15話:楓の謀(その1)
【神獣虎兄弟と楓のいる風景】
『相談か?』
「いえ、実行することを一応話しておこうと思って。」
『決定事項、ね。で?』
「私たちは、13歳で姫さまが完全覚醒すると思っています。」
先を促すゴウル。
「考えてもみてください、この国の成人は15歳。姫さまはこの国で生を受け暮らしてきました。」
『13歳では覚醒しないと?』
「絶対とは言えませんが、可能性は高いと思います。この世界の体なのですから。」
『姫さまを隔離して、成人は13歳、13歳!と言い含めればいいじゃん。』
「それよりよいことを思いつきました。姫さまがわざと曖昧に設定したキーワード、それを大いに利用しましょう。」
『続きを。』
「この世界でも共通する『大人になること』は、結婚すること、つまり男女の交わりです。」
『結婚させるのか?12歳だぞあの体は。それこそ、この国の法律が邪魔しないか?後に建国するなら、法は守るべきであろう?』
「姫さまは貴族ではありません!平民です。平民は子が産めるようになれば結婚しています。ほとんどがムリヤリ状態のことが多いですが・・・。」
最後の方は声が小さくなる。
「そして獣人は、子が産める相手とならば、年齢に関係なく番ってよいのです。」
『・・・カイを?』
楓が首を縦に振る。
『13歳まで待ってダメなら、そこで試しては?』
「いえダメです。ここ最近事態が急速に動き出しました。姫さまには万全の態勢でいてほしいのです。ご自身もそれを望みましょう。」
『今の姫さまなら不完全とはいえ、俺らもいるし危険はないだろ?』
「もし例のお二方が関わったら?」
『『!!』』
「姫さまは命を投げ出されますよ。そして、私たちはまた姫さまを失うんですか?
完全覚醒すれば、怖いものなしなのでしょう?」
『・・・ああ。』
「1日でも早く覚醒すれば、リスクを減らせます。多少強引に事を起こしても、姫さまならば、よくやったと褒めてくれます。」
『しかし、少女の体で、、、ちと酷くないか?』
「もうすっかり成熟しています。」
『!・・ふむ、楓がそう言うのなら本当なのだろうな。』
『なら賛成だ。』
「反対されてもやめませんが?」
いい笑顔を浮かべたまま「今夜決行します。」と言った。
『早っ。・・心の準備が。』(あなたの心の準備はいりませんよ。)
『そうだな、新護衛が来る前の方がいい。』
「ええ、邪魔されて中途半端になっては、カイが可哀想ですから。」
* * *
【カイの部屋にて】
なぜ、この状況?
俺の目の前には、エロいナイトウェアのジンが座っている。
楓はお茶を入れている。
少し前。
ゴウル兄弟へ話が済み、楓はジンフィーリアの元へ。
「姫さま、もうすぐ13歳の成人を迎えますが、少しでも早く本覚醒されたくはありませんか。」
(うん?それは願ってもないが?)
「そこでですが、『筆下ろし』には年齢制限がありません。筆下ろし = 大人の仲間入り、大人になる!です。」
(!!そうだ!全く気がつかなかった。楓、礼を言う。)
楓は微笑む。
(だが、今は女の体。女用の娼館はあるのか?)
「ですので、明日にでも街へ行って探しましょう。」楓はニヤリとする。
(わかった。)
「ラースのミルクはまだですね?」
(ああ、そろそろ飲ませようと思っていたところだ。)
「では、楓特製の濃厚ミルクをお試しください。」
(濃厚か、ありがとう。そろそろラースも離乳食をはじめてもいいかもな。)
「ええ、よいと思います。」
ラースにミルクを与えているとおネムになったようだ。
眠りながらゲップをさせてベッドに寝かせる。
「ところで、姫さま。カイにぴったりの配合茶を作りました。
寝る前に飲むとほどよく筋肉がほぐれるのです。明日からリハビリ&戦闘訓練をしてもらおうと思います。」
(そうだな、彼には双子たちをこの先も守ってもらいたい。)
「今からカイのところへ行きましょう、姫さまも。」
(私も?)
「実は、このお茶、睡眠導入効果もありまして。飲んだら明日の朝までぐっすりです。」
(う、うん?)
「カイの尻尾!耳だけでなく尻尾も触ってみたくありませんか?5分と言わず好きなだけ堪能できますよ。」
(行く!すぐ行こう。)ジンフィーリアは立ち上がった。
「その前に姫さま、こちらにお着替えください。」
ジンはモフモフに想いを馳せて、上の空で着替えさせられる。
念の為、隠蔽をかけて、と。
「では、行きましょう。」




