トワイライトランデブー❶
通り雨のせいで、嫌いなアスファルトの匂いが鼻をついた夕方。まだ雲残っているビルに切り取られた空を見ながら、右手には雨粒が滴る傘と半額とのシールが剥がれそうなコンビニ弁当をぶら下げてトボトボ一人家に向かっていた。天気予報見ててよかったと僕はおもった。言うまでもなく、びしょ濡れで帰る人をみかけたからだ。路地裏に入って一歩踏み出したその刹那、目に入った少女は彼の瞳を見て条件反射的にこう告げた。
「わたしをかってくれませんか?」
僕が、少女の言葉を告げたと解釈したのは、彼女がまるで今流行りの、異世界から転生してきたアニメーションのキャラクターと同じくらい美しく、自分が対等に会話できる相手ではないと感じたからだ。それと同時に彼の脳内には
「どっちのかうだろう?(買うと飼う)」
とりとめもない、どうでもいいことがよぎっていた。
彼女の美しさが正常な思考を停止させ、僕の五感を奪っていた。そのせいか、彼女は
「あの、、、大丈夫ですか?」
と私に問いた。その瞬間我に帰ったが、僕の頭の中には五十音という五十音が消失していた。彼女は矢継ぎ早に、
「たべものはありませんか?」
とまた告げた。そして僕は、手に持っていたあと1時間で消費期限が切れる弁当を彼女にあたえた。
その夕方の出来事が彼女、いや香奈美と僕とのはじまりである、