第3話 アレクシア
「そ、それでどうするんだ」
ワイズマンはチラッと俺を見て話し掛けてくる。
「どうするって?」
「……男に戻るのかってこと……」
「うーん。まあその辺の行きずりの男を捕まえて子供こしらえるってことか……」
頭の中でめくるめく想像をする……
おえ……きもちわりぃぃ
「……」
ワイズマンは俺が言ったことを聞いて何も言わずに立っている。
頭を掻きながら話しかける。
「自分で言っといてあれだが、そりゃ流石に無理だ。想像しただけで吐き気がする。まあそのうち、気に入った男でもできるだろうよ。まあ、一生、女って選択肢も無きにしもあらずって感じだしな」
「そ、そうか……」
ワイズマンすっと立ち上がる。
「どうしたんだ?」
「ちょっと疲れたから寝る……」
確かに珍しく疲れたかような表情をしているワイズマン。
「お前も朝起きたら女になってたりしてな」
そう言って笑い掛けるとワイズマンただ右手を上げて部屋にもどった。
あいつ相当疲れてんななにしたんだろうな。
そんなことを思いつつ俺も自分の部屋に戻り床についた。
――翌朝
「おはよう!」
起きてリビングに向かうとトントンと包丁の音が聞こえてくる。
台所をみるとワイズマンがサイズのあってないエプロン付けて台所に立っている。
「おはよう。アレクシア」
……俺は目と耳を疑った。
まずワイズマンが台所に立つなんて見たことがない……いや食事を当番制にしようした時こいつは絶対にやだ。他の家事はするが食事だけは絶対に作らないといって作ってなかった。
それともう一点。俺の名前はアレクセイ、アレクシアなどという女の様な名前ではない。
「色々と聞きたいことがあるのだが……」
「ん? 食事ができたぞ」
そう言って目玉焼きを乗せた皿を2つテーブルに運ぶ。
「なんだ聞きたいことって」
そう言ってて食卓に付くワイズマン。
「包丁使ってたよね? 包丁。卵焼きで包丁つかわねーだろ」
「あー使おうとしたんだがな、卵焼きになった」
「ってそれじゃねー……俺が聞きたかったことはなんでお前が料理をしてるんだってことだよ!」
「ん? これか? これは心境の変化だ。料理ができる男はモテると聞いた」
「ふーん。硬派なお前が珍しいな。好きな女でもできたか?」
俺がそう言うと大きな手で不自然に顔を隠して話し始める
「ん、んな馬鹿な。お、俺が女になんかうつつを抜かす訳無いだろ! そ、そんなことをしてる暇があったら身体を鍛える……」
「だよな……あとお前、俺のことをアレクシアって呼ばなかった?」
隠していた手をどけると、明るい表情で話しかけてくる。
「ああ! 気に入ってくれたか! お前の為に一晩寝ないで考えたんだ! いい名前だろ!!」
「は? 俺、アレクセイだし」
「いやいやいや、お前はだれがどう見ても女になったんだ。女にな。だったらアレクセイとか言う男の名前は不自然極まりないだろ!」
「……そういわれればそうだけどさ……自分の名前ぐらい自分でつけたいんだけど」
「まあ、あれだ子供の名前をつけるときとか、尊敬する人につけて貰ったりするじゃないか。仮にも俺はパーティリーダーなわけだし、俺がお前の名前をつけてもいいとおもうんだけど」
「俺はお前の子供じゃねーし……」
そう言うとワイズマンはふと悲しそうな表情を見せる。
っちったくしょうがねーな……
「わかったよ。俺は今日からアレクシアねアレクシア」
「じゃあアレクシア、早速朝食を食べよう」
ということで裏面が真っ黒焦げな目玉焼きを食べ終わる。そして俺が卵焼きを入れた皿を洗っていると装備を整えたワイズマンがやってくる。
いつもワイズマンは革の鎧を着て、武器は斧を使っているのだが、いつもより腕の筋肉や脚の露出が大きいような気がしないでもない。
「じゃあアレクシア、今日はギルドから依頼があった討伐任務に向かうぞ」
「あーそうだっけ? それワイズマンだけで片付けられるって言ってなかった?」
「いや、なにかあったらあれだからアレクシアも付いてきてくれ」
「わかった。着替えてくる」
ということで部屋に戻ると仕事に向かうときにきる甲冑の胸当てをつけようとすると胸が胸当てから溢れそうになる。
……まあしないよりはましか……ということで胸当て胸がこぼれそうな胸当てをし腰に剣を下げ部屋からでる。
そして俺とワイズマンはギルドから依頼のあった場所に向かった。
そして、朝からもう一つだけ気がついたことある。ワイズマンが俺の目を見て話をしてくれないんだ……