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11話:ナーナ・ニーナとカイ



ジルバが戻ると、ジンフィーリアたちの馬車は、スラム街に近いとある家の前に停まっていた。


楓が二人の少女を連れて馬車に戻ってきた。

『よし、帰るぞ。イーグ、帰りは行きとは別の宿に泊まる。』

「宿が近くなったら私が御者を代わります。」と楓。

楓が連れてきた少女は姉がナーナ、妹がニーナと名乗った。



昨日、教会で起こったこと。


楓は、魔力測定器がどれほどの魔力量を測れるのか興味津々だった。

こっそり見た測定の予約表には、予約キャンセルの文字が。

それで、そこそこ発言力のありそうな教会関係者に狙いをつけて、ちょっぴり魅了も使いつつその空いた枠を確保した。


待合室にて、「いやです、測定は受けません。」と少女の声が聞こえた。

以下、やりとりを聞いてわかったことだ。


・人と獣人族のハーフで町娘。(見かけは人間。)

・どこかの商人のお抱え魔法士が娘を見て魔力量多しと断言。それを聞きつけた商人が娘を無理やり教会に連れてきた。

・国や教会の管理となれば、残った病気の妹(外見 : 獣人)がロクなことにならないのは、火を見るよりも明らかなので測定を拒否したい。。


そして、これはジンフィーリアたちが知らなかったことだが、魔力量が多い者を見つけたものには多大な報奨金が出るらしい。そしてその者の筆頭後見者となれる。後見者は色々と優遇されるらしい。



楓の番が来て、呼ばれ待合室を出た。

測定器の前に立つ。

両手で測定器を掴み、手と手の間に魔力を溜めるイメージで、と言われた。


今の楓の力はこちらに来てからは、全力とは程遠い。

が、一応今の力の1割弱くらいを込めてみた。


測定値には目盛りがついていて左側から右側へと勢いよく線が動いていく。

あ、振り切れそうと思った時には遅く、パーンと音が鳴って測定器は粉々になった。


まずい、と思い、混乱の中、即、身を隠した。

宿にすぐ帰らなかったのは、先程のハーフ娘が気になったからだ。


しばらくして待合室にも測定不可との知らせが来て娘は解放された。

監視付きではあったが。


娘が帰宅すると同時に娘の目前に現れた楓は、驚かれながらも一緒に来ないかと誘ってみた。

ナーナは迷っていたがニーナが「私だけでも行く。そしたらお姉ちゃんは自由だ。」と言うと泣き崩れた。


「違う、ニーナと離れることなんて考えられない。

ニーナが居てくれるから生きていける。ニーナが居ない日常なら要らない。」と言い、楓との同行を決めた。


明日夕方迎えにくるから荷物をまとめておくように。思入れがあるものなら大きい家具も持っていけるからと言いジンフィーリアの待つ宿に戻った。



補則 : 魔力測定器は修繕不可能で、一から作るので時間がかかる。今度は壊れないように、そして、今まで以上の魔力量が測れるものにするそうな。



* * *



ナーナとニーナにも洗浄魔法がかけられ、楓から下着とワンピースを受け取った。


宿の選定は楓に一任した。



[ジンフィーリア視点]


1軒目の宿は、女将が獣人だった。

よかった、双子たちとナーナ姉妹が快適に泊まれる。


ニーナは、虚弱体質だった。

希凰桃が手に入るまでは、食事・運動療法で様子を見よう。


ゴウル・ジルバ・ラース・カイと私は、馬車で過ごした。

護衛たちは反対したが、ゴウルが我らがいれば大事ないと言い張り、2姉妹の護衛を頼んだ。


馬車に残ったのは、カイが目覚めた時に暴れることを考えてだ。宿に迷惑をかけたくはないし、あれだけの酷い目にあったのだから人が信用できなくても仕方ないと思っている。こちらは、I Love 獣人♡、なのだが。


私たちの食事は、馬車へ運んでもらった。

カイの食事は重湯でお願いした。

カイは眠り続けている。ひどく弱っているが今のところ命に別状はない。

とりあえず寝るかということになり、寝台のベッドを繋げてWベッドとし、カイの横に4人で転がった。

寝巻き(ジルバチョイス)に着替えたのは私だけだった。


夜中、「ここは・・。」と声が聞こえた。カイが目を覚ました。

『体は、どうだ?痛いところはあるか?』といつになく優しいゴウルの声が暗闇から聞こえる。

『まずは、水分を摂って、粥を食え。話はそれからだ。』ジルバも極力穏やかに話しているようだ。


獣人は夜目がきくから落とした照明で十分だろう。ずっと暗いところに押し込められていたことだし、徐々に目を慣らさないと。


カイが体を起こすのを手伝い、水に砂糖・塩・レモンを混ぜたものを飲ませた。

美味しかったようだ。体に染み込むうまさと言う。


ベッドの上側部分を立たせてカイが食事をしやすいようにした。

熱々のおかゆをバングルから出した。

片手が使えず弱っているので、フーフーしながら少しずつ口に運んでやる。

粥を完食後、すったリンゴを食べさせた。


「ヒュ、ヒュイ。」ラースも起きてしまった。

ラースのまん丸な黄緑の目を見て、カイが噎せる。


『大丈夫か。』と声をかけながらゴウルが肉球でカイの背中を優しくさする。

「あ、ありがとう。」と振り返りゴウルを見て固まる。

『獣人なら俺らのこと受け入れやすいんじゃ?』とジルバがニヤリとする。

「は?」


『お、ラースはおっぱいがほしいみたいだ。飲ませてやれ。』

口がミルクを飲むように動いている。

ラースを横抱きにして、バングルからミルク入り哺乳瓶を出し口に含ませてやる。

んくんくと一生懸命飲んでいる。途中から眠り飲みとなった。

なんとかゲップをさせ、寝かせて額にキスを落とす。



照明を少し明るくする。


「それは、何の動物だ?」

『カイも知らんのか。』

「ああ、見たことがない。(あ、俺の名前・・?)」


『王立図書館で図鑑を見たがわからなかった。この子はラースだ。我はゴウル。』

『ジルバだ。』

そして、カイはジンフィーリアを見た。


『彼女はジンだ。(今は)話せないが我らと念話ができる。』

ジンフィーリアが微笑む。

(彼女の周りに白い花々が見えた気がした。黄金の美少女だ!

そして、エロい。白い胸が半分見えている。 注 : カイ心の声)


『そろそろ眠るがいい。目覚めたらまた話そう。』

俺はベッドを水平に戻してもらい、すぐ意識を手放した。

わからないことだらけだが妙な安心感があった。









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