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136話:トランド国とミーシア国



グミン国家連合という5つの国の連合体があった。


揉めごとは、武力で解決するという戦闘民族の集まりであった故、国同士の揉め事は武力で白黒を決めていた。


とはいえ、深刻な紛争に発展することは今までなかった。どの国も力が拮抗していたのだ。



数年前に2つの国が争い、勝敗が決まった。


勝ったマルサ国は、主張を通した。負けた国は、賠償金を払い、期間限定で王族を人質に出した。

人質に出されたのは、ミーシア国:12歳のミーシャ姫だった。


ミーシャ姫は、自ら人質に志願した。弟たちを行かせたくなかったからだ。


人質の姫がなし崩し的に妻にされてしまうこともないとは言えない。

ミーシア国としては、賭けであった。

マルサ国の王族との結婚は、回避したかったのだから。



ーーー




マルサ国の王太子は女好きであったが、ちょうど寵愛中の女がいた。

人質の姫が12歳と聞いて、わざわざ会いにいくことはしなかった。


ミーシャ姫は、静かに目立たぬよう過ごした。


流石に閉じこもっていては息がつまる。部屋から出るのは、夜の少しの時間だけだった。



王太子に寵愛された女は寵妃となり、男の子を産んだ。


ミーシャ姫の人質としての期限が終わろうとしていた頃だった。


王太子初の男児誕生と国を挙げてのお祭りムードだった。

共和国内の国もお祝いの使者を送っていた。




ーー




もうすぐマルサ国を去ることができる、とミーシャ姫は喜び、少し気が緩んでいた。


昼間に部屋の外に出て、偶々トランド国の使者に姿を見られることとなった。


(失敗した。でも、マルサ国の人ではなかった。大丈夫よ、ね?)




人質期間が満了し、国に帰る前のミーシャ姫の挨拶の場に、王太子もいた。


ミーシャ姫の姿をはじめて見た面々は、王太子筆頭に声を出せず固まった。


15歳になっていたミーシャ姫は、花のかんばせの可憐な美少女だった。


このような美少女を放っておくのはバカの所業だ、と、我に返った王太子は、姫の帰国に待ったをかけた。


それに異議を唱えたのは、トランド国の使者だった。


「すでに、自分とミーシャ姫との婚約は結ばれている、姫をミーシア国まで送ります。」

そう言い、姫を連れて場を辞しマルサ国をあとにした。




[ミーシア国]



ミーシャ姫のあずかり知らぬところで婚約が決まっていた。


トランド国の使者アルフレッドは、美しい少女を一目見るなり欲しいと思った。


どういう立場の少女なのかすぐに調べた。

自国に急ぎ文を送った。


アルフレッドの本気度を理解したトランド国王からも、ミーシア国に即、使者が遣わされた。


そして、ミーシア国王合意のもと、婚約が結ばれたというわけだ。




「もう、お父様ったら。私は国に帰ったらやりたいことが沢山あったのに。」


「トランド国から来た使者の話を聞き、ミーシャが幸せになれると思った。

それにミーシャが嫌がるなら、婚約破棄を受け入れると。」


「え。」


「婚約者がいなかったら、最後の最後に意にそまぬことになっていたかもしれんぞ。」

「それは、まあ・・・。」


「アルフレッド殿下は、優秀で人柄も申し分ない。だが、ミーシャが決めればよい。」

「お父様・・・。」



「私としては、ぜひ結婚していただきたい。ミーシャ姫がやりたいことはトランド国で叶えましょう。」


「トランド国からの祝賀の使者は、アルフレッド王太子殿下だったのですね。」


「はい。嫌々の任務でしたが、今となっては、祝賀使に命じられたことを感謝しています。

最愛を見つけることができましたから。」


ミーシャ姫は、真っ赤になった。



ーー




「そんなに早くとお考えか。」


「はい、ミーシャ姫が私の気持ちを受け入れてくださったら、すぐにでも結婚したいと思います。

姫に強く惹かれたのはマルサ国のものだけでなく、列国も同様でした。

あれほどのお美しさですから、無理もないとは思います。

横槍を入れられる前に、私の妻に、王太子妃となっていただきたいのです。」




ミーシャのことは、親の欲目ではなく、誰の目にも可憐で美しいと映るだろう。性格も明るく優しい。


ミーシャを手に入れる為に、余計な争いを起こされてはたまらない。

意にそまぬ相手と無理矢理結婚ということもあり得る。


アルフレッド王太子になら安心して愛しい娘を託せる。


今まで浮いた噂の一つもなく、婚約者もいなかったので、女がダメだとの噂もあったが。

理想が高かったのだな。


我が娘は、本当に可愛らしく美しいからお眼鏡にかなったのだろう。



ーー




「ミーシャ姫、性急なのは重々承知で、それでもお返事をいただきたいのです。

私は、あなたを誰にも奪われたくない。私のことがお嫌いですか?」


「っ・・。もう少し、もう少しだけ家族と一緒にいたいのです。アルフレッド様が嫌いというわけでは。」


「では、私と結婚してもよいと考えてくださっているのですか。」

「は、い。」


アルフレッドは、嬉しさに顔をほころばせる。



「では、こういうのはどうでしょうか。すぐにでも式を挙げて、正式に私の妻となったら、里帰りするというのは。勿論私も一緒にですが。」


「え・・?」



「あなたは、ご自分の価値を過小評価しすぎです。間違いなく、あなたを狙って争いが起きます。」

「そ、そんな、脅かさないでください。」


(ミーシャ姫が挨拶に訪れた時、欲にまみれた眼で見ていた者多数。

女性に対し、初めて心が動いたのだ。私の妻はミーシャ姫以外考えられない。)


「本当のことです。あまり時間がないでしょう。どうか、私の妻となっていただけませんか。」


「里帰り・・。」


「はい!お約束します。」



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