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124話:譲渡


ジンが描いた漫画本『獣人騎士とお姫様』は、可愛らしいお姫様とカッコいい獣人騎士の表紙が目を引き、つい手にとってみたくなるものだった。


そして、読み始めると止まらなくなり最後まで読んでしまう。読み切って終わり、とはならずその場で購入され、何度も読み返されるという人気ぶりだった。



ハッキリとした色恋の会話はないが、ノワールやお姫様の表情で2人が思い合ってると読者にはわかった。



「ノワール達がお姫様を探し当てた時、ノワールがお姫様に一目惚れしたのよね、あの表情!たまんないわ!」


「身分違いとわかっているから、決して気持ちを言わないけれど、ああ〜ノワール〜、あんな切なそうな顔して〜キュンキュンする〜。」



「王様は娘のことを愛しているから、ノワールとの結婚を許すかもよ〜。続きが気になるわ。」



「獣人が貴族になるなんて、実際はあり得ないけれど、夢を見たっていいわよね。」

「お姫様の騎士5人が獣人。同じ獣人としてなんか嬉しいな。」



「神獣様たちの人化した姿、素敵〜!」


「ちっちゃなドラゴンたちも可愛いわ。」


「お姫様たちの弟妹ちゃんたちもカワイイわね〜。天使ちゃん。」



読者は増え続ける。


男性も漫画本を読んでいた。恋人にすすめられたり、鈴蘭亭で何の気なしに手にとって読み始めたりと。



ラベンダとリリイ、カラフルの待合室にも置いてあり、あら、と読み始める。

途中で風呂や爪の装飾、試着に案内される為、後ろ髪引かれる思いで、本を置いて、接客を受ける。


続きが気になってしょうがないので、サービス中に話題に出すと、当店でも購入していただけます、と言う。当然購入して帰るという流れであった。


鈴蘭亭でも、受付で買えるようになっていた。


エース兄弟が挙式した教会にも置いてあった。


シスターライザのいる帝都の孤児院でも購入できる。売上は全て孤児院の収入にしてとジンフィーリアは伝えていた。



王都でも、商業ギルドやカラフル、カランコエで購入できた。



購入していたのは、獣人だけではなかった。


そのうちに、『獣人騎士とお姫様』のモデルは実在すると噂されるようになる。


そして、お披露目パレードの当人がこのお姫様だと、それは事実であると、あっという間に広まっていくのである。








帝国の譲位式には、各国が招待されていた。


その中でザクセン王国一行だけが10日前から帝国に滞在していた。


外交使節の中にはアーフィン第2王子の姿もあった。




ザクセン王国一行とジンフィーリア側で場が設けられた。



王国の外交官が、儀礼的に第1王子達の命を救ってくれたことに謝意を述べる。


近衛騎士2人に霊薬を使用してくれたことにも触れる。


ジンフィーリアは、第1王子の了解のもと霊薬を与えたに過ぎないと伝える。

勝手にやったことではないとさりげなく主張したのだ。



そして、サブマ領から発症した疫病の収束に甚大なる貢献をしてくれたこと、国をあげて感謝していると帝国に対しても礼が述べられた。

こちらの件に関しては本気でジンフィーリアに感謝していることが伝わってきた。


アーフィンも謝意を述べる。



ジンフィーリアは、此度の疫病に対し、資料を渡す。


今回は私の魔法が役立ったが、未来は、わからない。又同じ疫病が蔓延するかもしれない。

その時に備えて、薬の開発をしたらどうかと提案した。


子孫の助けになるべく研究結果を残すべきではないかと伝えた。

ザクセン王国側は、ありがたく受け取った。



そして、ザクセン王国:元キャンデック領は正式にジンフィーリアの領地となった。

ジンフィーリアの弟妹達にも謝礼金が渡された。




王国が、直接ジンフィーリア個人に譲渡したのには思惑があった。


領の2/3は、彷徨える森を含む役に立たない土地であるので痛くもかゆくもない。


残り1/3は、将来、王国へ返還させたいと考えている。


その場合、持ち主が一個人ならば容易い、と。



「噂では、ジンフィーリア嬢の婚約者殿は婚約を嫌がっているとか。我が国の王子との婚約はいかがですかな。」などと言ってきそうな雰囲気だった。


実際、アーフィン王子を焚き付けていたようだ。




ジンフィーリアは、一旦帝国に土地を譲渡され、その後、下賜という流れは好まなかった。


帝国内貴族に妬まれることは当然望まない。面倒くさいと思った。


建国して、のちに帝国の属国となったり、又は吸収されてはたまらない。


キラの次の皇帝は、信用ならないと思っている。




「シールの将来はどうなりそうですか。」


「以前そちらから頼まれたように、伯爵家以上の家に婿入の予定だ。」


「そうですか。」




元キャンデック領の街には、領主が帝国の貴族令嬢となったと告知された。


親交のあるギルマスは、驚きながらもあの姫さんならこちらは、その方がやりやすいと思ったようだ。



国に属さない領地は、誰もが取り放題だ。


領民は、どう動くだろうか。不安にかられ、他の領地へ逃げ出すだろうか。






「そうか、決心してくれたか。」


「実は、お話を聞いた時から、受けるつもりでした。」


「・・フィリアが喜ぶよ。」ライルは嬉しそうに笑った。



(やはり、今回のことは姫様が。でなければ、いくら功績を積もうと一介の獣人が爵位を与えられるなど

あり得ないこと。しかも我らは、貴族令嬢を助けただけで、国に貢献したわけではない。)



「それと、以前キャンデック侯爵領だった場所は、すでにフィリアの領地だ。」


「!!!」



「フィリアは、その土地で建国するつもりだ。獣人の国を。これからもフィリアを頼む。」


(なんと!!)


「・・はい!」

(胸がいっぱいで、言葉が出てこない。返事をするだけで精一杯だ。)



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