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 ケーキを堪能して幸せいっぱいの翌朝。

 いつも通り杉浦とギャーギャー言いながら登校している最中、見て、しまった。


「と、豊島くん……?」


 あれは、その隣にいるのは、サッカー部のマネージャーさんじゃないですかね。なんですかね、なんで手なんか繋いじゃってんですかね!?


「ね、ね、あれってなんでだと思

う!?」

「えー付き合ってるんでしょ、フツーに」

 テメェ杉浦なんだその目は興味なさそうに答えてんじゃねぇよ! っていうか、え。

 つ、つつつ付き合ってる!?

 マジで!?


「ふああああ嘘でしょ!?」

「現実は認めたほうが楽だよー」

 あはは、って笑いごとじゃないし! このバカ! 杉浦のバカ!


「あっ杉浦じゃん」

「おはよー杉浦」

「おめーおめ? おめなの?」


 教室についた途端、意味不明言語を操りながら、ボインボインなお姉さん達が杉浦を拉致りにきた。

 杉浦といえば、へらへら笑いながらついていく。

「じゃあねーチョコちゃん」


 …………うぅう、ヤバい。

 あのハーレム具合、いつ彼女ができてもおかしくない。豊島くんが無理なら次、次は誰にしよう。

 早く誰か見つけないと……!



 噂話が集まる昼休み、とんでもないことを耳にした。

「えっ! 豊島くん、昨日の放課後からなの!?」

「らしーよ。マネから告られて、オッケー出したんだと。これミチカ情報」

「えーじゃあガチじゃーん。チョコ残念だねー」

「うわぁぁぁっ! 昨日ケーキに釣られたいあたしのバカッ! 告白してたら今ごろあたしが彼女だったのに……ッ!」

「うっわ図々しすぎー」

「アンパンフェイスで何言ってんの?」


 いや、うん。

 なんだろう、友だちの言葉が胸に刺さる。なんだか泣けてきた。


「あーそーそ。無駄な努力してるチョコに朗ほーう」

「え、なに無駄な努力って」

「三組の早瀬くんが別れたってよー」

「おい無視すんな、って、えっ、ほんと!?」

「ほんとほんとー。こっちはユナ情報ー」

「ユナかよ! 信憑度ひっく!」


 一年三組の早瀬くんは学年女子人気ナンバーツーの男だ。学年全体だけあって文句なしのイケメンである。あと細マッチョ。

 あ。人気ナンバーワン? 杉ナントカとかいう野郎ですよあはははっ。はー。


 ミチカとユナを連れて早速視察に向かったところ、すでに派手系女子に囲まれていた。ぐぬ、競争率がひどい。


「はー。これ勝てる気がしないわ」

「えっおめー今まで勝てる気だったんかよ!?」

「そのブツブツ顔で!?」

「おい!!」

 今日は友人の定義について悩もうと思う。




「で? 今度は早瀬って聞いたけど?」


 あれ?

 ホームルームが終わって、さぁ放課後! という開放感あふれる今、なぜ他クラスの杉浦が仁王立ちして目の前にいるのでしょうか。


 てか、ちょっぴり顔見ちゃったし。サッと目を逸らしたものの、珍しく真顔でなんか怖い。そういや杉浦ってば美形だったっけ。


「あのねぇチョコちゃん。いくら温厚なオレでもそろそろ怒るよ?」

 ぐっと近づいてきた顔を必死に押しのける。


「ちっ近い近い近い!」

「そんなこと言うけどさー」

 顎を持たれて、思いっきり至近距離から杉浦の顔を見て、しまっ、た。

 カッと耳が熱くなる。


「チョコちゃん、オレの顔好きだよね」

「な、ちが、そんなことないし!」

「ふぅん?」


 じーっと顔を見られて居た堪れないったらない。手汗ひどいし心臓バクバクいうし、なんていうかもうめちゃくちゃ焦る。


 ひとしきり顔を見た杉浦が、「わかった」といいながらパッと手を離した。

「一回だけ、告白すんの許してあげる」

 ぐいっと手首を掴まれ、あれよあれよという間に三組の前……!


 えっ、えっ、今から早瀬くんに告白しろと!?


「早瀬、いるー? ほらチョコちゃん」

 えってっ、手はこのままなのか杉浦ぁああー!

「ほら、早くしないと。今日は本屋さん行くんでしょ?」

 あぁうんいつも買ってるマンガの発売日だから、ってそうじゃなくて。


「おー、杉浦。なにか用?」

「悪いねー早瀬。オレの彼女が用あるっていうからさぁ、連れてきたの」

 …………は? 彼女?

 誰が、誰の?

 え?


「おー、これが噂の杉浦の彼女か! 実物はじめて見たわ。はじめまして」

「えっ、は、はじめまして……?」

 うわさ? 噂って言った!?

 なんの噂!?


「オレに用って、なにかな?」

 にこにこと愛想よく聞いてくれるけど、これ杉浦の彼女向けの優しさじゃん。

「あ、あの、」

 こんな状況で告白しろと!?

「あの、うう、うわ、噂について教えてください……っ!」


 できるかバカーッ!


「あー、噂? 用ってそんなこと?」

「ごめんねー、確かめないと納得できないって言われちゃってさ」

 なんでテメェが謝るんだ杉浦。

 つかハメれた気しかしない。なんだこれ。なんだこれ!!


「あーまぁモテすぎも困るよなぁ。でもほら、彼女さんも気にしすぎなくて大丈夫だって。噂どおりだし」

 だから、噂ってなに。

「あれだろ、杉浦が彼女を溺愛してるっつー」

 なにそれ、どこの異次元の話ですかね?


「ほぼ毎日放課後デートしてて、毎朝一緒に登校。わざわざクラスまで送ってるんだって?」

 ……あれ。

 言われてみれば、放課後ほとんど一緒にいるような。


「お昼はアレだろ、杉浦が彼女から邪険にされて、しぶしぶ別行動」

 そういえば一時期、一緒に食べよう攻撃をされていた、ような。


「彼女のための情報収集部隊まで作ったんだよな」

 えっ本当にどこの異次元の話!?

「それそれ。チョコちゃんってば、オレのハーレムだって勘違いしてるんだよねー」

 えっ。


「あっ杉浦見っけー」

「おー杉浦ー」

 噂をすればボインボインのお姉さん達。いや待って、とんでもないこと言われてるよ!?


「行くっつってた駅前の本屋、売り切れだって」

「そっから三軒先の、ここ。この本屋ならあるべ」

「わかった、ありがとうー」

 にこやかに手を振ってるけど、んん?


「チョコちゃん、いっつも目を逸らしちゃうから、ちゃんと見てなかったでしょ」

 杉浦の声に促されて、思わず見上げた先。

 うっとりと微笑む杉浦のドアップ、が。


「…………ッ!」


 ボンッと。本当に音がするんじゃないかってくらい、顔が赤くなってしまった。



「だから言ったのに。現実は認めたほうが楽だよ、って」



補足もあげますが、内容的には完結です。

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