161話:折り合いをつけた者、見つけられない者
イアンたちを追い出したドラゴンたちは、魔族たちに苦戦していた。
ドラゴンブレスでその他大勢を吹き飛ばすことは余裕だったが、10体ほど強固な個体がいるのだ。
攻撃は効いているようだが、倒すまでには至らない。
雌たちは、卵を温め守っており、その場を動けない。
魔族たちはどんどん陣地に迫ってきている。
『仕方ないわね。バリアを張ってあげるわ。』
『!・・(あのときの)黄金の雌、の声?』
『ナギが加勢してくれるかもね。完全に根絶やしにするには、聖力が必要でしょ。』
(ナギが?・・俺たちのしたことを考えたら、そんなの無理だろ。)
ナギたちを率先して追い出したシェンは、そう思った。
『ナギが来てくれるって本当か。』
『変な期待はするな。』
しゅん
『だよな・・。』
『だが、どうする?』
『バリア内には入れないようだが、俺らも出るに出られない。』
『せこいやり方だが、攻撃して、すぐに中に戻るってのを繰り返すってのはどうだ?』
『それしかないか。』
基本、籠城戦となっていた。
相手は、飲食を必要としない疲れ知らずの巨大スケルトンたちだ。
明らかにドラゴンたちのほうが分が悪かった。
『よう、来てやったぞ。』
『『『ナギ?』』』
『どうして・・。』
『友が、個体数の少ないドラゴンをあたら死なせるのは、もったいないと言うからな。』
『友?』
『金色のドラゴンのこと、忘れたのか?』
『忘れるはずがないだろ!俺たちは黒焦げになったんだぞ。』
『ははっ、回復してるじゃないか。』
『結構かかったんだぞ!ほぼ全身が消し炭状態になってたから。』
(ジンはそこまでしてくれたんだ。)じーん
思うところがあって、ここに来るまで時間がかかってしまったナギだったが、シェンたちにもっていた負の感情は、以前ほどではない。
もう過去の些末なことだ。
ジンが俺たち同族が減ることを遺憾に思うなら、その意に添うまで。
(ジン、障壁の範囲を拡大してやってくれ。長期戦になるなら、シェンたちには餌場が必要だ。)
(OK。)
バリアが外に向かって広がった。
その勢いで、巨大スケルトンたちは弾き飛ばされ、折り重なるようにして倒れ込んだ。
『これぞ、十把一絡げ!』
ナギは、間髪入れずにセイントブレスを浴びせた。
スケルトンたちは、塵も残さず消滅した。
『『『・・・。』』』
『すげー!』
『シェン、狩り場を確保してもらったから、長期戦にも備えられるだろ。』
『あ、ああ。』
『それから、中から外にブレス攻撃は通るから。』
『なっ!』
『じゃあな。気が向いたらまた来てやるよ。』
『なあ、俺たち、安全な状態で攻撃できるってことだよな。』
『このバリア、便利すぎないか。』
『・・・。』
(はあ~。機会があったら誠心誠意謝ろう。)
<ローガン>
(なぜだ。得た能力で、どうしてクロウが見つけられない?)
(ローがまた暗い顔をしてる。)
「ロー、まだまだ依頼人はどっさりおりますよって。」
「桜、わかってるよ。」
ローガンは、人質を取られて従わされている魔族兵たちを見つけては、ここ珍界へ転移させていた。
「次は?」
「あ、はい。兄の名は・・・。
・
・
「これで全員済んだかな。」
「「「「「ありがとうございました。」」」」」
「いや、これが俺のできることだから。」
「ほな、行きまひょか。」
「え、でもまだリアから連絡が。」
「終わったら合流せんと。」
「・・そうだな、もういいよな。」
「ローガン様、どうかよろしくお頼み申します。」
「ああ。俺の役割を果たしてくるよ。」
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
(あとは、魔界で、デーロンに囚われている魔族たちを見つければ・・。)
<ローガン、魔界へ>
「リア。」
「ロー、来てくれたのね。どう?」
「ああ、感じられる。やはり、亜空間内は、俺もそこに飛び込まないと感知できないんだ。」
「そのようね。私の召喚には対価が必要だから、ローがここへ呼んでくれる?」
「ああ。」
ローガンは、魔族から聞き取ったリストを出した。
全部で15人。
元魔王の幹部たちだ。
ジンフィーリアたちは、彼女が展開した結界の中にいる。
「魔王の亜空間内に結界が張れるんだな。」
「なぜか、可能なのよね。」
「リアの力が上回ってるだけじゃないか。」
「そう単純な話じゃない気がするけれど。」




