪魔討伐を始められる。」
リアン・イアンと蒼・紫蘭、レイモンドも魔界へやってきた。
「OK。皆、覚悟は良い?」
全員が了承した。




