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125話:披露目


[ジンフィーリア:披露目の日]




すでに街の沿道には、都民たちが陣取っていた。


あの本のお姫様を一目見ようと、民衆がひしめき合っていた。


獣人も多くいた。今までのように遠慮がちな様子ではなく、堂々としていた。



子供たちには、お菓子のばら撒きがあると知らされており、スラムからも子供たちが沿道へ出てきていた。



観衆の中に(カイ・双子を売った)ザクセン国に店を構えている奴隷商もいた。


沿道のとある宿の2階の窓辺には、ジンフィーリアを買った奴隷商の顔も見られた。




王宮では、貴族たちが集まり皇帝が姿を現わすのを待っていた。


そして、例の令嬢はこの中にいるのかと、きょろきょろと視線を動かしては探している者もいた。


(カンタベル公爵夫人やパーマー侯爵たちのそばにはいないな。)



「静粛に。」


皇帝が姿を現し皇妃と席に着く。


続いて皇太子一家、カンタベル公爵・・・。


!!!


ジンフィーリアを見て貴族たちは驚いた。


まずは、容姿に。


(美しい!!)


(令嬢の周りが光っているような。妖精がとんで?)



そして、ジンフィーリアの瞳の色に。


!!!!!


(金の瞳!)


(あの瞳は皇族の血をひく証!)




(あの容姿、リリアンヌ様のお子に間違いない。)


(カンタベル公爵の実子だ!)



ジンフィーリアの確かな血筋を納得させられた後も彼女の姿から目が離せない。



(それにしても、なんとお美しい。)


(13歳とは思えぬ、白百合の如き美しさ・・)


(極上の宝石のようではないか。ゴクリ。)



口をパッカと開けて見惚れている者、あまりの美しさに固まっている者、不埒な考えを巡らす者と

様々であったが皆の関心は全てジンフィーリアに向けられていた。




場が、少し落ち着きはじめた頃、皇帝より、


息子ライルとリリアンヌが娘、予の孫娘、ジンフィーリアだとの声が響いた。



ジンフィーリアは、皆の前に出る。



可憐な美少女をさらに近くで見ることになり、また場がざわつき出す。



今日のドレスは、祖母のマリアが用意したものだ。マリアとライルが争いマリアに軍配があがったわけだ。


胸元の露出があるが、決して下品ではなく、むしろ清楚さを醸し出している。


派手さは抑えられているが質の高いものだと見るものにはわかる。


何よりも彼女にとても似合っていた。



普段彼女のそばで気楽に接している者たちも、ジンフィーリアの正装にはビビった。


このドレス一つで、雲の上の人になってしまったようだ、と。


マリアはそんな孫娘を満足げに見つめていた。


ライルもアーサーもクリスも感無量だった。



女性陣は素直に、ジンフィーリアの美貌に感嘆する者と、悔しげに見つめる者とに分かれた。




文官よりこれまでの人生・経緯が説明される。ジンフィーリアの獣人の弟妹たちについても触れられる。


ジンフィーリアを探し出した者にはこの後、恩賞が与えられると伝えられた。


ざわざわ



次に宰相よりジンフィーリアの功績が述べられる。



・ザクセン王国で起こったスタンピードで第1王子殿下たちを救った。


補足として、1800体のゾンビの中から、亡くなった第1王子の近衛騎士3人の遺品を持ち帰ったこと。

第1王子の近衛騎士2人に霊薬を与えゾンビ化を防いだこと。


スタンピードで傷ついた者たちを癒したこと。(ドラゴンブレスで炭化した腕と足も元通りに治した。)


ジンフィーリアに癒しの力があることに次いで、彼女を慕う人外の話にも及んだ。


神獣やドラゴンが寄り添っている。スタンピードの最終ボスを倒したのはそのドラゴンたちであること。霊薬を持っていたのは、それに由来することを説明した。



・ザクセン王国で疫病が発生し、救援要請が来た。


ジンフィーリア自らが疫病の蔓延する現場へ行き、原因究明の結果、感染症の事実を突き止め、事態を収束させた。


補足として、治療をし予後の世話を獣人の弟妹たちとし、心身ともに回復させたことを説明した。


ザクセン王国からは元キャンデック侯爵領がジンに譲渡されたと発表された。



このように癒しの力を持ち、慈愛の心あるジンフィーリアを探し出し助けたのは、5人の獣人であったことが言及された。


また、先のスタンピードにおいて、ドラゴンブレスを受ける彼女を身を盾にして命を救ったのもこの5人である。



「帝国の得難き宝を救った獣人の勇者4人には報奨金を与える。また勇者の長であるノワには、男爵位を授けるものとする。帝都に邸を与える。但し、領地はなく、代わりに俸禄を与えるとする。」



ノワたちが呼ばれ、皇帝の前に出、臣下の礼をとる。



「此度の働き、誠に大儀であった。今後は、ノワ・マイセン男爵と名乗るがよい。」


「はっ、ありがたく拝命いたします。」



皇帝は、ノワたちに近くに寄るよう言う。戸惑いながらもノワたちは従う。



「ここからは、フィリアの祖父として話す。

フィリアの命を助けてくれたこと、感謝してもしきれない。

そなたたちのお陰で、孫娘に会うこと相叶った。


多大なる癒しの力を持っている娘だ。これからも幾多のものが救われるだろう。

そなたたちの勇気ある行動で、命を救われたフィリアが助ける者は、そなたたちが救うも同然だ。

誇りをもってよい。」


「・・・もったいなき仰せにございます。」


後ろの4人は涙を堪えきれなかった。ノワも目を真っ赤にしていた。



「ノワ・マイセン男爵、ブラン、ロート、ラウ、ジャッロの5名には、ジンフィーリアの騎士となることを命ずる。」


「はっ。この命にかえましてもお守りいたします。」



ジンフィーリアが5人の前に立つ。


「ノワ・マイセン男爵、私の騎士・・これからも頼みますね。」


そして4人の名も呼ぶ。



皇帝の前を辞し、ジンフィーリアは5人を別室に案内する。


食事が用意してあった。目元に添える蒸しタオルも。



「パレードはこの後40分後、食事をとって備えてちょうだい。この果実水は、目によいの、先に飲んで。」


ノワたちは、素直に飲む。(小さな小さな希凰桃のカケラ入りだった。)



「私の騎士たち、警護を頼みますね。鎧と剣は収納に入っています。」



ジンフィーリアが去り、5人はタオルを目に押し当てながら、泣いた。



そして胸がいっぱいだったが、この後のことを考え、活力となる食事をしはじめる。

美味い。食べはじめると食がすすんだ。



食事がすみ、用意された白銀色の鎧を出そうとするとそのまま装着された。


尻尾も出ている。鎧の中に収めることもできる。剣は好きな武器に変えられるとメモが添えられていた。



そして、案内されたところには、5人が騎乗する馬たちがいた。






別室に食事を用意したので、皆気楽にするようにと言われ、呆気にとられていた貴族たちは我に返りぞろぞろと移動した。



ワインを飲み一息ついた者や、まだ事態が飲み込めていない者もいた。


冷静な者は誰一人いなかった。



ライルは、ジンフィーリアが感嘆の眼差しを向けられているのを上機嫌で眺めていた。

クリスやアーサーも同じだった。




段々と我にかえる者が増えていき、ザワザワとし出す。


獣人が貴族の仲間入りをした!この事実に意見が飛び交う。


声高に言及している者たちもいたが、次第に話題は、ジンフィーリアのことになっていった。



「あの瞳!誰だ?父親がわからない平民娘と言っていたのは?」


「生まれながらの貴族のような所作、そしてとても上品な令嬢ですわ。」


「とても山猿には見えなかったわ。どなたが仰ったのかしら?」




(すげーなジンは。ここぞという時に補正が入る。)


(普段は、超適当なのに。)


(礼儀作法・王族の気品も実は姫様の力の一部ですよ。)




「ジンフィーリア嬢の爪、キラキラしてきれいでしたわね。リリイでされたのかしら?」


「リリイのオーナーは、そのジンフィーリアですよ。」とジョゼ。


「隣のラベンダもね。使用しているタイガ商会の入浴剤も製作に関わっているのは孫娘よ。」とマリア。



ご婦人連中は、その事実に目を丸くする。


「まあ、多才なご令嬢なのですのね。」



貴族子女の中にも例の本を読んでいた者は多い。

予言書のように思えた。



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