157話:エルフ救出
[ベスティア王城]
国に残った王配たちがランチをともにしていた。
「機嫌直せよ。」
「・・・。」
「ロー、すぐに参戦するよう連絡が来るって。」
「もしかしたら、無視されるかもしれない。」
「いやいや何言ってんだ、有り得ないって。」
「・・3人とも、やけに肌艶がいいな。」
「「「・・・。」」」
「ロー、食べないとせっかくの食事が冷める。俺は状況次第で孤軍奮闘することになる。」
「ついでに、エミールを蔑ろにした奴らを排除してもいいんじゃないか。」
「そんなわけには「何をしようがリアは味方になってくれる。心のまま動いていい。」
「ほらな。機会があったらやっちまえ。」
「・・いいのか?」
「いいんだよ。」
そう言うと、ローは食事をはじめ、残さずきれいに食べた。
「食欲があるようでなによりだ。」
「食べるものがなく苦労したこともある。出された食事はきちんと摂るよ。」
ローガン神父のカランコエは、現在、ベスティア国内に移転している。
「ねえ、桜。さっき、エミールが一人で闘うようなことを言ってたけれど・・。」
「ああ、心配いりまへん。椿様がちゃんと采配しはるから。」
「あれ?そんな言葉遣いだったっけ。」
「ふふ。ローが京都を好きでっしゃろ?時々、京言葉を混ぜさせてもらいまっ。」
「そう。・・うん、雰囲気は出てるかな。」
「うち、頑張ります。だから元気出してください。」
(おお、イントネーションがそれっぽい。)
「気を遣わせてしまったね。桜の好きに話していいから。」
(それが、結構気にいってんで~♪)
[魔族領]
「ここが、魔界。」
「暗くて湿っぽいところだ。」
「ここで暮らすのは拷問だな。」
「食事は、楽しくなさそうだ。」
「そうね。まずは、エルフの元へ行きましょう。」
「申し訳ありません。説得できておりません。」
「柊、梢、ご苦労さま。もうひと押しでしょう?話してみるわ。」
「こちらが、超攻撃をぶっ放したら巻き込まれる可能性がある。」
「自重の必要のない状態にするのは、気が楽だ。」
「その通り。」
[エルフの里]
「あなたが、柊殿と梢殿の主君ですか。」
「二人は、私が信頼する万能な仲間よ。」
「申し遅れました。エルフの長老エーシルと申します。」
「ジンフィーリアです。」
このエルフの里を始点として、魔界が広がったとエルフの長老は言った。
亜空間が里を取り込んだとも言える。
「土地を提供してくださるとのこと、感謝に耐えません。ですが、あなた方が、我らのために戦って下さるというのに、どうして我らが逃げることなどできましょうか。」
(ん(?)、柊、梢、どういうこと?)
(人族の連合軍ではない我ら単独で戦闘予定ですので、ただの好意で助力してくれると思っているようです。)
(安全な土地に、移住を薦めておりますし。)
「私たちは、善良な民を戦禍に巻き込みたくないのよ。」
「この世界に入り込める存在というだけでも、俺たちの力を測れるのではないか。」
「我らより、お強いということは、わかっております。(だが、魔王麾下の6体に勝てるとは思えぬ。)」
『むっ、何やら失礼なことを考えておるな。』
(まあまあ、ゴウル。心が弱り切ってるから、どうしても後ろ向きな考えになるのよ。)
「・・それに!世界樹を見捨て、ここを離れるなどできませぬ。」
「世界樹というより、魔界樹じゃないか。」
ギッ!!
ダークエルフと化したエルフたちがラースを睨んだ。
「そう。一番の心残りは世界樹のことなのね。」
<世界樹>
見るも無惨な状態の世界樹をエルフたちは、直視できないようだった。
ジンフィーリアが黒く腐食した世界樹に手を伸ばすと、「何をなさいます!」長老が過敏に反応した。
「対話するのよ。」
「はい?」
「精霊王に力を分けてもらったけれど、ゴウル、ジルバも力を貸して。」
『『わかった。』』
ジンフィーリアが触れた箇所がぽうっと淡く光った。
そして、ジンフィーリアが手にしたものを見て、エーシルや他のエルフたちが動揺を隠せずにいた。
「そ、それは、まさか・・「ええ。世界樹のひと枝よ。最期の気力を絞って、この枝を託されたわ。」
「おおっ・・。」
「この世界樹を安全な土地で芽吹かせないと。さあ、皆、ここを離れるわよ。」
エーシルはじめ、エルフたちが跪いた。
「では、行くわよ。」
[珍界]
「は?・・ここは一体どこですか?」
他のエルフたちもキョドっている。
「もしかして、竜人族?」
「鬼族?」
「エルフの皆様、ようこそお越しくださいました。主様よりこの世界を任されております椿と申します。」
(不思議な衣装だ。・・キモノというものに似ている?)
「こちらは、エンシェントドラゴンのリアン様と鬼人族の長です。」
「「「「「・・・。」」」」」
「あなたたちの拠点に案内するわ。歩きながら話しましょう。」
「は、はい。」
「ここは、私の亜空間世界なの。」
「なっ!・・魔王と同じ能力を?」
「同じかどうかはわからないわ。」
「・・・。」
「私の場合は、ある日突然、亜空間を得たと言った方が正しい。お陰で、縁のあった仲間たちを匿うことができた。」
「匿う・・?」
「ええ。皆、危険と隣り合わせの生活をしていたの。敵がいて安全に子を育てることが難しかった。」
「竜人族たちは?彼らは強い。庇護を受ける必要など・・。」
「リアンたちは、単にこの場を気にいっただけ。それに、私が他の種族たちを守っているわけでもない。寧ろ、助けられているわ。」
「・・・。」
「ここには、希凰桃の生る木がある。あなた方エルフの秘薬と似たような効果があるのかしら。100年に1度しか実をつけないのだけれど。」
「!(・・きおうとう?)」




