この世界の片隅に2 転転結 2転して結 ※ネタバレ有り注意
やっぱりまだまだ続きます
前回、起承転結の承まで終わったと思ってたけどまだだった。
えーひたすら日常の繰り返しですわ。これはウソのような本当を描いてる。
闇市にすずさんは行くことになるんだけどボロを着てるのはすずさんだけで
他の若い子たちは話してるときに花が舞います。
この表現方法は斬新で初めて見た。
道に迷って親切にしてくれた子に「また来ます」というんだけど
その子は来んでええよ…とすごく哀しそうな雰囲気をだします。
闇市ってのは門番が立っててその町から出ていく人を監視するようなそういう社会だったんですかね…
配給で配られたりしたものが50倍の値段で売られてたり売ってはいけないスイカが売られてたり
現代の日本では考えられないくらい法律無視した状況を闇市の中ではやってました…
ともあれそんな中水兵の水原さんがすずさんとばったり会い
なんと家に泊まりに来ました…ありえますか?
いやもうこの世界は現代日本じゃないんですよ。
価値観が全然違う。
夫妻、義姉、姪、義母の元に妻の同級生が泊まりに来る…しかも一緒に風呂に入ろうと抜かす…。
新婚一年目ですよ?
この家の家長は俺だからこの家に泊まってもらうことはできん…
納屋に泊まってくれ、と個人の部屋を提供するんです…まぁわかる
「もうあの人は帰ってこれんかもしれんからゆっくり話してきなさい」
と一夜の過ちになりそうなことを夫が言うんですね…
この度量…!いやまぁ俺の感想は置いておきましょう。
すずは…すずの初恋の人なんですよね水原くん。水原くんにとってもそうみたいです。
その水原くんが旅立つ前に最後に家に寄ってくれたことですずの感情がここにきて決壊します。
これを転ととるか…悩みましたすずの感情的には確かに転だけど物語全体から見た時に転かどうか。
転はそうね…このあと空襲があって具体的にゆっくりと描写される転だった。
今思えば”キャラメルの味がした”初恋の人が戦争に行くことになったあの日が
なんとなく他人事だった戦争が自分の身の回りの人に降りかかったその時分だった。
そこから夫にも感情を伝えることができるようになって、大事な人だって気づいて…
夫が戦争に行ってしまって、義理のお父さんも怪我したからお見舞いに行って
義理のお姉さんが疎開に行くことになって帰り道、
空襲があって見知らぬ防空壕に逃げ込んで。
時限爆弾が落とされたことに気づいたときには手を繋いでいた姪が消えてた…
ここは泣かしに来るけど泣いてはダメなところ。
この作品は”本当のような嘘”ではなく詳細に調べて調べて調べた結果、事実関係を元に”嘘のような本当”を描いてるから胸に刺さる。
打ちのめされる。心にダメージがくる。
この作品はゆっくり来るんですよね。
転ってパッと来てサッと過ぎ去るものじゃないんですよ。
ずっと余韻が残るように心に傷をつけていく…もしかしたら姪を助けられたんじゃないか?
あの時右じゃなく左に姪を寄せて庇えたら…あの時、家が燃えなくてよかった…よかった…生きててよかった…
壊されてるのによかったという同調圧力というか周りの人たちの声に心が侵食されるんですよね。
ボロボロですよ…明石家さんまさんは”生きてるだけで丸儲け”と言うんですがそういうことなんでしょうか?
あれは自分の命さえあれば全て壊されて殺されて無くなっても言える言葉なのかな?
終わらない転、故郷の広島に戻るか戻らないか…帰るための荷造りをしている最中にピカッと空が一瞬光るんですよね。
近くの市、生まれ故郷、家族がいるところに、今日か明日かには帰ろうと思っていたところに。
ずっと暗くなります。
終戦、玉音放送で何を言っているかわからない天皇の言葉を聞いて戦争に負けたってことかね?と納得できないまま終戦してしまいます。
まだ左手も両手両足も残ってて戦えるのにと悔しさをぶつけます。
ここ意味わからなかったなぁ理解し難い。
終戦してよかったと周囲の人はいう。
けど、すずさんは生まれ故郷も絵を描ける右手も初恋の人も姪もみんな奪われた。
だからすごく憎しみが沸いていた。
絶対に負ける気なんかなかった。
戦う意思を高めていた矢先の終戦か…。
一応ここで戦争は一区切りということになります。
正直ここまでで転ということでいいかどうか判断に迷います。
というのもこの作品のテーマは何か?ということがはっきりしていないからです。
”日常”の中を通りすぎていった”戦争”という嘘のような現実、どこに終着点を見るのか?
どこまでを区切りとして見ればいいか?
死んでしまった家族、故郷、それはどうすれば心に整理がつくのか?
転の区切りはどこに置くべきか。
終戦で転を区切れるかと思ったら今度はアメリカの支援で美味しいご飯やチョコレートを与えられた。
それに感謝する。ここで2つめの転…ついこの間まで敵だと国の人がひもじい暮らしをしていた自分達に施しをしてくれる…。
いつまでも気にしてちゃあいけないと思えたんでしょうか?
(俺ならそんな素直に割りきれるかな?)
転が2つ来たあと故郷の広島に戻るんですがそこで右手をなくした母を失った女の子と出会います。
これを持って結に結びつけるべきかなぁ…生きること生きてることが結だと。
孤児となったその子を連れて帰って育てていこうとする姿を持って結とするかぁ…
そうなるとさんまさんの”生きてるだけで丸儲け”が真理だなぁで終わってしまうんですが…
ちょっと長くなるので区切ります