150話:ローガンの罪悪感
魔族の侵攻がはじまった。
「華々しくデビューを飾ったあと、何故か静かでしたね。何してたんでしょう。」
「ポーは偉いな~。敵のことを華々しく、なんて言ってあげられるんだから。」
「外務大臣といたしましては、世辞も大事ですから。」
パチパチ
「適当な私には、ポーの存在がありがたいわ。これからもその調子で頼むわよ。(丸投げごめん。)」
「かしこまりました。(・・できれば丸投げはやめていただきたいのですが。)」
<勇者たちの戦闘風景>
アラタ「へえ~。普通に闘えてる。」
サブロー「勇者補正というやつじゃないかな。」
「それは、どういうことでございますか。」
「主役に、有利に働くチート能力のようなもの。これで合ってる?サブロー。」
「うん、そんなところ。」
((分身体が潜入に成功いたしました。))
(柊、梢、さすがね♪)
(では、調査を開始いたします。)
「ポー、スラ忍たちが魔族領域へ入ったわ。」
「なんと!」
「魔族領域とこちらの世界をつなぐ門は、一方通行のなのよ。だから、魔族たちが還るときに、こっそり同行したってわけ。」
(柊たちなら、逆侵入もできるんじゃないだろうか。まあ、慎重なのもよいか。)
(他の亜空間は、当然、勝手がわからない。身内に危険が及ぶことのないようにしたいわ。
スラ忍の本体は、こちらにいるから安心♪)
「炎雷、来たのね。」
「ああ。しばらくこちらにいる。」
(いつ見ても、コーカサスオオカブトみたいな角だ。)
「歓迎するわ。・・琥珀とは、良好な関係を築けているようね。」
「頼りになる相棒だ。」
しゃらーん
「「「「「!」」」」」
「あら。人化できるのね。」にっ
「いつの間にかな。」ニヤリ
「皆様、初めまして。琥珀と申します、以後お見知りおきを。」
[女王の寝室:夜]
ベッドは、クイーンサイズではなく、キングサイズだ。
「炎雷、どうしてあなたが?今晩は、ローだったはず・・・。」
「代わってもらった。いや、違うな。割り込ませてもらった。」
「えっと・・。」
「我の子を産んでくれる約束だろう?」
「それは、期待に添えるとは限らない、から。」
「承知している。だが、何もしなければ、可能性は0のままだ。違うか?」
「違わないけれど。」
「そういうわけで、努力することにしたんだ。」ニッ
「そ、そう。」
<翌日:夫たちのランチ会>
参加者:カイ・ラース・ロー・アラタ・エミール・レネ・炎雷
ラースと炎雷がアイコンタクトをした。
二人は、馬が合うようだ。
「皆、改めて、よろしく頼む。」
(アラタとは違った鬼人だ。立派な角だ。魔族のねじれた角とは異質のものなんだな。神に近しい存在と言われても納得できる。)
「纏うオーラが、既に王者のそれ、だね。」
「まだまだではあるがな。ロー、昨晩はすまなかった。」
「いいんだ。新夫は、しばらくリアを独占できるよ。」
「ありがたい。」
(7人の夫、か。ここにいるべき者が、未だにいないのは、なぜだ?)
<ローガン>
特に決まっている仕事はない。
リアの夫の一人という立場なだけだ。
この国に居を移してから、他国を巡り歩いた。
但し、リアとの夜の日は、必ず帰還した。
どうして、見つからない?
リアとは、ただの偶然ではなく、引き寄せられるようにして出会ったと思っている。
彼も最愛を探しているはずではないのか?
人間ではないものに生を受けたのか?
それとも、まだ、この世界に存在していないのか?
俺が、すぐにでも逝こうとしたジャスティンを引き止めたせいで、時間軸が狂ってしまったのか?
俺が、やらかした?
だとしたら、どう、詫びればいい。
取り返しがつかない。
ローガンは、苦しくて堪らなかった。
気がつくと、椿の元へ来ていた。
「ロー殿、いらっしゃいませ。」
「あ・・・椿、俺は、俺は!」
「酷い顔ですね。また御自分を責めていらっしゃるんですか。」
「そうではない。・・椿は元気そうだね。」
「ええ。月に2回は、可愛がってくださいますもの。ロー殿は、その倍でしょう?」
「フフフ・・そうだね。」
「ふふっ。・・自分ばかりが幸せでいて、と罪悪感をもつ必要はありませんよ。」
「・・・。」
「主様の一番は、誰でしょうか。考えても見てください。彼が見つかれば、間違いなく!」
「そう、クロウがリアの一番だ。」
「本当にそうでしょうか。」
「え?」
「私たちの一番は、当然、主様です。主様しかありえませんから、どんな主様であろうともお慕いする気持ちは変わりません。主様が幸せなら、私たちはそれでよいのです。」
「うん。」
「ですが、同じ眷属でも、ロー殿は、別格だと、私たちは弁えてもおります。」
「そんなことは・・・。」
「あら。ご自分でもわかっていらっしゃるのではなくて?」
「椿、意地悪を言わないでくれ。特別な存在などと思ったことなんてないよ。」
「まあ、気づいていらっしゃらないんですね。」
「え・・・?」
「主様が涙を見せたり、甘えられる相手が他にいるとでも?」
「あ・・・?」
(外出時に、我らから護衛がつくのもロー殿だけ。これを伝えると、自分が弱いからだと納得しないだろうから言わないでおくけれど。)
「自信を持ってくださいまし。」
「椿、なんだかすまない。(君だって一番になりたいだろうに。)」
フルフル「私たちは、ロー殿に嫉妬することはありえないのです。」
「え・・・。」
「ロー殿、クロウ殿を愛する主様が原点なのですから。」
「・・そうか、クロウと俺ありきのリアなのか。」
「ええ。炎雷も違う意味で特別ですけれどね。彼は眷属でありながら、個としても存在してますから。」
「言いたいことはわかるよ。」
「お食事しながらお酒でもいかがですか。」
「いいね。」




