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10話:喋る猫が配達した手紙



第2王子の近衛騎士長の部屋へ、ジルバは忍び込んだ。


騎士長が机で書類作業をしていたのでそばへ行き、手紙を机の上に置き前足で彼に差し出した。

騎士長は目を丸くしてジルバを見つめた。


『騎士長が目を通してからテックに渡してほしい。』とジルバが言うと、騎士長は、さらに目を大きく見開いた。



ジルバが消えると、騎士長は夢をみたのかと思いながらギュッと目を瞑った。

そして目を開けると、喋る猫が持ってきた手紙が確かに存在していた。


恐る恐る封書を開ける。

騎士長とテック宛だった。


・マミとミミは本日保護し、今からキャンディック侯爵領の領地別荘に向かう

住所 : _____________


・私はキャンデック侯爵家の預かりとなっていて監視されている。この別荘では3年近く世話になっている。

今回魔力測定で王都に出向いたが本日測定器が壊れ測定できなかった。速やかに戻るように言われたので帰る。


・奴隷商は私の素性を知らない。


・私は12歳だが双子のことは、必ず守る。


以上を踏まえて、余計な調査をしないでほしい。下手したら別荘を出ることになる。

どうか藪蛇にならないように頼む。


そちらの疑問は、会った時に話せることは話す。

金のことはよいから双子に会いに来てやってくれ。



まとめるとこのような内容だった。

最後には、『私は嘘偽りないことをここに誓う。ジンフィーリア』と誓いの言葉とサインが。

そして双子の売買契約書の写しも入っていた。




「そうだ、そうだった。」

今日が双子の預かり最終期限だったことを思い出した。



テックを呼びにやった。

しかし、出掛けた後だった。

おそらく奴隷商館に行ったのだろう。どうするか・・・。


その後、事情を知っている部下を呼び出し、テックを探して連れてくるよう頼んだ。


部下が同僚のテックを見つけるべく奴隷商館に向かう途中で、負のオーラを撒き散らしているものを発見した。テックだった。

この世の終わりのような顔をしていた。

騎士長が呼んでいると伝えると、ばっと顔を上げ、足早に向かっていった。

部下は置いていかれそうになり、必死に追いかけた。



「騎士長!!」と叫びながらバーンと扉を開けてテック参上。

「ノックくらいせんか。」

「あの!!」


「よいか、落ち着いて聞けよ。双子は無事らしい。」

「いいえ、誰かに売ったと!」

「ああ、そうだな。とにかく、これを読め。」



読み終わったテックから騎士長は質問責めにあった。

「おい、おい!いいから落ち着け!」

テックは肩を掴まれ、椅子に座らされた。


騎士長が入れてくれたお茶を飲む。

「取り乱してすみませんでした。」


「ああ。それで、これを誰が持ってきてくれたかだったか。」

「はい、まずはそれをお聞かせください。」

「おまえは信じないだろうが・・。」と小声で言った。

「何を。尊敬しています。獣人だからと馬鹿にされる俺に目をかけてくださって感謝しています。

騎士長が言うことなら信じます!」


「本当か?嘘つくなよ。」

「信じます。」

「なら、話すが・・。人語を話す猫が持ってきた。」

「・・・・・。」

「・・・・・。」


胡散臭そうに騎士長を見、すぐ首を振って

「元気付けようとしてくれてるんでしょうが・・。」

「違うわ!!」

しばらく男同士真剣に見つめ合う。



そこに第2王子がひょっこり顔を出す。

ドアが開いてるから覗くと、二人が顔を近づけて見つめ合っていた。

(これは、どんな状況だ??ち、近いっ顔が。)


王子の従者ライはラチがあかないと思い、

「え〜、よい雰囲気のところをお邪魔して申し訳ありませんが、アーフィン殿下がお越しです。」

「「!!」」


「おまえたちって、その、そうゆう関係なのか?」

「「違います!!」」

「あ〜、そうだよな?」


気を取り直して騎士長が「殿下、本日はどうなされましたか。」

「遊びに来ただけさ。」


「殿下!」と従者ライに小突かれる。

(王子が小突かれ・・よいのか?)(注 : テック心の声)


「その、今日が期限だっただろ?テックの・・。王子とは名ばかりで、何もできなくてすまない。」

「! そんな、謝らないでください。」


(テック、このジンフィーリア嬢の手紙、殿下に見せても?)

(そうですね、殿下のおかげで即売されずにすんでいたのですから。)ヒソヒソ話中。



「殿下、こちらをご覧いただけますか。」

「ん、なんだ?」


アーフィンは読みかけ、ライにも見せてよいか聞く。

同意を得て、ライと二人で読みすすめる。


「で、手紙を持参したのが話す猫、と。」

王子は顎に手をあてて思案する。



「金の聖女は知っているな?」

3人とも頷く。


「なぜ『金の』と呼ばれたか知っているか?」

「見事な黄金の髪の方だったからだと。」ライが答える。


「それだけじゃない。瞳も金色だったそうだ。」

「えっ?金色の瞳なんて聞いたことがありませんが。」

「いや、そうでもない。どこぞの王族には金の瞳を持つものが生まれることがあるそうだ。珍しいには違いないが。」


「瞳から話が逸れたな。金の聖女には金の聖獣が付き従っていたそうだ。その聖獣は人語を解したと言われている。」

「「なっ!」」


「曽祖母から聞いた話ですが、獣人の里にも昔は聖獣様が居て里を守っていた、と。意思の疎通もできていたそうです。・・御伽噺と思って聞いておりましたが。」


「ジンフィーリア嬢に俄然興味が湧いてきたぞ。ライ、キャンデック侯爵の子息は確か・・。」

「はい、殿下の通う王都学院の1年生です。」


「もうすぐ学院は夏休みに入る、その前に全学年合同での林間学校がある。その時に、だ。キャンデック侯爵子息を丸め込んで別荘に招待してもらおうではないか。」


「うまくいったら、別荘への護衛に当然近衛も同行する。テックと双子たちを会わせてやれる。」

「殿下。」テックは感動して、涙を堪えた目で頭を下げる。


(いやあ、殿下はジンフィーリア嬢としゃべる猫に会いたいだけですよね。)








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