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143話:レイモンドと守護騎士たち


[トランド国]



レイモンドは、守護者のアーロン・エイベルとともに、両親の待つ国へ戻った。

もちろん、赤子姿でだ。


母のミーシャは、心から安堵し、嬉し涙を流しながら、レイモンドを強く抱きしめた。

そして、謝罪の言葉を何度も口にした。


レイモンドは、母の、我が子の手を離してしまったことに対する罪悪感と自身を責める言葉に胸が痛んだ。


母に強く愛されていると感じたレイモンドは、言葉をかけたくなったが、沈黙を通した。


ローガンから、言われたからだ。


「かわいい盛りの赤子のときは、あっという間に過ぎてしまうもの。親孝行と思って、赤ちゃんらしく無邪気でいたらどうかな。」と。


それは、難しいと考えていたが(つい、口に出てしまうもの。)今、こうやって母を目の前にしていると、頑張ってみようかと思った。


庇護すべき愛しい存在と、母が全身全霊で愛情を与えてくるからだ。



だが、父親の前では、ありのままの自分でいることにした。


アルフレッドは、レイモンドと守護者たちにただならぬものを感じていたからだ。

それで、アーロンとエイベルが事情を話すに至った。


最初、半信半疑だったアルフレッドも、流暢に話す息子と守護者たちの能力を見せられて納得せざるを得なかった。


「レイモンド殿下は、我らの何倍もの能力を有しておられます。」


「それは、我が国の将来が明るいな。」


「「その通りでございます。」」



レイモンドは、有事に力を出し惜しみする気はさらさらなかった。



男のためにミーシャを裏切った侍女の処分は、レイモンドとしてはどうでもよかった。

寧ろ、そのおかげで、ジンフィーリアや半端ない力を持つ者たちとも縁を持つことになったのだから。


ケイジやヴィオという親友もできた。



アルフレッドが、本当の自分のことを知っているので、ちょくちょくジンフィーリアの元へ行くことができた。


そもそも、国から一歩も出られないのであれば、帰国する気はなかったのだが。




[守護騎士:アーロン・エイベル]



<アーロン>


殿下の守護騎士という立場を賜ったことは、とても誇らしいことだった。


仕える主君が行方不明でなければ、もっと喜ぶことができた。


最初の任務は、レイモンド殿下を探し出すことだった。

殿下と一緒でなければ、トランド国への帰還は許されない。


連合国内の調査は、引き続き国の捜索隊が行う。

それ故、アーロンとエイベルは、外へ目を向けた。



幸運なことに、レイモンドと行方不明になっていた侍女を、ザクセン国でたまたま目撃したのだ。

そこからは早かった。


下手人たちの身柄を母国からやってきた騎士たちに、引き渡した。


そして、居を移した教会へ向かったのだ。


レイモンド殿下を置き去りにした教会の神父が赤子を抱いていたのを犯人たちが確認していた。


赤子状態なので、もしかしたら、どこかに養子に出されているかもしれない。

死亡率の高い男の赤ん坊なので、万一のこともあるかもしれない。


ドキドキしながら、孤児院の院長に尋ねた。



俺たちの前に現れた赤ん坊は、間違いなく探し人だった。

王太子殿下によく似ておられるので、確信が持てた。



ただ、小さき弱き存在ではなかった。


話したのだ。

ハッキリと滑舌良く。




<エイベル>



神父に抱かれている赤子が、アルフレッド王太子殿下の血を強く受け継いでいることは、疑いようがなかった。


レイモンド殿下を探し出せた事実に歓喜していた。

そして、月齢の赤子が言葉を発したという現実に思考が追いつかなかった。


しかも、そのあとすぐに、どこかへ強制的に移動させられてしまった。


転移によるものだった。


この能力を持っているものは、世界にもごく僅かなはず。

実際、俺たちが転移を実体験したのは初めてだった。



到着地は、不思議な世界だった。

俺たちの質問に対する答えは、その領域にいる師匠となった方たちからもらった。


だが、師匠たちにもわからないことはあった。



俺たちは、そこで長く濃い時間を過ごした。


力を得るための修行の中で、何度も死んだ。

そしてその都度、復活した。


死ぬことに慣れ、そのうち、簡単に死ぬことはなくなった。



現実とは時の流れが違うと聞いても、焦燥感はあった。

王太子ご夫妻がレイモンド殿下の帰還を待ち望んでおられるのだから。


それに、俺たちとは違い、子供の成長は目に見えて顕著だったため、年月の経過を強く感じざるを得なかった。



時が満ちて、俺たちは、その世界から弾き出された。


その世界がメインの空間だと教えられた。


鬼人を初めて見た。

炎雷という名の鬼人は、凄まじいオーラを纏っていた。


修業を終え、強くなったと自負していた俺も、彼のひと睨みで意識が飛びそうになった。

彼は、生まれながらにして『王』という業を背負っているのだそうだ。



ドラゴンをあんなに近くで観察したことも初だった。



一番感動したのは、妖精猫に会えたことだ。


実体があり、しかも、人間のように会話ができた。

こんなにも愛らしい存在がいるのかと心が震えた。




レイモンド殿下と母国へ帰ることができた。


特に、レイモンド殿下を抱きしめる王太子妃殿下のご様子に、胸が熱くなった。


王太子殿下は、ミーシャ様に比べると落ち着いておられたと思う。


だが、我らになんらかの違和感を覚えておられたようだ。

俺たちは、経験した力を披露することにした。


王太子殿下に納得していただけたと思う。

いや、認めざるを得なかったと思う。




帰国してからも頻繁に抜け出すレイモンド殿下に俺たちは同行した。

ハッキリ言って、守護騎士の俺たちよりも、殿下のほうが力が強い。


レイモンド殿下は、ジンフィーリア嬢にぞっこんのようだ。



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