148話:魔族周知
ミアーマ国は『ベスティア国』と改名した。
世界中の国の上空に、突如スクリーンが浮かんだ。全て同時刻である。
念のため言っておくが、これは、ジンフィーリアたちの仕業ではない。
そして、見るからに禍々しい者が映し出された。
『我は新魔王だ。今まで魔族はひっそりと暮らしてきた。一番力があるにもかかわらずにだ。
これより、人間界にも我らの生活拠点を求める。歯向かうものは皆殺しだ。
人間は数が多い。半分くらい殺しても構わないであろう?』
ブツン・・・・・。
「おや、宣戦布告ですか。」
「魔族、いたにゃんね。」
「まあ、私たちも魔族っちゃあ魔族だしね。」
「どういうところに住んでいるのかしら。」
「亜空間かもしれませんよ。」
「それだったら、もらっても不安要素があるわ。炎雷たちの拠点に良いと思ったのに。」
「でも、急に方針替えしてどうしたんだ?あいつら。」
「『新』魔王って言ってたでしょう?人間に関わるな、という方針の魔王が死んだか殺されたのよ、きっと。」
(『新』って言ってたのか。聞き逃してた。)
「気の毒ですねぇ。下手したら、我らに殲滅されて魔族0になっちゃいますよ。」
(いや、俺等いるやん。)
「きっと邪悪でない考え方の者もいるわ。その人たちは助けないとね。私たちは生が長いから友好的な付き合いをしたいわ。」
「うーん、外に出たいと思ったのかな。」
「それとも痩せた土地に住んでいるのかな。我慢できなくなって肥沃な土地を奪いたい、とか。」
「エルフみたいに隠蔽結界張ってるのかしら。うちは防衛結界だけれど。」
「何処かの国が、勇者召喚しませんかね。」
「あ~、脳みそのない勇者が来たら面倒ね。」
「それ、フラグになりませんか。」
「・・余計なことを言ったかしら。」
「勇者召喚をするとしたら、法王国あたりじゃないかな。」
「聖女様がいるんだっけ?」
「今はどうなんだろう。」
「そう言えば、ザクセン国には剣聖と聖騎士がいましたね。」
「我らが主人が、必要以上に力を与えた・・・。」
「・・・そうだったわ。」
「法王国が勇者召喚に協力しろって言ってきそうですね。世界各国に向けて。」
「金か魔術師出せ、って?」
「そうそう。非協力的な国には、勇者は助けに行かない、とか言って脅しをかけて。」
「協力しなくても我が国は問題ないですよね。」
「その通りなんだけれど、一応協力して様子をみようかしら。金には全く困っていないから。」
「帝国と足並みを揃えてもいいのでは?」
「規模としては、我が国は、超小国だけれどね。」
「帝国と合同出資でいいんじゃないですか。」
「で、全額私がベスティアが出す?」
「キラと相談するにゃん。」
「なら、鞠に頼める?お金もその場で置いてきてくれればいいわ。」
「了解にゃん。」
[ライディーン帝国:皇宮]
「キラ〜 ♪」
「鞠!よく来たね。」
キラは早速鞠を抱きかかえ、スリスリと頬ずりをした。
「へ、陛下・・。会議中ですぞ。」
「うるさい!鞠の方が大事だ。」
「「「・・・。」」」
「嬉しいにゃん♡」
「はっはっは。当然だよ、鞠。あ〜可愛い、可愛い。」
「あのね、魔族のことにゃん。」
「ああ。フィリアはなんて言ってる?」
「こっちは、戦力的に、問題にゃいにゃん。」
「そうだろうな、ベスティアはなんでも居るからな。」
(((だよな・・・。))) (ドラゴンが何匹も〜)
「最終的には、一人残らず殲滅も可能にゃん。」
(((!! はははは・・・・)))
「・・流石だな。フィリアが身内でよかったよ、うん、本当に。」
「でもほとんどの国は、姫さまたちの力を知らにゃいにゃん。」
「そうだな、認識しているのは、我が帝国とザクセン王国くらいだな。」
「隣のブルーニュ公国もわかってるにゃん。」
「・・何かあったのか?」
「うんとね、何回かワイバーン隊が偵察に来てたから、1度全員捕まえたことがあるの。蒼と紫蘭が前に出たらワイバーンたちがひれ伏しちゃって。にゃは♡」
「・・超上位種だものな。」
「そのあと、ダンジョンに全員押し込んで〜。」
「み、皆、死、死んだのか?」
「うんにゃ。手助けしつつ、お宝をいっぱい持って帰らせたにゃん。」
(((ほっ・・・)))
「そ、そうか。」
「でね、法王国あたりが勇者召喚するんじゃないかって予想してるの〜。」
「皆、どう思う。」
「考えられますな。」
「あり得ることですな。」
「法王国のやつら、きっとそれに協力しろって言うんじゃないかって。お金とか魔術師をよこせって。寄越さない国には、勇者は助けに行かないと脅して・・。」
「! 確かに・・・。」
「ベスティアは、本来、協力の必要性はないにゃん。」
うんうん。
皆が頷く。
「そうだな。」
「でも、一応足並みは揃えるかって姫さまが。帝国と合同出資による協力ということにしたいって。全額ベスティアが出してもよいにゃん。だから二国でってことにしてほしいにゃん。お金、どのくらいいる?」
「うーん、金額か。皆の意見は?」
「そうですな、国家予算の半年分くらいでどうですか?」
「多くないか?」
「いや、文句のない金額の方が面倒ごとは起こらないでしょう。」
「・・・うん、うん、わかったにゃん。」
「鞠?」
「姫さまが帝国の国家予算の5年分を出資するって。いくらぁ?」
「「「「「!!」」」」」
鞠は、その金額を机の上に出し、帰って行った。
「「「「「・・・・。」」」」」
「いやはや、その金額をぽん、と。」
「ベスティア国は豊かなのですな〜。」
「小国だからこそ、経済がうまく回っているのでしょうな。羨ましいですな。」
鞠が話した内容と同じことをマミとミミは、テックに話していた。
ローがトランド国のレイに、ラナが夫のシャア(*)に。
(*)ベスティア(ミアーマ)国隣のブルーニュ公国、ワイバーン隊隊長
「アーフィン殿下、マミとミミから・・」
「公、妻から・・・」




