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第8話 イケメンと女神の出会い

出会います。


『幻惑花』

 満月の夜のみ咲く魔花。

月の光を吸収し淡く発光しながら咲き乱れる。

また、強い幻覚作用を持つため栽培・採取が固く禁じられている。


そして幻惑花が禁じられる理由はもう一つ。


――欲求の増幅――



―――――――――――――――――――――



神竜ヴァルコアトルはついに少女を見つけた。


そして思った。



――少女は女神だった、と。



淡く光る花畑の中心に少女は居た。


花畑の真ん中に寝台を置き、すやすやと眠っていた。


花が遠慮をするかのように寝台を避け、寝ている少女を淡く照らしている。


その光景は、まるで御伽噺の中に迷い込んでしまったのかと錯覚するくらいに美しかった。



いつまでも眺めていたいと思った。

花畑に降り立つのを憚られる。


少女の上空を飛び、このまま眺めるのも悪くない。


…けれど、もっと近くで少女を見たい気持ちが募った。


だがこのまま降りてしまうと、花畑ごと少女を踏み潰してしまう。


ヴァルコアトル考えた。


近くで見たい。


少女に触れたい。


――触れてみたい。




ヴァルコアトルは考えた。


考え抜いた末に、人型に変化することを決めた。


(…上手く変化できるだろうか。)



今まで一度も変化したことのない種族。


人型になる必要が無かった。

そのメリットもない。



だが、今回は違う。



――少女と同じ人型になりたい。


ヴァルコアトルは、その一心で魔法を唱えた。

徐々に、黒く大きな巨体が縮んでいく。






―神竜ヴァルコアトルは光に包まれた。



―――――――――――――――――――――



(眩しっ!)


なにこのすごい光!!!!

目が潰れるっ!!!

眩しすぎるんですけどっ!?!?


いや、さっきまでは寝てたよ?

……ほんとにちゃんと熟睡してたんだけどね。


上空から、バッサーバッサーって聞こえてきて完全に覚醒しちゃったのよ。



…間違いなく昼間のドラゴンの音。


怖くて、目を瞑ったまま耐えてたんだけどさ。

音が聞こえなくなったと思ったら、この光よ。

目を閉じてても分かる。


この光は私の目を潰しにきてるっ!



…………ふぅ。


光が消えた。

ドラゴンの音はもうしないし、足音しか聞こえない。



……………。


…ん?足音?


え、どうしよう。

足音がこっちに近付いて来てる。


どうする!?

目を開ける?このまま寝たふりを続ける?



「……………。」



足音は消えた。


……でも近くに気配を感じる!

それに、息を飲む音が聞こえた。



ひぇっ!

手を、手を触られてる。


だれ!?


え。


ふにってした。


ちゅって聞こえた。

手に、キ、キスされた!


恥ずかしい!


本当に誰なの!?

しかもいつまで手を握ってるの!?


…………もういい!

起きてしまおう!!



――――――――――――――――――――



美希は意を決し、ゆっっっくりと目を開けた。

寝台の左側に人の姿が見える。


薄眼を開けた美希は、その人物の顔を見ようと視線を上にあげた。

目に飛び込んできたのは物凄く美しい顔。

あまりの美しさに驚き目をこれでもかと見開いた。


…そして、視線がぶつかった。


 腰までありそうなサラサラの長い黒髪に対比する、雪のように白い綺麗な肌。

深い橙に金色と黒色のグラデーションがかかった惹き込まれてしまいそうな美しい瞳。

薄めの唇は妖艶に弧を描いている。



「……お会いできて光栄です、女神。」



美しい男性は少し微笑みながら、美希の手の甲に再びキスを落とした。


その美しさとキスに驚いた美希は頬を染めた。


(え、なにこのイケメン、もしかしてこれは夢……?ていうかキスされたんだけど!!!……女神?後ろに人は…いないよね。)



「ふふっ貴女のことですよ、美しい女神。」


 驚いて周囲を見回す美希が面白かったのか、男性は美しい顔をさらに美しくしながら微笑んだ。


……そして何を思ったのか、その白く綺麗な手を伸ばして美希の頬を優しく包み込んだ。




「…………可愛い。」


 そう呟いたと同時に、驚きで体を硬直させた美希の上に覆いかぶさった。


「っ!!!!!!」


(うひゃぁああ!やばい!これはやばい。顔が近すぎる!恥ずかしい!イケメンなら何しても許されるとはいえ近すぎるよ!!!)


………ご乱心である。


お互いの顔の距離は、もう数cmしかない。


顔を真っ赤に染めた美希を愛おしそうに見つめる男性は、(とろ)けるような笑みを浮かべた。





……そして、キスが落とされた。


額に。頬に。鼻先に。


存在を確かめるような甘いキスの雨が降ってくる。



(っぎゃあぁあぁあ!なにこれ!夢か!?夢なのか!?!っていうか耐えられないぃぃいい!!!)


 顔を真っ赤にして抵抗する美希に気を良くしたのか、くつくつと喉を鳴らして笑う声が聞こえる。




……そして、さらに沢山のキスが降ってくる。


顔だけでは飽き足らず、耳や首筋、鎖骨にも。


『ちゅっ』とわざとリップ音を響かせながら幾度となく続くキスに、意識が朦朧としてくる。


…何度も。


……何度も。


………何度も。


(…やめて!!私のライフはもうゼロよ!!!!)





 美希の頬に触れていたはずの手はいつの間にか服に掛けられていて、シャツのボタンが2つ外れていた。


そして男性は(とろ)けるような笑みを浮かべながら美希の鎖骨に長く甘いキスをした。



「ヒィッッッ!!」


―――鎖骨にチリっと僅かな痛みが走った。









…………その瞬間美希は意識を手放した。



ドラゴンさんが変態のようになっていますが、幻惑花のせいです。多分。


甘い場面を書くのは初めてなのですが、これはなかなかに難しいです。

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