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115話:夜中の会話


<親友同士の話>


「人を見て態度を変える者より、ある意味好感がもてる、

とヒス妃をもちあげる(?)ようなことを言った後に

母親の悋気が酷く、その母親が亡くなるまで結婚しなかった人を知っている、と言ったんだ。

そしたら、なぜか皆が黙ってしまって。」


「あはははは。俺もその場に居たかったよ。」


「ローは笑うんだ。」



「それで、途中で逃げてきたと?」


「そう、体を締め付ける衣装も嫌い。もう着ない。今後は、自分の創作ドレスで出てやる。

とても疲れた気がする。」


(口調が、いつもと違う。ジャスティンと話してるようだ。よっぽど苦痛だったんだな。)



「リア、今日は一緒に寝ようか。」


「本当?嬉しい。ヴィオとケイジもあとで連れてくる。」


(ローとは気兼ねなく会話できるから、楽だ。言葉遣いも気にしなくてよいし。)



(リアは惜しみなく愛情を与えるけれども、その相手にそっけないところも見せる。

昔、リアのことを水臭いと言ったのは、私だったな。


私は、他人行儀なところが辛くて思わず言ってしまうことが度々あったが、もう一つの意味で捉えていたな。敢えて否定はしなかったが。)



ーーー



夜、ヴィオ・ケイジとローのベッドで眠った。


ヴィオは、私の胸の上でうつ伏せになって眠っていた。


「うっ・・、やめ、やめろ。・・・やめ・・」


ケイジが魘されている。


ローも目を覚ました。


ヴィオをそーっとベッドへ下ろし、ケイジを抱きしめようとした。


「やめろ!!」そう叫んだ瞬間、ケイジが目を覚ましガバッと体を起こした。


私もローも起き上がり、ケイジを抱きしめる。



ローがホットミルクを用意し、ケイジが飲む。幾分か落ち着いたようだ。


ケイジがぽつ、ぽつ、と話しだす。


「母さんは、生活の為に、体を売っていたんだ。

母さんは人間で、父さんも人間だったって。」


2人は、ケイジを抱きしめながら、無言で聞いていた。



「でも、俺が生まれて・・・母さんは、あなたの子よって言ったけれど、

父さんは俺の子じゃないって叫んで出ていったきり帰らなかったって。」


(どちらかに獣人の因子があったのね。)

(そうだろうね。)



「ある日、母さんの客だって言うやつが突然家にやってきたんだ。

一人じゃなくて、酔っている奴らが3人入ってきて、か、母さんを・・・・。」


「辛いなら無理に話さなくていいんだよ。」ローが優しい声で言う。


ケイジは首を振って、「胸がく、苦しくって、誰かに言ってしまいたい・・。」


ローが頷く。


「あ、あいつら・・母さんに襲いかかって、か、母さんが子供の前でやめて!って叫んだら、

お、面白がって、わざと俺に見ろって、見ないと母さんを殺すって・・・。


か、母さんがぐったりして動かなくなったら、母さんの首を絞めたんだ。は、反応がないとつまらないって言って・・・お、俺、何にもできなくて、ただ、そこにいただけで。


あいつらが、いなくなって、母さんのそばに行ったけれど、もう、か、母さんは・・」


そう言ったあと、ケイジは慟哭した。


私はケイジを抱きしめながら、そのクズどもの顔を見た。ケイジの記憶から、ハッキリと。



ーーー



ケイジが泣き疲れて眠りについたあと、ローと静かに話した。


(昼間は思い出さなくなったけれど、夜になると・・眠るのが怖いと言っていたわね。)


(ああ、俺がいなければ、母さんも仕事を選べたのにとも言っていたね。)


(一体いつまで、苦しまなければならないのかしら。ケイジは何も悪くないのに。)



(いつまで、か・・。俺たちは生まれ変わってもまだ・・。)


(ローが、似た人生を繰り返している、と言ってたでしょう?)


(うん。それが・・?)


(思ったのだけれど、あいつがこの世界に生まれ変わっているとしたら?)


(まさか!そこまで執着していると?)


(もし、もしもよ?いるとしたら!あいつの思惑なのか、仕返ししてやる!という私の意思なのかわからないけれど・・・。言っておくけれど、私はそれをわざわざそれを望んだりしなかったわよ。)


(わかっているよ。)


(あいつがいないなら、それはそれでよいわ。クロウの幸せを見届けることさえできたら、私はきっと、

終われる。)


(リア?)


(ケイジは、大切な人が目の前で壊されていくのを見せつけられて・・・。そのことで心に酷い傷を負ったけれども。・・私のように自責の念に駆られている思いのほうが強いのかもしれない。

子供だから、守られるのが当然なのに。力がなかったら母親を助けられなかったと思って、その気持ちが、終わりのない夢を見させているのでは?

見ているだけしかできないって、とてつもなく、しんどいわ。


であれば、今からでも力をつけて復讐すればよい。私は、力をつける手助けをする。

ケイジが納得する力を得、その時に復讐を望まないと言うならば、私が奴らに罰を与えるわ。


酷いことをする奴って、自分が同じことをされないとわからないと思う。

それに、野放しにしておけば、被害者が増えるだけ。)


「リア。」


私はローに抱きしめられてしまった。



ーーー



リアの寝顔を見て思う。


傷ついているのは君もだ。助けられなかった自分が許せないんだね。


クロウが逝ったあと、努力する君を見て驚いたよ。以前の君を知っているから、余計にね。


そこまで想われているクロウが羨ましいよ。


クロウが悔しいと言ったのは、もう君と過ごせないことに対してだよ。


仕返ししてと言ったのは、自分の為に君を死なせたくなかったからだよ。



リアも、本当はわかっているんじゃないのか?



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