153話:身内贔屓?
[付属界]
「エミールまで来るなんて。」
「眷属になれば、ジンと長くいられるからね。」
<エミール>
強さに興味がなかったわけではなく、身の程を知って諦めていたに過ぎない。剣の才能はなかったしね。
ここのことは、夫仲間から聞いて、来てみたいと思ってたんだ。こんな俺でも強くなれる可能性があるなら、何かしらの固有能力を得ることができるなら、参加しない手はない。
もしかしたら、俺の価値が上がる能力が身につくかもしれない。何の取り柄もない俺ではなく、少しでもよいから妻の役に立ちたい。
未だに祖国では顔だけ王子と揶揄されているようだが。両親も兄姉もいない国のことではあるが、母国であることに変わりはない。何かあれば俺が解決に出向けるくらいにはなりたいものだ。
<レネ>
ここが噂の付属界か。
こんなに早く訪問できて嬉しい。
楽しみで堪らない。
夫仲間たちは、容姿も力も優れている。
少しでも追いつきたい。
テン、、ジンが、唯一無二の愛しい女であることに変わりはないが、俺一人の女ではなかった。
既に、夫が五人いた。
無垢だった事情は理解した。
俺との夜は、テンの姿になってくれる。
また一人、大物がジンの夫に加わった。
不思議と他の夫たちと争う気は起きない。
嫉妬すら覚えない。
純粋に、ジンを支える運命共同体と思える。
気のいい奴らだ。
人と深く関わることをしてこなかった俺が好ましく思い、信頼している仲間だ。
<ロー>
聞いていた通りの不思議で面白い世界だ。
レイと彼に付いていったケイジ、ヴィオも参加している。
真っ先に死んだのは、俺だった。
死ぬ寸前、呆気にとられているエミールとレネの顔が見えた。
情けない。
「誰もが、何度も死に戻りするものだ。気にするな。」とレイたちに慰められた。
確かに、その数分後、エミールとレネも仲良く即死したのだった。
・
・
ハードだった。
その日の修練が終わったあとも休むことはできなかった。
夜の時間をゆったり過ごしていたのは、リアだけだろう。
付属界組は、よい顔つきになって、現実世界へ戻った。
[ベスティア国]
合同出資に一枚噛んだ国々の代表が集まっていた。
(公国は、どうしていつもシャアを・・。案外適当だな。)
(公は酷い。俺はただのワイバーン隊長なのに。)
「ポー、ざっと紹介して。」
(ざっと、って・・。)
「えー、では、皆様ご存知とは思いますが、改めて各国の代表の方々を順にご紹介させていただきます。」
・帝国:ディーン王子(勇者:テライタケシは法王国へ戻った。)
・王国:アーフィン王子(剣聖・聖騎士が同行)
・ブルーニュ公国特別大使:シャア
「え?特別大使?・・俺、何も聞いてないんだが。やはり、公は、俺の扱いがぞんざい過ぎる。」
(((あ~。)))
・トランド国&ミーシア国全権大使:レイ王子
「二国の代表が、幼児一人?」ひそ
「後ろの二人が、実質メインなのだろう。」ひそひそ
「はあ。おい聞こえてるぞ。」
「「!」」
「アーフィン殿下、ディーン殿下、レイ殿下を侮らないことね。」
「・・幼くして優秀ということか。」
「ええ。」
・マゾン国代表:オロロ
(いつ見ても純朴な青年だな。)
・シャング国代表:エミール(ベスティア王配)
レイ「帝国と王国以外は身内の集まりだ。無礼講でいいな?」
(ということは・・。)(そういうことか。)
「ディーン殿下、アーフィン殿下、こちらの資料をどうぞ。我が国の調査により、現時点でわかっていることです。」
国元へ渡す必要がある者たちも調査結果資料を受け取った。
資料に目を通したディーンたち、アーフィンたちの顔色は、かなり悪くなった。
「女王陛下、これは、本当のことなんですか?」
「ケイン、やめろ。」
「フィリアが真実と言うのだからそれ以外にない。」
「・・・愚問でした。」
「フィー、法王国が勇者以外の戦力を投入しないとしても、帝国は参戦の用意がある。テライが滞在していたこともあり彼の力になりたいと考えている。」
「王国も同様の見解だ。」
「魔王よりも強い悪魔がいるのだから、世界の危機と言えるわ。総力戦で臨むべきでしょうね。」
「「では!」」
「資料の懸念事項を無視できるのか。」
「「!(ラース・・。)」」
(なぜに、この場に獣が??・・普通に喋ってるが、ニヒルに。)byシャア
(ラースはマイペースで面白い。ぶふっ。)byアラタ
「勇者たちが勝利したとして、こちら側に戻ってこれるかも怪しいのよ。法王国が与える帰還魔導具が魔界で作動するか疑わしい。」
「ダンジョンから戻ってこられるのと、同じことではないのですか。」
「シャア、仮によ?亜空間の維持が魔王によるものだとしたら?」
「あ・・魔王が討伐されたら、空間も消滅するのですか?」
「そうかもしれないし、違うかもしれない。想定外のことが起こると考えて行動するしかないわね。」
「・・・。」
「結論から言うと、私たちがやるから、他は、戦力を温存しておいてほしいの。」
「そんな!俺たちは聖力が使えます。役に立つはずです。」
「そうです!同行させてください。」
「災害級のやつらを倒すつもりでいるけれど、不測の事態が起こるかもしれない。取りこぼしがあったら、否が応でもこちら側の人類が討伐することになる。」
「お二人さんは、法王国の聖職者たちよりも力が強いからな。人類側の切り札やで。」
「「・・・。」」
(そうか、この二人の聖力はそこまでのものか。・・うん、これからも大事にしよう。)
「そういうことなら、了解した。(静観させてもらおう。フィリアたちが負けるとは思えないし。)」
「帝国は、俺は、納得できない!」
「ハッキリ言うと、足手まといということだ。」
「なっ!」
「悪魔族との戦いは、一筋縄ではいかないかもしれない。私も、未経験なわけで。身内以外を気にかける余裕はないってこと。」
「それは、当然だ。自己責任で戦うしかない。」
「悪魔の咆哮一つで、何千人も吹き飛ぶかもしれない。一瞬で。」
「・・・。」
「死者が出るのは避けたいわね。」
「誰一人死なずには、無理に決まっている。俺たちだって覚悟して臨むつもりだ。ノワたちだって帝国の盾として参戦するはずだ。」
「帝国も、ノワたちを温存した方がよいわ。魔族との戦いに勝利したら、今度は法王国の動きに注視すべきでしょうから。」
「先の話をしても仕方がない!まずは、魔族を総戦力をあげて殲滅してからだ。」
「ディー、魔界の戦闘で人が死ねば、その魂は、悪魔たちの糧になってしまうの。」
「え・・・?」
「災害級の敵を、更に強くしてどうするのって話っすね~。」
「・・・・・。」
「私たちが魔界で闘っている間に、各国を攻撃する別働隊との戦闘もあり得るわよ。」
報告会は、おひらきとなり、ディーンは、ケインに引きずられるように帰っていった。




