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123話:絵本ではなく


とある本が庶民の間で人気となっていた。


それは、全ページが絵の本であった。





私たちは半年前、住んでいたアパートが火事になり逃げ遅れた。獣人だからと後回しにされたの。


助けられたけれども妹は目に火の粉を浴び、失明してしまった。


明るい性格だった妹は塞ぎこむようになり、私がたまには外に出ようと誘っても部屋から一歩も出ようとしない。



数日前、ある本を手に入れた。友達から聞いて、妹に読んであげようと思ったのだ。



「ねえ、お姉ちゃんが本を読んであげる。」

「いらない。」


「あのね、生まれつき目が見えなくて口もきけないお姫様の話なの。」


「・・目が見えないの?」


「そう。でも12年後に見えるようになったの。」


「・・見えるように?私も見えるようになる?」


「このお姫様は本当に居る人なんだって。もう少ししたら、お姫様のお披露目のパレードがあるの。おねえちゃんがお姫様に頼んでみる、妹の目を治してって。だから、元気出して、お願い。」


「・・お姉ちゃん、読んでくれる?」





「この本は、文章というよりほとんど絵で、会話で話が進んでいくの。だからお姉ちゃんが物語にするわね。下手くそでも許してね。」



むかし、むかし、ある国にお姫様が生まれました。お姫様のお母様は、お姫様を産んですぐに亡くなってしまいました。


このお姫様は生まれつき目が見えず話すこともできませんでした。


王様は、そんなお姫様を大事にしておりました。



ところが、お姫様が1歳の誕生日に拐われてしまいました。


王様は、一生懸命お姫様を探しましたが、見つかりませんでした。



「この本は、ほとんど絵なの。色が付いている絵もある。お姫様は金の髪。」


「目の色は?」

「目は閉じているからわからないな。続きね。」



お姫様は、拐われてから12歳になるまで、一度も外に出してもらえず閉じ込められていました。


(・・そんな長い間・・・かわいそう。)


誘拐犯は、お姫様が年頃になったら金持ちのひひジジイに高く売るつもりでした。


お姫様は、自分が何者か分からず家族がいるのも知りませんでした。


王様は、10年以上経っても諦めずお姫様の捜索を続けていました。


ある時、王様は城を出て自分でお姫様を探しに行きました。

道中、曲者に殺されそうになりましたが、王様は偶々通りかかった人たちに助けられました。


王様を助けた5人は全員獣人でした。


王様はその5人に感謝すると同時に、曲者を倒した腕前にも感心しました。


王様は人間でした。この5人ならば、身体能力が高く感のいい獣人ならば、姫を見つけてくれるかもしれない。そう思って5人を家来として雇いました。5人のリーダーはノワールという名前でした。


その頃、お姫様は急に目が見えるようになりました。同時にお姫様の前に、金銀の神獣様と赤青の小さなドラゴンが現れました。



「お姫様の瞳は金色よ。髪と同じ。神獣様たちはかっこよくて、子ドラは可愛いわ。」



別の場所で監禁されることとなったお姫様は、獣人の子供4人と出会いました。女の子1人と男の子3人でした。


お姫様はその獣人の子供たちを自分の弟妹としました。


その4人のことが大好きなお姫様は、なぜ自分には耳と尻尾がないのだろうと、残念に思いました。


お姫様は獣人が大好きでした。


そして、獣人たちが差別されていることを知りました。


そんなのおかしいわ、獣人たちはもっと評価されるべきと思いました。


同時に、獣人たち自身が、差別されることを仕方がないことと諦めてしまっていることを知り、とても悲しくなりました。



王様の家来となったノワールたちは、怪しい家をしらみつぶしに調べました。


そして、とうとうお姫様を見つけることができました。王様とよく似ていたので一目でお姫様とわかりました。お姫様はまだ12歳でした。ノワールたちは短期間でお姫様を探し出したのです。


10年以上諦めず探し続けた王様のことを思い、王様を喜ばせることができるとノワール達は嬉しくなりました。


ノワールたちは、大切に大切にお姫様を守りながら、王様の元へ。


王様はお姫様を抱きしめ、嬉しくて泣き続けました。



ノワールたちは、王様とお姫様にとても感謝され、お屋敷とお金をもらいました。


その後も王様の願いで、影からお姫様を守っていました。



ある国で魔物の大発生が起きました。その討伐に、獣人たちが強制的に行かされました。


それを知ったお姫様は心配して、王様に内緒でその現場へ行ってしまいました。

ノワールたち5人もお姫様の後を追いました。


獣人たちは勇敢に闘い、魔物を倒していました。お姫様は、ハラハラしながらその様子を見ていました。



最後のボス、ドラゴンが出てきました。これを倒せば討伐完了です。


そのドラゴンがブレスを吐こうとした時、1人の獣人が足を取られ、転びました。

お姫様は、とっさに駆け寄ってしまいました。


ドラゴンがお姫様に向かってブレスを吐く寸前、ノワールたち5人はお姫様を守るべく自分たちの体を盾にしました。ドラゴンブレスを浴びたら消し炭となって死んでしまいます。


それなのに、お姫様を助けたくてドラゴンの前に思わず出てしまいました。


ドラゴンブレスが発射されました。


5人は死を覚悟しましたが、奇跡が起きました。


ノワールたち5人の力が5角形の盾を空中に作り出しました。


それにブレスが当たり、盾からはね返ってドラゴンに命中しました。

ドラゴンは死にました。



こうして、魔物たちは、獣人たちによって討伐されました。


王様は、ノワール達に心より感謝しました。そしてお姫様の獣人を思う気持ちをわかっておりました。



ある国で、疫病が流行りました。


獣人達の治療は後回しにされ、放置されておりました。


それを聞いたお姫様は、疫病蔓延るその国へ行ってしまいました。

ノワール達は、自分たちも疫病が移って死んでしまうかもしれないのに、お姫様を追いました。


お姫様は、病人の体とベッドを清潔にし、自ら食事を作って食べさせました。


お姫様の弟妹4人も病人の世話をしました。



疫病が落ち着いた頃、お姫様は国へ帰りました。

弟妹達もノワール達も無事でした。



お姫様は13歳になり、国民達にお披露目の日となりました。


王様は、家臣や国民の前でノワール達に言いました。

お姫様を探し出し、何度も危険を冒し守ってくれたことに感謝していると。



この日、ノワールは王様より男爵位を与えられました。

獣人が貴族となったのです。


そしてノワール達5人は、お姫様の騎士となりました。



<つづく>



「どうだった?」


「・・お姉ちゃん、私、外に出る!お姫様のパレードを見られなくても感じたいの。」



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