105話:ロー&リア
ジャスティンとジェイだった私たちは、現在の名で愛称呼びし合うことにした。
リアに連れられ、転移した先には・・・。
な、ここは、何もなかったはず。
建物の中に入った。圧倒された。
子供たちは転移と建物に驚きながらも、はしゃぎだした。
懐かしい瑠璃も来てくれた。
子供たちの食事と入浴の世話をしてくれると言う。
私にも食事をと言ってくれたが、もう胸がいっぱいで、リアと一緒にとると言うのが精一杯だった。
3階には、私の居室があった。
神父服がかけてあった。
リアの手作りだな。
つい数時間前まで、先の不安にどうしていいかわからず途方に暮れていたのに。
こんな、いきなり、こんな・・・。
涙が出てきた。
安心できたのとリアに会えた嬉しさと、この現状に対し感謝でいっぱいで。
先の人生で巡り会えた幸せが、今生の私をも助けてくれる。
リアが戻ってきた。
私が泣いているのに気づき、赤子を寝かせた後、抱きしめてくれた。
優しく、頭を撫でてくれる。
優しく、優しく。
私が落ち着くと、食事を出してくれた。
そのまま部屋で一緒に食べた。
「おいしい。」と言うと嬉しそうな顔をした。
二人でワインも飲んだ。
リアは一旦席を外し、すぐに赤子を連れて戻ってきた。
「ロー、お風呂に入りましょう。お互い赤子を抱いて。」
「そうしょうか。」
「ところで、その赤子の名前は?」
「まだ決まっていないんだ。リアがつけてくれないか?」
「・・では、レイと名付けるわ。」
「うん、いい名前だ。」
「子供たちの服は用意してあるから、ローは自分の支度だけをしてね。私のも収納に入っているから。」
4人で一階の風呂へ向かう。
ーーー
「ロー、レイのオムツに気がついた?」
「え?」
「上がってからでいいわ。我ながらよいことを思いついたと。」
「ところで、リア、まさか一緒に入るとは思わなかったよ。」
「なぜ?」
「なぜって、いや、いいよ・・。」
「スライム風呂いいでしょう?楽ちんで。」
「うん。」
「例えば、子供がお風呂でツルッと滑ってもスラちゃんが助けてくれるのよ。」
「へえ。それは安心だ。」
「桂、いらっしゃい。」
「はい、姫さま。」
「これからは、このローに仕えてちょうだい。」
「かしこまりました。」
「・・・。」
「ロー?」
「いや、今日は本当、色々あり過ぎて、感慨深い。(夢だったらどうしよう。)」
「ふふふ、早めに寝ましょうか。明日は一緒に商業ギルドに行くわよ。」
ーーー
[ローの居室にて]
「いやあ、ほんとスラオムツには驚いたよ。」
(なんだか申し訳ないような、気の毒なような。)
「ちゃんと、気持ち悪がって泣いてからキレイにするようにと言っておけば、賢い桂はそうしてくれるのよ。この土地全体に桂の分身体がいるから、掃除しながら防衛まで担ってるんだから。優秀でしょう?」
「うんうん。」
「レイもヴィオもミルク飲めたわね。よしよし。レイは生まれてどのくらいかしら?」
「うーん、僕にはわからないな。」
「首がグラグラ・・まだ座っていないわね。二人はベビーベッドに寝かせるわ。
そうだ、ローの部屋にも温泉があったほうがいいでしょう?明日にでも作るわ。」
「ありがとう、嬉しいよ。・・ところで、一緒に寝るのかい?」
「すっごく広いベッドだから、いいでしょう?」
「・・そうだね。」
ーーー
「リア。まだ起きてる?」
「う、ん?どう、したの。眠れない?・・お酒でも飲む?」
「いや、いいよ。・・リア、私の最期の時、、、『愛してる』って聞こえた気が・・。」
「言ったわ。」
「!・・ それは、い、今も、変わらない?」
「当たり前でしょう?なにを・・」
「リア!」
私は、たまらなくなって、リアを強く、強く抱きしめた。
翌朝、目を覚まし、リアがここに、確かに存在していることに感謝した。
リアにそっと触れた。
リアは目を覚まし、ローおはようと言うと頰にキスしてくれた。
私も返した。
レイが目を覚まし泣き出したので、リアが慌てて抱き上げる。
おはようと愛おしそうにレイの頰に口付ける。
おお、朝の光の中、聖母のようだ。
外見が違うだけで、こんなにも印象が変わるのか。
リアがミルクを飲ませているのを眺めていた。
心が温かいもので満たされるのを感じた。
私たちは、朝食も部屋でとった。
ヴィオは離乳食の時期なんだな。
階下に降りると、子供たちは、食事を終えるところだった。
リアは、子供たち一人一人に、おはようの挨拶をしている。
お返しがもらえないと、催促している、フフ。
食後、子供たちは、一斉に外へ飛び出していった。
私たちも、外に出る。
「リア、あれは?」
「ふふふ、ツリーハウスよ。」
「エルフの家より立派じゃないか。」
「!・・ この世界のエルフに会ったことがあるの?」
「ないけれども、確かに存在しているよ。」
「そう。会ってみたいわ。個人的希望としては、耳は縦に尖っている方がいいわ。」
「それは、どうだろう。」
私たちは獣人の護衛Jを伴って、歩いて商業ギルドへ向かった。
私はレイを抱き、ヴィオは、おんぶ紐なしで背中に張り付いている。
時々、道行く人がギョッとして背中を凝視してくる。
「ローは、闘う?守る?」
「闘いは、無理かな。」
「あの子供たちの生活の場は『カランコエ』にしない?
花言葉は、沢山の小さな想い出・あなたを守る。メイン花言葉は、幸福を告げる、なのだけれども。」
「いいよ。」
「ローが守ることを選ぶなら、あの拠点は軍事要塞にはせず、不落城とするわ。」
「軍事・・何する気だったんだい?」
「神父様があなたとわかったから、自重する気はなかったのよね~。」
「おいおい。」




