149話:勇者
そして、1ヶ月後、法王国から勇者召喚に対する強制とも言える協力要請が世界中に発信された。
マゾン国守は、オロロにどうしよう!と相談した。
結果、帝国、王国と公国、トランド国とミーシア国(レイの母の祖国)そして、マゾン国も加わった7国+1国(シャング国=ジンの夫エミールの母国)合同で、帝国の国家予算5年分を協力金として法王国へ渡した。
いくらでも出せたが、あまりに高額であると法王国がロクなことに使わないだろうと予想し、その金額で手打ちとなった。
法王国は、驚き、そして、とてもとても喜んだ。
それから2ヶ月後、勇者召喚が行われた。
喚ばれた勇者は5人だった。
我ら合同出資国8国に対し、お得意様認定している法王国が勇者一人を預けてもいいけど?と上から目線で言ってきた。
どこの国に常駐してもらうか話し合った。
ベスティア国は「面倒臭いし、内情を知られるのも煩わしい。要らん。」との意見だった。
帝国、王国、公国はいざとなれば、ジンフィーリアたちが駆けつけてくれるだろうと考えている。
トランドとミーシアもレイたちがいれば問題ないだろう。
マゾン国は、森からオロロ・ケロロ・アリアリたちがすぐに応援に向かえる。
あれだけ偉そうだったのに5人か。8ヶ国会議で法王国は馬鹿にされていた。
2人以上召喚できたことで、法王国は鼻高々なのだが。
そして、彼の国は、ベスティアの力を侮っている。
「勇者は別にいらんが、監視を兼ねて一人を預かるか?」
「無作為に召喚してるでしょうから、人柄が不安だわ。」
「こっちで選ばせてもらうか。」
「その方がいいと思うわ。」
「誰が代表して行く?」
「ベスティアからは、鞠とオロロを派遣するわ。オロロは、マゾン国代表でもあるけれど。」
勇者は帝国預かりとすることに決め、選定にはアーフィン(王国)とディーン(帝国)が向かうことになった。
[法王国]
法王国の魔術師たちは自信たっぷりに勇者を紹介した。
全員、黒髪黒目の15歳の男だ。
「鞠、どうだ?」
「似たりよったりにゃ。」
「鞠が選ぶとしたら?」とアーフィン王子。
「選ばない。」
「ぐうっ・・・。そんなレベルか。」
「5人に質問に答えてもらおう。それで決めよう。」
Q:アーフィン「魔王討伐後は、どんな生活がしたい?」
A「ぐうたら」
BC「スローライフ」
D「酒池肉林」
E「ハーレム、最低でも10人」
(ハーレムってなんだ?by王子たち)
(女10人を侍らせたいってことだよ。)
((! ・・・。))
Q:ディーン「勇者の役割を果たすことに納得しているか?」
全員頷くが・・・。
(どうやら、縛りをつけられているようだ。隷属と言えばいいか。byオロロ)
((!))
(Dは、召喚した筆頭魔術師を殺したいほど憎んでいるようだ。)
(ディーンが質問した時、魂からドス黒いものが出たにゃ。)
(((Dはなしで!)))
Q:鞠「好きな食べ物は何?」
AB「肉」
C「甘いもの」
D「酒!」
E「女」
(DEの回答がおかしい。by王子たち)
(正直、全員まともじゃない byオロロ)
Q:オロロ「俺たちが選んだ勇者は、帝国で生活してもらうことになる。希望者はいるかな。」
全員が手を挙げた。
「理由を聞かせてもらってもいいか。」by アーフィン
ABCDは黙っていたが、Eが「この国はお堅い、息苦しい。」と言った。
(まあ、隷属が理由だよ。)
(王宮の女が被害にあっては困る。Eという選択もない。byディーン)
3人も頷く。
(この映像を見ている皆はどう思う?・・・・・特にコメントはなしか。)
(((・・・。)))
(好みの顔で選んだらどうかな。byオロロ)
(((ええ?)))
(だって、大差ないよ。)
(・・なら鞠、決めてくれ。)
(決められにゃい。)
(((・・・。)))
(ディーンが預かるんだから、ディーンが決めてくれていい。)
アーフィンたちの無言のやりとりに、飽きた勇者たちは下がっていった。
ディーンはケインと相談してCに決めた。
それを告げるとCがとても嬉しそうな顔をした。
他の4人は悔しそうだった。
法王国の勇者預かりに対する規約等の契約書にディーンがサインした。
「ところで、ざっとでいいので召喚方法とそれに対する対価を聞いていいか?」
「これは、我が法王国の極秘事項ですからお答えするわけには。」
ギロリ「対価はなんだ?」
「・・ふう。他国には内緒でお願いしますよ。」
「ああ。」
「100人を捧げる必要がありました。」
「「「「「!」」」」」
「ご安心ください。犯罪奴隷と獣人ですから。」
「「なんだと?」」
それまで静かにしていたテックとダンが怒りを露わにした。
「おっと、獣人が紛れていましたか。」
「この野郎!」
「ベスティア女王が言ってたにゃん。人族と言われている者たちも獣人だって。」
「何を馬鹿な。」
「猿の獣人にゃ。」
「なっんですと?」
「人間は尻尾がないけれど、尾てい骨は、尻尾の痕跡にゃん。」
「鞠、さっきの猿の獣人って話・・。」
「姫さまは、そのうち、世界にそう発信するつもりにゃ。」
「・・さっきのやつ、召喚に捧げたのは、犯罪奴隷って言ってたけれど、嘘だ。」
「「「「「え?」」」」」
「ま、さか・・。」
「ああ、乙女を100人生贄にしている。そのうちの8割が獣人で2割は人間の少女たちだ。」
「テライケンタ、それは本当か?」
「・・・。」
「彼は、口止めされていることは話せない。」
「な、んで、知って・・。あ!・・・ぐうっ。」
「余計なことを話すと、痛くなるにゃ?」
「ああ、心臓を握りつぶされるような、酷い苦痛が襲ってくる。」
「ひょえっ、鞠、想像できにゃい。」
「だろうね。」
召喚は、一方通行で、帰れないそうだ。
ジンフィーリア曰く、「最初から帰すつもりで召喚していないからよ。手抜き、ね。」と。
「ジンなら帰してやれるのか。」
「うーん、確証はできないけれど、召喚時の時・場所になら戻すこと可能かも。」
「完璧じゃないか!」
勇者Cは、テライケンタという名だそうだ。
「なら、ケンケンと呼ぶにゃ。」
「なんでだよ?」
「うーん?にゃんとなく。」
「なあ、この世界は、たくさんいるのは、獣人くらいなのか?他に人外はいないのか?エルフは?ドワーフは?」
「ドワーフもどっかにいるかもにゃん。鞠わかんにゃいけど。エルフはいるみたいにゃ。ドラゴンと鬼人族はいるにゃん。妖精や精霊は、人には姿が見えないことが多いにゃん。でもいるにゃん。」
「鬼人って魔族だろ?」
「うーん?清浄な人たちにゃん。ケンケンより魂の透明度が格段に高いにゃん。」
「え!俺って、濁ってるの?」
コクコク。
ガーン( ̄◇ ̄;)
「フィ-、いい加減俺と結婚してくれないか。」
「夫は沢山いるわ。ディーンは皇子なのだから、正妻が必要でしょう?」
「だが、夫に王子もいるだろう?」
「彼には、事情があるのよ。ディーンは、夫に加わる利点がないでしょう?」
「利点・・・そんなの「ディーン、そろそろ勇者を連れ帰らないと。」
「っ・・わかってる。・・フィー、俺は諦めないから。」
「はあ。」




