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159話:居残り組のナギ、魔族の一時的移住


<ナギ>


「どうして駄目なの?魔界で闘いたい!」

「ナギ、あなたはドラゴンの王となる立場。役目を全うしないとね。」


「でも!」


「今は、魔界とここを行き来できているけれど、これからどうなるのかわからない。ドラゴンたちの希望であるあなたまで閉じ込められたら、どうなる?この世界からドラゴンが絶滅してしまうかもしれない。」


「!・・そんなことにはならない、よ。」


「未来は誰にもわからない。数の少ない同胞をあなたが守らないとね。元々のナギたちの棲家にいるドラゴンたちも魔族の攻撃を受けるかもしれない。」


「魔族ごときに負けるわけは「悪魔貴族がいるのだから、下級悪魔を使役していてもおかしくない。悪魔ともなれば、ドラゴンでも手こずると思うわよ。聖なる力を使えるエンシェントドラゴンのあなたなら滅することが可能よね。」


「・・悪魔は、聖力が使えないと殺せないの?」

「恐らくね。リアンとイアンには私に同行してもらう。戻ってこられなかったら、あなたが世界で唯一のエンシェントドラゴンよ。」


「・・・。」


『案ずるな。必ず戻ってくる。』


「待ってるよ。俺、気は長い方だけれど、3人とも、あまり待たせないで。」


「ええ。」『『ああ。』』




ジンフィーリアたちは、魔界に戻っていった。



<精霊王とエーシル>


「え、精霊王様たちは、元々この世界にいらしたんですか。」

「先代王がな。それに我らだけでなく、他にも先住者がいる。」


「では!我ら同様、乗っ取られたのでは?」

「そう考える者は、いない。」


「え・・・?」

「受け入れている。当然のようにな。」


「そ、そんな・・・。」

「これ以上、無礼な考えはやめよ。」


「・・・。」


「かの存在を貶めることは許さぬ。そなたたちを助けたのは、紛れもなくかの存在だ。我が口添えしたわけではない、ジンフィーリアの意志だ。」


「は、はい。」

(その通りだ。我々は、世界樹は、彼女に手を差し伸べられ、それを掴んだ。縁もゆかりもない我らを受け入れても何ら得などないのに。あのままでは、魔王に従えない我らは、絶滅していただろう。そんなことになれば先祖に申し訳が立たぬ。我らにできることは、ただただ、ジンフィーリア様に感謝を捧げるのみ。)



エーシルは、椿、リアン、鬼人と話し込んだ。



(法王国が”異世界”から対魔王のために勇者を召喚した・・。

異世界が存在するのを認めざるを得ない。)



その後、エーシルは、一族を集め、知り得た真実を話して聞かせた。

そして、ダークエルフという存在について語り、間違いなく同胞であるのだと懇々と言って聞かせた。


「ですが、今のこの忌むべき姿、受け入れられません。」


「この姿もまたエルフのひとつの姿に過ぎない。今は、精霊の力を得ることができないが、闇に特化した別の能力が使える者もすでにいる。」


「「「・・・。」」」


「この世界の主、ジンフィーリア様は、誰もが友好的な関係であることを望まれている。特に、同胞同士の仲違いは許さないだろう。互いの能力を認め合い高め合うことこそ建設的だ。そうだろう?2倍の力が使えるではないか。」


しーん


「主様は仰った。元の姿に戻った者同士の間にも、今後、ダークエルフが生まれるであろうと。」


「「「「「!」」」」」


「闇の力を保って産まれたからと、自分の子を捨てる気か?我らもなかなか子宝に恵まれぬのに?どうしても納得できぬのなら、里を離れても構わない。ここを出て、別の集落を作ればいい。」



世界樹は一晩で低木くらいに成長していた。


エルフの体にもすぐに変化が現れた。





[魔界、ふたたび]



「一般魔族たちは、どうする。」

「数が多いからエルフたちのようにはいかない。」


「リーダーになれそうな魔族たちには、スラ忍たちが既に接触してる。その中から、オロロに選んでもらったのが、・・彼ね。」


「うん。この人なら大丈夫だよ。」


「お初にお目にかかります。アスタと申します。お噂はかねがね伺っておりました。ジンフィーリア様。」


「よろしくね。あなたの主になるのは私ではなく、この炎雷よ。」


(おおっ、このお方が。矮小な存在の私でもわかる。とてつもない力を秘めた方だと。)


「アスタ、よろしく頼む。」

「ははっ。」



「それで移住希望の魔族たちは?」

「集めてあります。ただ、その中に、反逆者がいないとは言い切れません。」


「そりゃそうよね。アスタ、この腕輪を渡すから、民たちの荷物を預かってあげて。」

「は?あの・・。」


「柊、使い方を説明してあげて。」

「はっ。」



「皆、聞いて。もう少ししたらここは、戦禍の渦に巻き込まれる。戦う意志のない皆は、巻き込まれ命を落とすことになる。そうならないためにも一旦、私の領地に移住してもらうわ。」


「あ、あの、私と子どもが人質になって、夫が戦士として無理やり徴収されて・・。」


「それに関しては、できる限りのことをするけれど、期待はしないで。」


「あ・・・。」じわっ

魔族たちは、鎮痛な面持ちで下を向いた。



「今から向かってもらうけれど、一つ、忠告しておくわね。私の領地には、私にとって大切な者たちが暮らしている。そこに新たにあなた方を迎え入れるわけだけれど、一時のこととは言え、敵は受け入れられない。既住人にもあなた方にも危険が及ぶから。」


「どうやって、敵味方の判断を?」

「そこのあなた、それよ!その事を話したかったの。」


ゴクリ(敵の見分け方は?)


「悪いけれど、私の判断で決めるわ。」


ガーン「そ、そんな曖昧な。」


「とにかくそういうことで。アスタ、あなたを私の地での魔族の長として認めます。」

「謹んでお受けいたします。」


「用意した家を気に入ってくれると嬉しいわ。」



魔族たちは、一瞬で消えた。

が、すぐに、また同じ場所に戻ってきた者たちが10人ほどいた。


「あら、お帰り。あなたたちは、ここで精々生き残るべく足掻いてみたら?」


「なっ!」

「おい、俺らも助けろよ!」

「酷いじゃないか、差別するなんて。」


「黙れ!」ギロッ


「っ!」


「くそっ、覚えてろよ!」

「恨んでやるっ!」


炎雷のひと睨みに、彼らは捨てぜりふを吐き、ゴキブリのようにサササッと姿を消した。


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