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158話:エーシルとジンフィーリア

[エルフ居住区]



「ここよ。」


「!」


「精霊たちが近くにいるからよいでしょう?」


精霊王が姿を現した。


(た、ただの、精霊ではない。纏うオーラが破格過ぎる。)

「まさか、精霊王様?」


「ええ。世界樹に力を分け与えることができたのも彼の尽力によるもの。」

「おおっ・・・。」


「世界樹は、以前と同じ位置に植えたけれどよかったかしら?」

「え・・あ、はい。」



(素晴らしく清浄な場所だ。)


仲間たちが感動に打ち震えている。


「あの、ジンフィーリア様、魔界へ戻ることは可能でしょうか。」

若いエルフが尋ねてきた。


「今は、戻らないほうがよいわ。」


「そうですか・・。」

(持ち出したいものがあったのだが。一瞬でここへ連れてこられてしまったから荷物をまとめる暇もなかった。)


「ああ、そういうこと。このエルフの里は、あなたたちの暮らしていた状態とまるっきり同じように配置しておいたし、家の中のものもそのままだと思うわ。」


「「「?」」」


「確かに、魔王に侵される以前の里に酷似していますが・・。」


先程の若いエルフは、一目散に自分の家の場所に走った。


そして、中に入ってみた。


「!・・信じられない。俺の家だ。家具も何もかも同じだ。」


慌てて、目当てのものを探すべく引き出しを探ると、あったのだ。

「母の形見!・・どうし、て?」



エルフたちの騒動が落ち着いた頃、エーシルがジンフィーリアに尋ねた。


「どういうからくりなのですか。あ、いえ、もちろん、大変ありがたく思っておりますが。」


(ただ、コピっただけなのだけれど。以前の状態に復元できたのは、この空間の為せる技ね。

本当、助かるわ。)


「これも、私の能力ということで。」


「そうですか。」

そう言うなり、エーシルは考え込んでいるようだった。


「ジンフィーリア様も、魔王との闘いに参戦されるので?」

「ええ。」


「(!)・・あの、大変失礼ながら、あなた様の御身に何かあれば、この世界も影響を受けるのではありませんか。そうなれば、我らは、この世界の住人はどうなってしまうのでしょうか。」


「当然、心配になるわよね。(前世、一番の気がかりだった。毎回、無事とは限らないし、私がいなければ、閉じ込められるのは必然。)」


「はい、申し訳ありません。」


「この世界の継承者が既にいるの。私に何かあったらその者が私から受け継ぐことになる。彼は、魔界での戦闘には参加しないから安心して。」


「そうでしたか。」ほっ



そうなのだ。付属界にて、レネに継承能力が発現したのだ。


ジンフィーリアは心よりホッとした。

これで気兼ねなく闘えると。

もちろん死ぬつもりなどこれっぽっちもないが。


レネは、超重要人物となった。

瑠璃が警護にあたっている。



「それと、貴方たちの姿だけれど。」

「・・はい。」


「元の姿に戻るわ。」

「え、本当ですか?」


コクン

「闇の影響を酷く受けてしまったけれど、間違いなく回復するわよ。どれくらい時間がかかるかはわからないけれどね。ここはそういう場所なの。」


「・・・この上ない朗報です。」うるっ

(いつか姿が戻るのなら・・・。この姿に我々は何度も絶望した。精霊王様が棲まうこの世界で、世界樹の成長を見守りながら生きていこう。)


「エーシルたちは、今の姿が気に入らないのでしょうね。」

「当然ではありませんか!」


「世界は、私たちが生きる世界だけではない。異世界や並行世界が確かに存在する。」

「異世界・・?」


「ええ。例えば、全く文明の違う世界、魔族が存在しない異世界があるの。平行世界には、今と違う私たちが存在する。」


「・・・。」


「長く生きるあなたたちなら、なんとなく理解できるのではないかしら。私たちは、その異世界を経験済み。」


「え?」


「私は、前世の異世界での記憶をもったまま転生したの。」


「そんなことが・・?」

「そうよ。私は、確かに異世界が存在すると知っている生き証人の一人。」


「・・・。」


「何が言いたいのかと言うと、異世界では、今のあなたたちの姿である『ダークエルフ』という種族がいる。彼らには彼らの能力があるの。エルフとダークエルフの間に確執があり互いを認められない世界もあるけれど。エーシルたちには、友好的な関係を気づいてほしいわ。」


「・・それは、今後、我らの周りにダークエルフという存在が現れるということですか。」


「現在の姿がそうなのだけれど。全員が元の姿に戻るとは限らないかもしれない。この姿の利点を理解しているものならダークエルフの姿に留まるかもしれない。」


「そんな、あり得ません。」


「エーシル、長老のあなたがその考えでは、差別を生んでしまうわ。同じエルフなのよ。忌み嫌うことはないでしょう?互いの姿・能力を尊重すべきよ。そうでなければ、貴方たちをこの界隈に受け入れたことを後悔しそう。」


「あ・・・。」


「ふふっ。あまり深く考えることはないわ。私も椿たちもエーシルたちが毛嫌いしてる魔族なのよ。」


「え!そんなはずはありません。あなたさまは、人族ではありません、か・・。」

(いや、こんな魔力量が計り知れない人間が存在するのか・・?長命の我らより理を知っているような存在・・。精霊王様とも友誼を結んでおり、誇り高いドラゴンとも・・・。)


「私の前世は、そうね、この世界のサキュバスに近しい存在と人とのハーフとして生を受けた。

ここにはその種族が多いけれど、ドラキュラもいるわよ。」


「本当に魔族なのですか。」


コクン


(住人たちからは、誰一人として邪悪な感じは受けない。寧ろ、その反対で・・・。)


「今まで気が張っていたでしょう?ゆっくり休むといいわ。」



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